腹筋運動をダンサーが正しくやるために知っておきたいこと

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※この記事は2015年6月に書かれたものを2020年の「ダンサーの腹筋事情ebook 2nd edition」のために大幅にアップデートしました。

 

前回ご紹介した下向き腹筋の、理屈は分かったけど、見た目は…

そんなに格好良くないですよね。

 

ただ床に寝転がっているみたいに見えるし、

筋肉使ったーという達成感や、英語ではburningと表現される、燃えるような、鈍痛もない。

やっぱり普通の腹筋をやった方が辛いから効果があるんじゃないの?って思う人も多いかもしれません。

 

ここでいう普通の腹筋というのは

クランチとかシットアップとか言われる体力測定なとでも使われるやつね。

でもこれ、正しくやらないとかなり危険ですし、あまり効果がないって分かっています。

 

世界で一番規模の大きい軍隊である、U.S.Armyも

2020年の終わりにはシットアップを体力テストやトレーニング内容から外すと発表しています。
The Washington Times 2018年7月10日記事による

理由はケガのリスクが高く、効果が見られないからだそう。

 

体もでき上がっている成人で、毎日トレーニングをしている人でも危険だったら

プロダンサーを目指している子供たちや趣味で踊り始めた人たちが、

トレーニングのプロのサポートなしで行うのはかなり大変なのではないか?と私は思います。

 

なので「バレエの立ち方できてますか?」 「ターンアウトできてますか?」 「プリエ使えてますか?」全てで、シットアップのような背中を丸めるエクササイズは紹介していません。

 

そうはいっても、バレエ界でスポーツ界からの常識が取り入れられるまでには長い歳月がかかるようですから、

バレ工学校のエクササイズクラスや、スタジオのウオームアップで行わないといけない人もいるかもしれません。

 

なので、この記事では普通腹筋(シットアップでも、クランチでもなんでも名前は良いけどさ)を正しくやる方法をご紹介します。

ただ、自主練で取り入れる必要はないと私は思います。

 

だって今までのバレエ人生で、先生に

「あなたの背中の丸みが足りないのは腹筋が弱いせいよ!」

と言われたことあります?

 

もちろん指導者は、エクササイズの動きを理解し、様々な体に合わせて正しく指導できないなら、やめた方がいいですよ。

 

たいていの日本の学生がバレエレッスンに来られる時間は夕方になり、

ポワントレッスンさえできるだけの時間がないのだから、よく分からないエクササイズに時間を割きたくはないですよね。

エクササイズのやりかた

両手を組み、頭の後ろに入れて、膝を曲げて床に寝転がります。

足は坐骨幅に開き、両膝がつま先と同じラインになっているかを確認して。

骨盤の三角形は地面と水平です。

体のほかの部分は変えず、みぞおちから上のみを起こしてきます。

それだけ聞くと、難しくもないし害もなさそうなエクササイズですよね?

 

でも正しく行うためのチェックリストはこんなに長いの。

  1. 骨盤の三角形は、上体を起こしても変わらない
  2. 足の付け根(股関節の前)には力が入らない
  3. 首が動きを先導しない
  4. 肘が顔の方へ上がってこない
  5. 脇が地面から浮くまで体を起こす
  6. 膝が外に逃げない
  7. 足指たちに力が入らない、アーチが崩れない
  8. おなかは平らのまま

一つひとつの項目を順番に見ていくことにしましょう。

 

骨盤の三角形は、上体を起こしても変わらない

恥骨と頭を近づけて体を丸める、という動きがほとんど必要のないクラシックバレエダンサーだったら特に、

腹筋を使っても骨盤のプレースメントに影響しないようなコントロールカが必要だと思いませんか?

 

  • 肋骨の点と骨盤の点を寄せてくる

のではなく、

  • 骨盤の点の方へ肋骨の点を持っていく

と考えてあげよう。

 

骨盤のプレースメントを保ったままでも腹筋が使えるようにならないと、踊っているときに腹筋を使うことは不可能になります。

 

脚の付け根(股関節の前)には力が入らない

腹筋群の解剖学を勉強した時に、4つ全ての腹筋はカバーしている箇所は少し違うけれど、骨盤と肋骨をつないでいる、とお話しましたよね。

 

つまり「腹筋のみ」にフォーカスするエクササイズであれば、脚に力は入らないはず。

体を起こすときに脚の付け根に力が入っていたら、それは脚の筋肉を使って体を動かそうとしている証拠です。

 

この部分をしっかりと確認しながらエクササイズをしないと、太ももをたっぷり使う練習をしちゃっています。

 

