DLSポッドキャスト epi561 0.5%とコインの話

計画通りにいかない現実に焦りや落ち込みを感じている佐藤愛が、今こそ思い出したい「プロセスを味わう」という視点について語ります。

指導者として、保護者として、生徒として、感じる不安やもどかしさ。

でも、目的地に向かう道のりで出会う風景や仲間こそが、成長の証なのかもしれません。

旅そのものを楽しむヒントをお届けします。

Transcript

ビジネス的に言う、Q2の真ん中に近づいてきて、ちょっと焦っている佐藤愛です。

 

Qというのはクオーターの頭文字で、

一年を3か月ずつに分けて考える方法から、

  • Q1=1,2,3月
  • Q2=4,5,6月
  • Q3=7,8,9月
  • Q4=10,11,12月

と言います。

 

そのため、このポッドキャストが出る2025年5月16日は

Q2のちょうど真ん中の月で、1か月のちょうど真ん中あたりとなるんですね。

なのでちょっと焦りを感じているんです。

 

今年掲げた大きなゴール、「Expanshion(拡大)」に対して、

思ったように進みが見えなくて。

 

ポッドキャストでシリーズにしていたので、

私の2025年ゴールが「Expanshion(拡大)」だって知っている人は多くいると思うのですが、

そのゴールを細かく分けて

  1. チームの拡大
  2. クラスの拡大
  3. 知識の拡大
  4. ネットワークの拡大
  5. 健康面での拡大

というのを挙げていたのね。

 

成長がゼロではないです。

少しずつ進んでいるものもあります。

でも今年の頭に計画していた通りには進んでいない。

 

しかも、中には自分ではどうしようも出来ないような遅れの原因もあります。

例えば、この日までに終わらせるように、と伝えていた仕事が

セミナーから帰ってきたら終わっていなかったとか、

想定外のケガとか。

 

ケガの中には防げるものと、防げないものがあり、

ダンサーに見られがちなオーバーユーズ障害とも言われる慢性のケガは

知識があればある程度防げるのだけど

 

皮膚の問題で病院に行って、そこで窒素で焼いてもらったんだけど

それがすっごく大きな水ぶくれになり、腫れて、

包帯でぐるぐる巻きになるっていう問題がおきまして、

思ったように動けないし、タイピングも難しいみたいな状態になっちゃったんですよ、とか。

 

正直、ガッカリしますよね。

今年の4分の1が終わってしまったのに、思ったように前に進んでいないように感じる。

進みが遅いだけでなく、後ろに戻っているような部分もあります。

 

このまま前に進めないんじゃないか?という不安や

私には、このゴールを達成できるだけの器がないんじゃないか?という落ち込みや

なんでいつもこうなっちゃうの!という怒りとか。

そういう気持ちがたくさんあるかもしれません。

 

もしかしたら、諦めもあるかも。

スタートも遅れたんだから、これ以上頑張っても無理、私には無理と思う人もいると思うんです。

 

結果ではなくプロセスが大事

そういう気持ちになっている人はもちろん、

  1. 今は大丈夫でも、1年というスパンで見た時に、こういう気持ちになることがある人

  2. 自分ではなく、子供(生徒)の成長で同じように、焦りとか不安がある人

は、つまり人間だったら、今日のエピソードは聞いてもらいたいなと思っています。

 

DLSポッドキャストを聞いてくださっていたら、

特に、指導者用セミナーや、インストラクターコースを受けてくれたことがある人なら

私が嫌って程、ゴール設定についてお話するのを知っていると思います。

 

目的地が決まっていなければ、思った方向に進めません。

思った方向、というのが決まっていないのだから、当たり前だよね?

