胸を開いて堂々と踊るために:大胸筋&小胸筋

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*このブログは2014年に書かれたものを2020年に大幅加筆修正しました。

 

たとえウォーキングロール(少ししか踊らず、舞台を華やかにするために存在する役)だとしても、堂々とした上半身の身のこなしはダンサーにとって必要不可欠です。

敢えてここで「上半身の身のこなし」という書き方をしたのは、英語では「Carriage」なんて表現の仕方をするから。

今日はそんな舞台の存在感を作るときに考えてみたい筋肉達である、大胸筋小胸筋についてお話していきます。

大胸筋はどこにあるか?

まずは大胸筋(だいきょうきん・pectorias major)から見ていきましょう。

こいつは僧帽筋の時と同じく、ちょっと面倒なんでダンサーだったらこれだけ知っていればOKという事を2つだけ。

  • 胸にある大きな筋肉
  • 実は上腕骨にくっついている

 

もうちょっと深く知りたい人としては

  • 鎖骨、胸骨、肋骨から上腕骨の上の方(上腕骨大結節稜なんてご立派な名前がついている)についている大きな筋肉。

 

すんげーマニアックか、暇な人は

  • 鎖骨から始まり、斜め下向きに上腕骨についている部分を鎖骨部
  • 胸骨から始まり、筋繊維がほぼ真横な部分が胸骨部
  • みぞおちの分かれている部分あたり(正確には腹筋群の筋膜)から斜め上に向かってついている部分が腹部繊維

なんて言われ方をする事がある、と知っていても…まぁ踊りには役に立ちませんが、

脳みその皴を増やすためにはいいかもしれません。

 

→ダンサーの腹筋事情を解剖学とエクササイズの視点からみたeBookはこちら

大胸筋のお仕事は?

大きな筋肉は複数のお仕事があって面倒なんですが、ダンサーで知っておきたいレベルでは

  • 腕を体の方にもってくる(上腕骨内転)
  • 腕を内側にひねる(上腕骨内旋)
  • 息を吸う時に、肋骨を持ち上げるお手伝いをしてくれる

もうちょっと深く知っておきたい人は

 

  • 上腕骨内転、内旋&吸気時に肋骨を持ち上げる

 

に追加して

 

  • 腕をゼロから60度くらいに持ち上げる+90度以上上がっている腕を下ろしてくる

 

というどっちなんだよ、コノヤロー的な動きがあります。

 

マニアックな人はどっか他の医学参考書を見てその他の動きを見てください(諦め)。

 

→内転、内旋などの言葉を再確認したい人はこちら

パドドゥと大胸筋

さっき説明したコノヤロー的な働きも含め、大胸筋のお仕事をパドドゥで考えてみましょう。

 

パドドゥをする場合、女性でも男性でも(サポートされる側でも、サポートする側でも)大胸筋は非常に大事になります。

 

大胸筋は肩関節をグワングワンまわすとか、スワンレイクみたいに体の後ろに持ってくるなんて事は出来ません。

でも大胸筋はこんな事ができます。

  • ウエストではなく、S字グリップで行うプロムナードの時に腕をホールドしてくれる
  • 女性ダンサーのウエストを持って回転や、ウエイトトランスファー、小さなリフトなどで腕や肩関節のコントロールに使われる
  • 大きなリフトで持ち上げる、ゆっくり下ろしてくる時に力を発揮
  • フィッシュダイブやサイドへ大きく倒す動きなどで女性を「抱える」動きで力を発揮する

 

ね、ダンサーだったら知っておきたい事でしょう?

 

ちなみに、男性ダンサーだけが鍛えておけばいいのね、と思わないでくださいよ。

プロムナードなど女性の腕が強ければ強いほど、男性だってコントロールしやすいんですから。

→男性ダンサーのぶつかる壁

 

また、「抱える」という動きを考えると

凄く早い回転(シェネなど)で、1番ポジションをホールドし続けるためにも大胸筋は働きますんで女性だってトレーニングがいらない訳ではありません。

小胸筋はどこにあるか?

