鏡をみて踊る癖

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この前、バレエ学校の生徒達の何人かが隣の州で行われたバレエコンクールに挑戦しました。

最初のテストは舞台上でのオーディションクラス。

そう、バーとセンターすべてを舞台の上でやるんです。

参加してきた子の一人が、「鏡がないって本当に違う!」と言った一言であー鏡について書く予定だったと思いだしまして笑

 

この赤裸々日記で「鏡を見て踊る、という事についてはまた今度記事にします」って書いてたのに!!!

 

「鏡を見て踊る」の研究

私がちょくちょく情報をシェアしているIADMSの鏡を見て踊る事について書かれた記事をシェアしましょう。

(元→Body Image and Mirror Use in the Ballet Class Sally A. Radell, M.F.A., Emory University, Atlanta, Georgia, USA) IADMSの2012年 Vol4に載っています)

題名通り、この記事はテクニックというより、鏡と体へのイメージ(ボディイメージ)についての研究ですが、そこに興味深い一言があったので。

 

high performing students in the mirror setting were likely more able to detect errors in technique.

高いレベルで踊っている生徒たちは、鏡のあるレッスンで、(鏡を使って)自分のテクニックの間違いを見つけることができやすい。

 

We note that the mirror tends to serve as a negative influence, especially for higher performers.

特にレベルの高い子達は、鏡を見ることで(自分のボディイメージに)悪い影響を受けやすい

と続きます。

 

つまり、ここから分かるのは、

  • 高いレベルで踊っているダンサーで
  • しかも自分のテクニック間違いを理解していて、
  • それをその場で直すことができる理解力とテクニックがある

子であったら、鏡を見て踊ることに意味があるという事でしょうか。

( “were likely more able to”という言葉で分かるように、「全員」ができるのではないからね。)

 

ただし、そのグループたちは特に鏡を見て自分の体(体型、テクニックなど全て)へのネガティブな感情を抱きやすいと。

つまりテクニックだけのために鏡を見ているのではなく、自分をジャッジするために使っているという事ですね。

 

自分で自分を直すのは至難の業

DLSのほとんどでは、エクササイズはペアになってやってもらいます。

これは大人でも、子供でも、例え治療家トレーナーセミナーでもそう。

これは、人がやっている姿をみて、頭にイメージしやすくするため(イメージトレーニング:特に体の背面は鏡越しでも見えないので効果的!)と、

私がいなくても自分一人でエクササイズを正しく行うために必要な知識だという事。

そして指導者は特に、それを1人だけでなく、多くの人数を短期間で行わなければいけないという事の練習です。

 

ゆっくりと、そのエクササイズだけ(振り付け、踊りなど関係なく)やっていても、間違いを発見したり、指摘したりするのは大変です。

そしてその上、正しく修正するとなると、教師講座の人達でも至難の業になります。

 

だからね、それが出来なかったら、鏡を見てもうまく行きませんよ?

 

運動感覚が育たなくなる危険性

同じく、IADMSのeducation Committeeが出しているハンドアウト(こちらはメンバーでなくてもダウンロードできるようです。でもサイト、ペーパーともに英語です)ではこのような注意も書いてあります。

 

Overuse of the mirror can delay students’ development in learning to utilize kinesthetic feedback.

鏡の使いすぎは生徒(ダンサー)の運動感覚へのフィードバックの成長が遅くなる可能性があります。

つまり、鏡を使い過ぎると、視覚の情報だけに頼りがちになってしまうため

自分の体を感じて踊るという感覚が育ちにくくなっちゃうって事だよね。

 

これは、舞台で踊るダンサーには致命的になります。

だって、鏡なしだったらバランス感覚はもちろん、自分の体を「感じる」ことができなくなってしまうんだもの。

じゃ鏡は不必要か?

鏡は有効です。

特に、先生が直してくれながら、鏡で説明すると耳からの情報、目からの情報、そしてその時にどう体が感じているか?を理解したら感じる情報と様々な面で注意を理解できます。

 

自分の足の骨の位置を確認してアライメントを勉強中。

私がよくやる手では自分の体に線を引いて、それを鏡で見ながら確認する、

つまり何をみているのか?を明確にして行う、という事はやります。

そしてその後、「どう感じた?」「どこを使った?」という言葉がけをすることで、視覚だけでなく、kinestheticな方にも意識を向けてほしい、って気持ちがあるんです。

 

ようはね、鏡だってツール(道具)の一つだってことですよ。

ダンサーを上手にしてくれる道具。

だけど道具の使い方を間違えたり、取扱説明書なしで使おうとしたら、最大限の効果はでないよね。

 

 

 

ダンサーに覚えておいてほしい事

鏡を見ながら踊る、というのはね、難しいんだよって事をまず理解してください。

そして、癖にもなりやすい、という事。

オーディションの記事でも書きましたが、自分は無意識にやっているかもしれないけれど、それが失礼にあたったり(つまり悪い印象を残しちゃう)、

オーディションで落とされる原因にもなっちゃいます。

十分注意してくださいね。

 

冬期バレエ講習会の練習風景:鏡とは違う方向、そして誰かに見られているというのはオーディションやバレエ学校の試験などを考えての環境。

DLSの冬期バレエ講習会では、こういう部分にも挑戦します。

特に最終日には、間近にいるお客さんを見て、鏡無しでレッスン内容を踊るんですから。

そこで「いつもは出来てたのにできなくなっちゃった」「振りが完全に覚えられていなかった」なども体験することが出来ますよ。

大事なオーディションにチャレンジするまえに、練習しておいてくださいね。

 

Happy Dancing!

 

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