暗記だけのバレエレッスンになっていませんか?
“質問する力”で解剖学やエクササイズを見直すと
指導も練習も、より安全で効果的になるかもしれません。
Transcript
こんにちは、DLSの佐藤愛です。
5月最後の金曜日になってしまいましたね。
5月病にならず、元気に1か月を過ごせましたか?
5月病とは、医学用語でもなければ、ちゃんとした診断名でもないんですよね。
つまり、5月じゃなくても症状が出ることがあるし
Aさんの5月病と、Bさんの5月病では、診断名が異なるため
対処法や薬が異なることがあるわけです。
新学期の疲れが出ているだけの人もいれば、気温や季節にやられている人もいる。
適応障害や鬱など、もっと大きな心理的な問題の人もいます。
だからね、「私はこうしたら良くなりました」的な言葉は
特に素人は絶対に使ってはいけないわけですよね。
もちろん、DLSのポッドキャストですから、5月病の話をしているんじゃないですよ。
これを例にとって、バレエ界でよくある問題についてチクチク言っているんですよ。
先生が「私はこうしてきたのよ」という言葉と共に
ストレッチやアイシングについて言及したり
食事やサプリなどについても口にすることも。
先生の経験がダメだって言っているわけではないです。
その方にとって役に立ったなら素晴らしい!
だけどね、同じように腰が痛いと言っても
指導でずっと同じ軸足でアンシェヌマンを見せているから起こる機能性の腰痛と
成長期の体に起こりやすい「腰椎分離症」つまり、疲労骨折のひとつであったら
同じストレッチ、アイシング、ケアで良いわけがない。
骨折れているのに、ストレッチしていたら分離がひどくなる可能性がありますし
疲労骨折の場合、アイシングは回復を遅らせる可能性があります。
こういうことを知らないんだったら、簡単に口に出せないわけ。
もちろん、アレルギーや過去の病歴、年齢、他の運動や活動を考慮していない
食事についてのアドバイスやサプリの勧めもとても危険ですが
皆さんはもう分かっているよね?
考える能力!?
さて、今月のポッドキャストはリサーチペーパーから少し離れて
2月末から3月いっぱい過ごした日本で感じたことをお送りしてきました。
最終回の今日は、”考える能力”についてお話していきたいと思います。
考える能力って何?という感じですよね。
思考力とでも言うのかもしれませんが
これらは私の分かる限りでは、心理学の言葉ではなく俗語だと思われます。
なので、私が今回の来日で感じた「考える能力」という意味で
捉えていただけたら嬉しいです。
ご存じのように、今回の来日は
愛する小鬼たちと、私の家族&友達に会うためという
結構自分勝手なテーマがあったのですが
すでにYouTubeチャンネルで見てくれていたらお分かりのように
インストラクターコースの試験やクラス、セミナーがたっぷり詰まった
1か月を送っていたんですね。
試験のために勉強が必要じゃない?
だから、勉強の仕方についてもたくさん考えてきた1か月でした。
私もそうですが、学校の試験というと暗記だったでしょう?
当時、テストで点数が高い子、つまり周りが思う頭が良い子って
暗記が出来る子だったと思うんですよ。
- 年号や、歴史上の人物を覚えている
- 単語のスペルを覚えている
- 方程式を覚えている
みたいな感じ。通じます?
だから、語呂合わせしてみたり、何度も過去問を解いて
方程式を記憶していきませんでした?
そういった勉強が推奨されていたから
- 自分で考えて、自分の意見を伝える
- どうしてそうなったのかを考えたり、ディスカッションする
というような力は、育てられていない気がします。
というか、逆に不要なものと言われてきたかもしれない。
- 授業中、手を挙げて質問したら、うざがられる
- 放課後、先生に質問したら、先生に気に入られようと頑張ってると言われる
- 分からないって言ったら、笑いものにされる
みたいな感じがあったのではないでしょうか?
マーキングする側の先生も
年号やスペルなど、答えがひとつの方が白黒ハッキリするので
仕事が早く進むという部分もあるのかもしれません。
もちろん、掛け算九九のように暗記した方が
その後に役に立つこともたくさんありますし
覚える力が不要だと言っているわけではないです。
でも、考える力「も」必要なんじゃないかなって思うのです。
バレエレッスンの”暗記”
バレエにも、暗記のエレメントがたくさん存在しますよね?
