ダンサーのほとんどのケガには関節が関係しています。
だからこそ、ケガを減らしたいなら、まずは関節を理解しましょう。
バレエレッスンやエクササイズで関節を守る知識を、ポッドキャストで身につけましょう!
Transcript
DLSでは12年、バレエ学校の解剖学講師も入れたらもっと長い間
ダンサーの骨盤について話している佐藤愛です。
別に骨盤だけを話しているわけではないですが
11,12歳のいるバレエ学校ハーフディプログラムから、教師のためのバレエ解剖学まで
骨盤について話をしない時がないため、例にとってみました。
なんでこんなオープニングなのかというと
11月頭にアドバンストインストラクターコースの授業で私も含め
先生たちの思い込みってあるよねという話をしたから。
私が書いた本をもとに
DLSではダンサーに特化したエクササイズが指導できるようになる
DLS公認スタンスインストラクターというコースをやっています。
その10か月コースを無事に終えたインストラクターたちの
次のステップがアドバンストコースなんですね。
両コースとも、少しではありますがビジネスの科目が入っています。
というのも、インストラクターコースを勉強しているほとんどの人たちが個人事業主で
多くの人たちがエクササイズクラスを自分のスタジオに取り入れたい
と思っている人たちなんですよね。
もちろん、全員ではないですよ。
例えば国家資格保持者の治療家さんたちは
エクササイズクラスをというよりは、リハビリの一環に取り入れたいという感じでしょうし
ダンスの先生たちの中には、エクササイズクラスを新設したいのではなく
ウォームアップに取り入れたいとか
発表会やコンクールの前にけが予防や強化のために取り入れたいという人たちもいるので。
ですが、多くの人たちが指導だけでなく
宣伝もやらなければいけない立場にいるのには変わりないと思います。
なんでそれと骨盤が関係あるかって?
先生側と生徒側の食い違い
クラスの中で、私たち指導者はいつも同じことを伝えているけれど
生徒側はいつも聞いているわけではないという話をしたんですよ。
最初の私の例に戻りますね。
約15年、1万人以上のダンサーやバレエの先生たちに、私はバレエ解剖学を指導してきました。
骨盤について話さないクラス、ワークショップ、セミナーはほぼゼロ。
なので時々こういう気持ちになることがあるんです。
- 何度も言ってるのに、なんで分からないの?
- この前も言ったのに、忘れてるのはやる気がないからじゃないの?
- 同じ話を繰り返しているから、飽きちゃってないかな?
- この話ばっかりだから、みんな読んでくれないのかな?
でも、生徒側としたら15年間、毎日聞いているわけではないんですよね。
私たち先生は、毎クラス、毎週話しているとしても、週に1度の子は1回しか聞いていません。
骨盤「だけ」を話しているわけではないから
クラスの他の部分は覚えていても、骨盤については記憶が曖昧な可能性もあります。
5年前にセミナーで聞いていたとしても、忘れちゃっていることもあるでしょう。
私たちが昔読んだ本や、観た映画の大体のあらすじは覚えていても
一字一句、すべてのシーンを覚えているのではないように。
たとえば、このポッドキャストはエピソード590です。
単純に計算しやすいように、1エピソードが10分だとすると
5900分、98時間皆さんにお話しています。
だけど、すべてのエピソードを聞いている人はそんなに多くないと思うし
家事をしながら、通勤電車の中で、レッスンに向かう車の中で
聞いている人たちがほとんどじゃない?
そうしたら、すべての話を覚えているわけがないよね?
だからね私たち指導者は、大切なことは何度でも繰り返して、忍耐強く
ある意味頑固に伝え続ける必要があるんじゃないかなと思うのです。
そして、ダンサーや保護者側、つまり、情報を受け取る側も
知ってると高をくくらずに、何度も繰り返して勉強する必要があるとも思うのよね。
ほら、大人初心者クラスでも、プロレッスンでも同じように
バーレッスン、センターレッスン、アレグロと進むように。
と、ここまでが前置きでした。
関節にフォーカスしたのは4年前!?
2025年最後のポッドキャストシリーズは、関節についてお話していきたいと思います。
DLSのインスタをフォローしてくれている人たちは
8月から「バレエ解剖学シリーズ」という名前の投稿をしているのを知っているかしら?
英語と日本語で、ポイントだけお話している投稿シリーズなんですが
興味があったらプロフィールにあるハイライトから、「バレエ解剖学」を見てみて下さい。
そのシリーズの中で、関節にまつわる話を3回に分けてお送りしたんですが
そこでハッとしたんです。
私、ポッドキャストで関節の話ほとんどしていないって!