 

そして、指導者はスタジオの方向性という大きなゴールから、

毎週のクラスのゴールまでを考えないといけない。

 

それが明確でないと、生徒達がどれくらい成長したのかはもちろん、

何を指導するのか、どこまで指導するのかを計算することが出来ない。

だからゴール設定は大事。

 

ダンサーも一緒。

プロダンサーになりたいという最終目的地を忘れて

甲出しとか、膝を「入れる」ためのストレッチだとかをやってしまうと、

ケガして、踊れなくなってしまって、プロダンサーになるというゴールからかけ離れてしまう。

 

でもね、ゴール「だけ」に執着してしまうと

プロセス(過程)を楽しむのを忘れてしまうと思うの。

 

確かに、ゴールに掲げたものを手に入れるのは楽しみですよね。

だってOOが欲しいから、ゴールに掲げているんだから。

 

だけど、目的地に向かう道に

  • サクラの木が咲いていたり

  • 久しぶりに再会した昔の友達がいたり

  • 途中まで一緒に歩ける旅仲間と出会ったり

  • 風の音や、青葉に太陽が反射している様子が見られたり

するわけじゃない?

 

来日セミナーの為に東京に長く滞在していると、携帯を見て歩いている人が多い事に気づきます。

私も含め、地図を見ながらオロオロしている人もいるけれど

ずーっと携帯の動画(ドラマ?映画??)を見ている人。

顔を上げず、何かをタイピングしている人。

 

毎日見ている風景だから飽きてしまうのかもしれないけど、

長いことメルボルンの田舎に住んでいる私にとって、

東京ほど観察していて楽しいものはないです。

 

四季がある国だということはもちろん、掲示板とか、広告とかすぐに変わるし、

歩いている人達のファッションや、ポップアップショップなど。

それに気づかないのは勿体ないなぁって思ってしまう。

 

そんな感じで、ゴールに向かっている道にある”風景”

見逃してしまったら勿体ないなぁって思うことがよくあります。

それがプロセス(経過)というもの。

 

最終目的地→6500人の先生が生徒の安全と、将来の健康について勉強している世界

2021年日本のバレエ教育に関する全国調査によると、

日本には(2021年時点で)1万3千人のバレエの先生がいるそうです。

 

そして、DLSのゴールは

生徒の安全と将来の健康を第一に考えるレッスンが「当たり前」になること。

 

当たり前の為には、大多数の人達が同じ方向性の考えをする必要があると思うので、

導き出された数字が6500人の先生、ってわけ。

 

もちろん、全員がDLSで勉強する必要はありませんが

1回勉強しただけでは、長きに渡る癖や考え方、スタジオ方針は変わらないと思うし

21世紀ダンサーを育てるならば、強化エクササイズまで出来なくても

最低限全てのバレエスタジオで

「正しい」ウォームアップが指導されるようになる必要があると考えているので、

(だってウォームアップは、ケガを予防するって立証されているものだからね!)

 

5-6000人がDLS公認スタンスインストラクターコースを受けてほしい。

というゴールを持っています。

 

そのゴールを早く達成させたいか?

答えはYESです。

 

そのゴールに向かって進んでいるか?

答えはYESですが、凄くゆっくりです。

 

例えば、現在の小鬼(コース修了生)の人数は

さっきお話した先生人口の約0.5%なんですって。

前には進んでいるけどさ、12年DLSをやってきて、4回コースを開催して

1%にも満たないってこと。

 

0.5%ってグラフにしても、殆ど違いが見えないサイズでしょう?

目に見える進捗がないから、思ったように進まないから、諦めるべきか?

 

答えは…正直なところ、時々そう思う事もありますが、

目的地に向かう風景が素晴らしいので

この旅を楽しむことを優先させたいと考えられるようになりました。

 

どんな風景が見えるかって?

  • 2019年にスタートした1期生がアドバンスドコースを卒業し、より一層ダンサーの安全と健康をサポートしてくれている

  • まだコロナの問題が残っていた2期生が、コースが終わっても集まって勉強していたり、仲間の発表会をサポートしたりしている姿を頻繁に見ることができる

  • 初海外参加者もいて、地方組も多い3期生が、小鬼合宿で久しぶりに仲間と再開したり、遠くにいてもオンラインで一緒に活動したりしている

  • コース試験が終わって、まだ結果が出ていない微妙な時期だったのにも関わらず、もっと勉強を続けたいと思ってくれている4期生が、先輩たちに混ざって合宿に参加してくれていた

というような風景。

 