- 振付を覚える
- パの名前を覚える
- バミリの数を覚えて、はける袖の数を覚える
レッスンではおしゃべりはしないでしょう?
アンシェヌマン中にいくつも先生に注意されるから
メモする時間も、考える時間もなくて
ただ言われたことを覚えておくでしょう?
だから、長くバレエをやってきた人たちは、当たり前のように
- 引き上げて
- 股関節からターンアウトして
- 太ももではなく、足の後ろ側を使って足を上げて
- 軽く着地して
なんてことを言うし、言われたら「うんうん」って聞く。
でも、それって何でしょうか?
- 引き上げとは何?
- どうして必要?
- どうやったら引き上げていると分かる?
- どれくらい引き上げたらOK?
- 逆に引き上げていなかったらどうなる?
そのような質問に答えられる先生は、どれくらいいるかしら?
そこまで説明している先生は、どれだけいるかしら?
さっきもお話したように
学校では暗記が勉強だと言われて、暗記が出来たら、点数が上がる。
バレエのレッスンも、先生に言われたことは絶対。
もし、このような環境で育ってきた先生がいたら
そりゃー言葉にしたり、質問したり、説明したりできないわけですよ。
だって、その部分をやってきていないから。
才能がないわけではなく、ダメな先生なわけではなく
ただ単純に練習不足な部分だってことです。
Again、暗記がいけないとは言っていません。
パの名前を覚えなければ、アンシェヌマンが分からないし
アンシェヌマンが覚えられなくて間違った動きをしたら
クラスメイトとぶつかってケガしてしまう可能性もあるのだから。
先生の武器=言葉
だけど、バレエをはじめ、ダンスやエクササイズを指導する先生たちって
言葉が武器じゃないですか?
もちろん、自分で踊って見せるという部分もあると思いますよ。
でも、生徒たちには自分を超えてほしいじゃない?
自分より良いダンサーになってほしいじゃない?
そうすると、いつかお手本を見せることでは足りないレベルの指導がくると思うのです。
お給料の観点から、一日に複数のクラスを指導していると思うし
クラスがない時は事務作業もいっぱいあるでしょう?
その場合、1-2クラスでガッツリ踊り
その後はエネルギー不足なんて言ってられないですよね。
もちろん、自分がケガ、病気のこともあるでしょう。
だから、指導者としてコンスタントに使える武器は、言葉だと思うんです。
そうすると、自分が言われてきたけど
自分でもよく分からない言葉を指導で使うわけにはいきません。
だって、分からないことは、指導できないから。
ということで、良い指導者になりたかったら
考える力が必要になってくるんですよね。
そして、私が思う”考える力”とは、質問する力だと思うんですね。
分からないことを放っておいても、分かるようにならない
私が大切にしていることのひとつに、質問する力があります。
分からないことを、放っておいても分かるようにはならない。
だから、コースで学ぶわけじゃないですか?
だけど、何が分からないか?が分からないと
こっちもサポートしてあげることができません。
例えば、「正しいプランクが分かりません」という質問があったとするじゃない?
でもそれって、具体的に何が分からないのでしょうか?
- プランクという形が分からない?
- 骨盤の方向が分からない?
- どうしても肩甲骨が出てしまうけど、直し方が分からない?
これらが分からないと、修正できないでしょう?
プランクという形を知らない子に、骨盤の方向を伝えても意味ないし
肩甲骨をフラットにする方法を練習しても、骨盤の方向は直らない。
逆に言うと、何が分からないのか?を具体的に説明できればできるほど
サポートを受けたり、自分に合った答えをもらうことが出来るんです。
ちなみに、プランクとは、英語で平らなもの、平らな素材を指す言葉ですので
体を一直線にしてホールドするという形から
このエクササイズの名前がついたと言われます。
そのため、どんなバージョンのプランクをしていても
骨盤は背骨に対して正しいプレースメントにある必要があります。
だって一直線、つまり正しいアライメントでホールドする練習だからね。
よって、正しい骨盤の位置は、背骨、特に腰椎に対しニュートラルということになり
背骨のカーブには個人差があることを考えると
正しい骨盤の方向は、そのダンサーによって異なるんですね。
腕、もしくは肘を床について体をサポートするため
肩関節のコントロールがうまく出来ていないと
肩甲骨が背骨側に寄ってしまったり、ウイング状態になってしまうことがあります。
この場合は、床をプッシュするというキューイングで
前鋸筋を意識することでコントロールできる人もいますが
そもそも肩関節の安定や、筋力が弱い人
さっきお話した前鋸筋が体をサポートするだけの強さがない場合は
プランクではなく四つん這いで、その部分を練習する必要があります。
ほらね?どこが出来ないかを考えることが出来ると
何が足りないのかが分かり、結果何をしたらいいのかが分かるってこと。
質問する力の具体例
さっきお話したように、私は考える力=質問する力だと思っています。
それは、学校で授業中に手を挙げて先生に質問する力という意味ではありませんが
自分に問いかける力とでも言うのでしょうか?