もちろん、関節という言葉や、関節の構造がどーの、みたいな話はしていますよ。
例えば、エピソード500から549までの50回の中で
関節という言葉は282回出てきています。
ええ、単語の数まで調べましたとも、私、考え方がエビデンスベースですから。
単純計算すると、1エピソードの中で5.6回ほど
関節という言葉を使っていることになりますよね。
でもね、関節「だけ」をテーマにしたポッドキャストはほぼないんです。
「ほぼ」がキーワードで
エピソード374では「関節 動きの生まれるところ」というエピソードをお送りしています。
2021年にアップされたエピソードなので、4年前ですが。
さっき、前置きでお話した落とし穴ですよね。
- 私の中では、15年以上話していると思っている
- 実際に、ポッドキャストの中で話は出している
だけど
- 関節に特化してお話したのは4年前
だからエピソードを聞いていない人も多いでしょうし
聞いてくれていても記憶が曖昧になって当たり前。
やっちまったーというヤツですね。
そのような事実を8月に発見したのもあって
来週月曜日に行われる教師のためのライブラリ、1年会員限定ライブで
骨盤の話をするんですが、それはまた、別の話。
「関節 動きの生まれるところ」というタイトルでブログを書いたのは
驚きの2013年、つまりDLSがスタートした時ですが
先ほどお話したように、ポッドキャストでは2021年にエピソードにまとめました。
そのブログより、オープニング部分を引用しますね。
”皆さんの知っている通り、「骨自体」は動きません。
骨だけ勝手にどっか行っちゃわないし、動きを作ろうとしたら…折れてしまいますよね。
じゃ、動きはどこから生まれるのか?その答えは関節が握っています。”
関節はダンサーにとってとても大事
その後は、ダンサーが求めている柔軟性とか、俊敏な動きなどを練習する前に
「筋肉が、骨を、関節から動かしている」という事実をしっかりと理解する必要がある。
と続いて、関節の簡単な構造と、間違った体の使い方
特に関節の構造や動く方向を理解せずにストレッチするとケガにつながる
という話をしていました。
スタジオで見られる急性のケガNo.1の捻挫をはじめ
- つま先を伸ばすと痛くなる、足首の後ろ側
- プリエすると詰まったような違和感がある、足首の前側
- リハが続いたり、連続ジャンプの着地で痛くなる、膝
- アラセコンドで痛みが出る股関節
- カンブレで痛い腰
など、ダンサーのケガを考えてみると、関節が関係していることが殆どなんですよね。
さっきお話したように、関節とは動きの生まれるところですから、
動くと痛いというケガがあった場合
それって広い意味では関節が影響しているとも言えます。
ほーら、関節はダンサーにとってとても大事だって分かったでしょう?
余談だけど、今読み返しても入門編としては良いことが書いてある記事なので
来週から難しい話になる前に、予習として読んでおくことをお勧めします。
動きを作るのは筋肉
けが予防のためにも、柔軟に体を使うためにも、関節が大切だということはわかった。
だからこそ、入念にストレッチして関節が動きやすいようにしてあげる必要があるのでは?
そう思った人、間違いではないんですが、1つ重要なポイントが抜けています。
関節は動きの生まれるところ。
だけど、関節「が」動きを「作る」のではないんですよね。
動きを作るのは、つまり関節を動かすのは筋肉なんです。
確かに関節の柔軟性は大切ではあるんだけど
筋肉がないと関節を動かしてくれる張本人がいないので動けません。
ダンサーの柔軟性でフォーカスされやすい、つま先で考えてみましょう。
- ダンサーは、一般人よりつま先を伸ばさなければいけない…YES
- ダンサーの足首は、一般人より柔軟でなければいけない…YES
それに追加して、
- ダンサーの足首、つま先は、一般人より強くなければいけない…YES!
何度も繰り返すルルベはもちろんのこと
- ほかのスポーツや芸術では絶対に使わないトウシューズ
- ほぼクッション性のないシューズで、2-3時間の舞台をこなすこともある職業
- 少しでも足が床を離れたら、伸ばさなければいけない、というテクニカルルール
を考えたら
ダンサーのつま先が、超人レベルで強くなければいけないということに気づくよね。
関節を守るのも筋肉
関節を動かしてくれる筋肉ですが、実は関節を守るのも筋肉なんです。
軟骨、靭帯、関節包…関節には様々な組織があって
それらすべて関節を守る仕事をしてくれてはいますが
それら多くの組織は、パッシブに、つまり受動的に関節を守ってくれています。
だけどね、筋肉だけは私たちの努力で、大幅に強さをコントロールできるんです。
誰でも、何歳からでも、週に1度のエクササイズからでも、向上できるんです。
すごくない?
だから私は、バレエ学校で、治療家としてケガをケアし
講師として解剖学を指導するだけでなく、エクササイズクラスを担当して
総合的にダンサーのケガの予防とリハビリをサポートしてきました。
だから今、がん治療でお休みしている時でも
ボディコンエクスプレスというダンサーに特化したエクササイズを提供するクラスは
インストラクターコース卒業生の先生たちに担当してもらっています。
DLS公認スタンスインストラクターコースを提供しているのも
皆さんのスタジオのケガを防ぎ、みんなの夢や将来の健康をサポートできる
方法の1つだと強く考えているからです。
もちろん、ダンサーのケガが減れば、ケガのせいでバレエを辞める子たちも減る。
つまりスタジオ経営の面でも大切だという考えもありますが。
来週からのポッドキャストでは、関節の構造をもう少し深く掘っていきます。
ですが、今日お話した関節と筋肉との関係も忘れないでください。
そして何より、すでに聞きなれている言葉で、知っていることもあると思う関節だけど
何度も繰り返すことで、思い込みや、忘れちゃっているところ
知識として知っているけど、レッスンに取り入れていなかった部分
などを確認してみてくださいね。
とはいえ、来週お話する関節の話は、殆どの人が知らないとは思うけど…
Happy Dancing!