  • 小学生になったばっかりの娘と一緒に、ゲーム感覚で解剖学クイズをした

  • 中学受験中の娘と一緒に、コースの勉強をした

  • あまり話すことのなくなった成人した子供が、パソコンなど助けてくれた

  • エクササイズの練習台になってくれた夫の運動不足が解消された

なんていう、アットホームな風景。

 

  • スタジオに来たら勝手にプランクしている子達が増えたという話

  • エクササイズクラスを始めるという連絡に対し、保護者からは前向きなフィードバックしかなかった話

  • 発表会前の練習はあえて短くして、本番は誰もケガすることなく、皆で舞台に立てた話

なんていう、ダンサーの安全と健康が、それぞれのスタジオで根付いてきている風景。

 

これらを見ることが出来るから、たとえまだゴールに手が届いていないとしても

前を向いて歩いていくことが出来ますし、

目的地の方向性が間違っていなかったんだ、と確信を持つことが出来ます。

 

それって、ガッカリしないとか、イライラしない、不安にならない、という意味ではないです。

そういうネガティブな気持ちと「共に」ポジティブな変化を「意図的に」意識すること。

 

コインには両面があるように、ポジティブとネガティブ、

どちらから1つではなく、両方とも存在するんですよね。

 

好きなことでも、大変な部分がある

インストラクターコース中、特に試験の近くで、どのグループにもお話するのですが、

  • 自分で選んで、好きで入ったコースでも、試験の勉強のストレスは絶対にある

  • 興味があり、好きな分野でも、疲れて、やりたくないって感じることがある

これがコインの両面という意味です。

 

でもね、

  • 試験勉強のストレスが嫌だ

  • 疲れるから、忙しいから

と言っていると、一見嫌なことを避けられるように思えるけど、

良いことも一緒に避けてしまうんですよね。

 

コインが欲しかったら、片方だけ手に入れることは出来なくて、両面一緒についてきます。

だから、思ったように今年のゴールが達成出来ていない人、

成長が見えなくて、諦めかけている人、

出来ないかも…ついていけないかも…私には無理かも…と思っている人。

少しでも前に進むためには、行動を起こさなければいけません

 

ただ、行動を起こせば「100%」思ったように進めるわけではないし、

スムーズに、問題なく物事を終わらせることが出来るわけではないけど、

そのリスクを背負わないと、何も変わらないです。

 

何もしない、というのは心地よいように感じるし、

OOが出来たら、XXが終わったら、などタイミングを待つのも”冷静な対応”に感じるけど

待っていても、リスクが減るわけでもありません。

 

特に忙しい毎日を送っているダンサーや先生なら

1つが終わると、次の準備がやってくるってことを十分知っていますよね?

 

発表会の準備は長くかかるし、レッスンプランも作らなきゃいけないし

新しい生徒募集の準備や、新クラスを作るかどうかも考えるし、

確定申告だって、毎年決まった時期にやってきます。

今あげたような仕事は、1年待っても、3年待っても減ることはないでしょう。

 

もちろん、

  • 長期治療中の家族がいて、最後の時間を一緒に過ごす

  • 子供がいじめられていて、不登校だからサポートが必要

  • 赤ちゃんが生まれたばかりで、毎晩3時間毎に起きている 

など特別なシチュエーションだったら、別だけど、それは分別がつく大人なら分かる事でしょう。

 

例えば

スタジオを開いたばかりで大変という人もいれば

長くスタジオをやってきて、生徒さん達も毎年こういうスケジュールというのに慣れているから変更しづらい、という人もいます。

 

  • 生徒が少なくて困っているという人もいれば

  • 生徒が多くて、事務作業だけで週末終わってしまう

という人もいるはずです。

 

今あげた例の先生たちは大変な思いをしていると思います。

たとえ、自分が好きなバレエで、自分の夢だったスタジオを経営していたとしても。

コインは常に両面があるのです。

 

0.5%の成長

先ほどもお話したように、0.5%ってグラフでも見えづらい。

とはいえ、思ったように成長しないんだから、って放っておいても何も変わりません。

あ、それは嘘だ。

逆戻りしちゃうでしょうね。

 