閑話休題で、これから先は小胸筋(しょうきょうきん・pectorias minor)を見ていきましょう。

この子は大胸筋の下にひっそりと隠れている小さい筋肉ですが、結構個性的です。

 

  • 第3、4,5肋骨から肩甲骨に住んでいる鳥のくちばしにくっついています。

 

肩甲骨に鳥のくちばしがあったの!?

そうなんですよ…恐ろしき肩甲骨。

 

肩甲骨には背骨があったり(肩甲棘・けんこうきょく)、ソケットがあったり(関節窩・かんせつか)、くちばしもついている(烏口突起・うこうとっき)んです。

 

そして小胸筋は肩甲骨の肋骨側にある、烏口突起から肋骨をつなげています。

 

小胸筋のお仕事は?

胸にあるけれど、肩甲骨についているという事で、小胸筋のお仕事は肩甲骨を動かすことでもあります。

ダンサーだったらここまで知っておく必要はないし、正直小胸筋の存在を知らなくてもいい気が私はします…

 

が深く勉強したい人達のために、お仕事は

  • 肩甲骨の下方回旋(かほうかいせん・ソケット部分が下向きにローテーションすること)
  • 肩甲骨の下制(かせい・肩甲骨を下に下げる事)

のほかに少しですが

  • 肩甲骨の外転(がいてん・背骨から左右の肩甲骨が離れていくこと・猫背の原因の1つ)

もします。

 

もちろん、肋骨にもついているので、息を吸う時に肋骨を持ち上げるというお仕事もしますよ。

→肋骨についてまだ勉強していない人はこちら

姿勢と胸筋、エクササイズ

猫背で生活していると、もしくは腕が常に体の前にあるような生活をしていると(勉強、パソコン、携帯、料理…)

大小関係なく、常に胸筋が縮んたポジションで過ごす事になります。

 

 

 

一見、いい姿勢をしているように見えても、胸椎を反らし肋骨を前に押し出していると、

結果として肋骨と鎖骨、体の前側と腕、の距離は伸びていません

 

  • 肩こり解消のためにも
  • 肩が前に落ちないためにも
  • 呼吸の度に、胸や首「だけ」に力が入らないためにも

胸筋をストレッチするのはとてもよいセルフケアになりますよ。

 

ストレッチの仕方はバレエの立ち方本P116に。

こちらのセルフケアビデオでもダイナミックに胸筋を伸ばす動きが含まれています。

 

ただ、ストレッチだけでなく鍛えるという事も頭に入れておいてください。

どうやって鍛えるかって?

 

  • 四つん這いやプランクなど、腕が体の前で体重を支えるエクササイズ

はいいスタートになりますね。(だから私の本3冊には四つん這いエクササイズが沢山でてきたのよ!一緒に鍛えられちゃうから)

 

パドドゥの前に集中強化が必要であれば

こちらの記事で上腕二頭筋も鍛えてください。

体が強くなってきたらこちらのプランクアームスライドに挑戦してね。

 

 

ストレッチしたいのに、エクササイズしちゃって大丈夫?と思った方へ。

筋肉は弱いと、縮こまって固くなりやすいです(肩こりを考えてみて!)。

よって

  • 正しい姿勢&テクニックでエクササイズする
  • 必要に応じてセルフケア(リリースやストレッチなど)を日常に取り入れる

そして

  • 反対側にある背中の筋肉も一緒にエクササイズする(=胸筋が伸ばされるポジションになる)

が出来たら、伸び縮み自由な筋肉になってくれます。

 

→猫背と戦う菱形筋についての記事はこちら。

記事の最後にエクササイズリストが載っています。

まとめ:ダンサーなら知っておきたい胸筋

  • 大きかろうが、小さかろうが、胸筋は胸にある
  • 難しいことは分からなくても、胸筋を縮めない生活を送る意識は大切
  • パドドゥの練習が始まる「前」から鍛え始めたい

 

腕立て伏せとか、プランクとか、肩や腕がムキムキになる気がするから嫌いなんだよね…というダンサー達、この記事を読んでテクニックとの繋がりが分かりました?

分かったら、その場で腕立て10回どうぞ。

 

Happy Dancing!

ai

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