  • 特に脚の付け根を縮めて踊る癖があったり、
  • タック大好き!気がついたら太ももばかりで踊ってます…

という人は、

毎回股関節の前を手で触り、力が入っていないかを確認しながら癖を修正していきましょう。

 

骨盤の前の三角形を変えないように…と考えていると脚の付け根にも力が入りづらいので、骨盤のプレースメント練習もできるし一石二鳥ですよ。

 

首が動きを先導しない

首は動きます。

ただ、首は背骨の一部だから動くのであって、首「から」動きが始まるわけではありません。

 

  1. 下向き腹筋の感覚(ウエスト周り)
  2. 肋骨のサイドをみぞおちに持ってくるイメージ
  3. みぞおちに集まった感覚を恥骨の方にスライドさせていくイメージ

という順番で動けば、

みぞおちが恥骨に近づけば近づくほと、首が勝手に持ち上がってしま う、という連鎖運動を感じるはずです。

 

 

 

図:首だけ持ち上がっている様子

顎と胸との距離が縮まってしまっているのが見えますね。

 

 

肘が顔の方へ上がってこない

腕の5番ポジションでも、肘は真横に開きません。

それと同じで、このエクササイズでも 肘を真横に開く必要はありませんよ。

ただ、腕の力で体を起こしていると、肘が顔を隠すように前に来てしまいます

上でお話した肋骨が恥骨の方へ、という動きを考えていれば、首や腕が動いてしまうのを止められるはず。

 

両肘が前に閉じてしまうということは、上腕骨が前に来るため肩も丸まってしまいます。

肩を丸め、猫背になる練習が必要なダンサーって… いませんよね?

 

脇が地面から浮くまで体を起こす

完全に体を起こしてくださいね、とはお願いしません。

普通腹筋で、体育座りの高さまで体を持ち上げるためには、腰椎を丸めなければいけないし、太ももにも力が入ってしまいます。

でも脇が地面から浮くところまでは持ち上がるように努力してね。

 

みぞおちから体を折り曲げ、脇、もしくは肩甲骨が地面から浮くところまで体を前に倒す…

これはバレエのカンブレ・デヴァンになります。

 

大きく顔や上体をつけて踊ろうとすると、背中が丸まり、引き上げがなくなってしまう…という人は、

脇から上を柔らかく曲げるけと、肋骨から骨盤までは強く保つことができていない 証拠です。

 

膝が外に逃げない

両膝をくっつけておく必要はありません。

その方がお互いの骨に頼れちゃうので内転筋的には楽になってしまうのね。

 

骨盤を安定したり、しっかりとポジションに閉める働きをしてくれる大事な内転筋を育てるためにも、

坐骨幅に開いた足から膝が一直線になったままでホールドしてくださいね。

 

内転筋の意識をするためにボールや水筒をはさむのも意識を作るサポートとしてはアリですが、

下半身に影響せず、上体だけ動かすということができるのはダンサーとして大切なボディコントロールだとも覚えておいてください。

 

足指たちに力が入らない、アーチが崩れない

腹筋のエクササイズとか、体幹トレーニングとか言うと、

みんな上半身の方ばっかりにフォーカスしてしまうけれど、踊っているとき唯一の接地点である足だって大事ですよ。

 

腹筋を使う時に足指を力ませてしまうという癖をつけないためにも重要ですが、

足のアーチが崩れると、その上に乗っている脛の骨、そしてさらにその上にある大腿骨の位置も変わってしまいます。

 

特に内転筋を強化しよう、と考えてぎゅーっとボールをつぶす動きをしているダンサーは足のアライメントまで意識してね。

 

おなかは平らのまま

普通腹筋が腰椎のケガに繋がってしまう理由はこちら。

今までお話してきたポイント全て大事なんだけと、もし一つしかできないのであれば、おなかに注目してください。

 

おなかが平らでないということは、下向き腹筋ができていないってこと。

つまり、腰椎からおへそまでぐるっとサポートしてくれているコルセットとなる腹横筋が働かず、腹直筋「だけ」でエクササイズしてる証拠です。

 

腹横筋は

4つある腹筋の中で一番大切で、しかもコアマッスルの一つである、

とすでにお話しましたよね。

 

下向き腹筋を先に説明した理由もここ。

そいつができていなかったら、普通腹筋は腰椎に負担をかけてしまうため危険です。充分に気を付けてくださいね。

 

ダンサーが舞台で輝くために知っておきたい腹筋についてを解剖学、エクササイズ、レッスン中の注意などと混ぜ合わせて1冊にまとめた「ダンサーの腹筋事情」ebookはDLSストアにて好評発売中です。

内容の詳細やチラ見せはこちらのページからどうぞ

 

Happy Dancing!

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