そして、たとえ成長が0.5%だったとしても、

そこに向かう途中の風景は素晴らしく、小鬼たちという旅の仲間も出来ました。

 

私も含め、誰も0.5%成長するのがゴールに掲げる人もいないだろうけど、

自分が信じる道を選び、思ったように成長しないリスクの方が、

何も行動を起こさず、情報が存在し、防げるケガを横目で見ながら

「そうは言っても、島国体質の日本で、古い考えの先生たちが健在しているバレエ界で変わるわけないもんね」

と言って、見せつけるかのようにため息をつく中年元バレエ学校教師になるリスクと比べて

ぜーんぜん小さく感じるので、

私は、エビデンスベースの情報をアップし続けます。

 

こうやって、ポッドキャストインスタなど無料でやったり、

1日、2日で出来るセミナーにしたり、

毎週、お家から簡単に参加出来るオンラインエクササイズクラスにしたりして。

 

12年間、精魂込めて作ってきたDLSですから

悪口を言われたり、0.5%だけしか成長がないという数字を見てガッカリしますよ。

 

でもね、行動を起こしてガッカリする方が、

行動を起こさずに、ガッカリするよりも、数倍も良いと思う。

 

人目に出るということは、良い意味も、悪い意味もありますし、

エビデンスを見るということは、自分にとって悪い数字だとしても、統計を見る必要があります。

だって、コインは常に両面が付いてくるからね。

 

DLSをスタートさせる1年前から来日セミナーをしていたため、

今年3月の来日をもって私のセミナー指導歴は12年、一回りしました。

 

実は、一番最初の来日セミナーから参加してくれていた先生の1人が、

今年も教師の為のバレエ解剖学 モジュール3を受けに来てくれました。

1日だけしか時間が取れなかったけど、復習したいから、と。

 

その先生の生徒さん、昔のセミナーでは子供だったのに

今ではオーディション活動に励んているダンサーになっていて、

やっぱりクラスに来てくれていました。

 

別の、だけど同じく12年前からセミナーを受けてくれている先生は

インストラクターコースも、アドバンスドコースも終えて

今でも小鬼合宿に来てくれています。

 

私の本をキッカケに、解剖学に興味を持って理学療法士の勉強を始め、

この春、国家試験に合格した、という元プロダンサーも

忙しい引っ越しの合間に、受講しに来てくれました。

 

ケガしてた時に、ボディコンサークルが支えになったと教えてくれた中学生や

解剖学やエクササイズが大好きで、

もっと勉強したいと何枚ものページにお手紙を書いてくれた高校生にも会いました。

 

たとえ統計的には0.5%の成長だったとしても、

干支が1週回るだけの時間、応援し続けてくれた人達がいて、

誰かの人生にポジティブな影響を与えることができたのであれば、

それって素晴らしいプロセス、過程なんじゃないかなって思います。

 

そして、たとえ6500人というゴールを達成する事ができなくても、

その目的への道の途中、こういった人達と時間を過ごすことが出来るなら、

ゴールが達成できなくても、十分収穫のある旅だったのではないかとも思います。

 

もし、このポッドキャストを聞いてくれている人達の中で

  • リスクや言い訳はたくさん思いつくけれど、コインの暗い側面から逃げず、もっと高い山に登ってみたい

  • もしかしたら山のてっぺんに届かないかもしれないけど、その道の途中でしか見えない風景や、仲間と出会いたい

と思った人がいたら、DLS公認スタンスインストラクターコース5期生の詳細を確認してください。

 

生徒の安全と将来の健康を第一に考えるのが「当たり前」になるべきと思っている人達が集まり、

お互いを高めあったり、感化したり出来る側面と、

プレッシャーの中、出来ない自分と向き合わなければいけない側面

コインの両面から、今までになく成長できるはずです。

 

先日、5月13日に無料説明会が行われ、1年に一度の申込がオープンしました。

詳細資料、コースに向いてるかテスト、そして説明会の動画をご希望の方は

hello@dancerslifesupport.comにメールしてくださいね。

 

短い期間しか小鬼への扉は開かれません。

迷っている人はお早めに行動を起こしてくださいね。

 

Happy Dancing!

佐藤愛

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