さっき使った「正しいプランクが分からない」という問題を引き続き使って
質問する力ってどういうことかを具体的に考えてみましょうか。
Q1:何が分からないんだろう?
A:プランク
Q2:どんなプランク?
A:肘をまげて床につけて、膝をつける形のプランク
Q3:そのプランクの、どの部分が分からない?
指導がうまくいかない?自分で出来ない・感じられない?
A:指導。正しい形かどうか、目で見て分からない。
Q4:どこが分からない?逆に、どこは分かる?
A:首を落としていけないというのは分かるし
肋骨を落としちゃいけないというのも分かるけど、骨盤の方向で困ってる。
Q5:それって解剖学的には、どの部分?
A:骨盤
Q6:このエクササイズで、骨盤は動く?動かない?
A:動かない。ホールドする。
Q7:このエクササイズで、骨盤はタックでホールド?ダックでホールド?
A:多分、骨盤は真っすぐのままホールドだけど、その真っすぐが分からない。
Q8:さっき頭は下げないというのは分かっていると言ってたじゃない?
じゃ、上半身の方向はどうなってる?
A:頭から、膝までが一直線になる。
Q9:そしたら、骨盤はどの方向に対して真っすぐになると思う?
A:頭と膝までのラインと、骨盤の前の三角形のラインが平行になること?
おめでとうございます。答えにたどり着きました!
次回の指導では
プランクをしているクライアントの骨盤の前の三角形の方向を
体の方向に対して確認するのを忘れないようにすればいいよね?
答えが出なくてもいい
こんなマニアックなポッドキャストを聞いている皆さんなら
今の質問の7番くらいまでは問題なくついてこれたと思うんですが、いかがですか?
でも、もしかしたら
Q7で、プランクのとき、骨盤って真っすぐでいいんだっけ?と
不安が生まれちゃった人もいるかもしれないし
Q8で、上半身は斜めになるけど、何度くらいだろう?
なんて気になった人もいるかも。
最初にお話したように、質問する力は、暗記する力ではありません。
だから、答えが出なくてもいいんです。
でも、良い質問が出来たら、良い答えが見つかります。
次のクラスで先生に質問できるかもしれないし
おすすめはしないけれどネット検索もできるかもしれない。
「正しいプランクが分かりません」ではなく
「プランクのときは、骨盤はニュートラルでよかったんですよね?
タックとかダック、しないですよね?」って
レッスン前にちょこっと聞くことができたら、恥ずかしくないかもしれません。
もちろん、分からないところが見つかったら、どこを勉強し直せばいいかも見えてきます。
骨盤の方向は分かっているのに、クライアントの体では分からないなら
教科書とにらめっこではなく、仲間と一緒に練習して、見る目を育てていく必要があります。
骨盤がニュートラルとか、骨盤の前の三角形が、すらすら出てこなかったら
解剖学の知識が足りないんだろうなと気づけますよね?
そしたら、次の勉強時間を使って、骨盤のプレースメントについて復習すればいいんです。
質問する力は、答えられる力ではありません。
何度も言っているけど、質問する力とは考える力です。
だから、自分に足りない部分を考える力にもなるわけですよね。
多くの場合、こうやって深く考えていない自分を発見するでしょう。
- 分からないって、考えることを投げ出してただけだったんだ
- 分からないって言っておけば、誰かが答えをくれるから、考えなくて済むと思ってたんだ
とか自分の弱点が見えてくると思うんですよね。
指導者なら質問する力を持とう
さっき練習したみたいに、自分に質問するのって、難しいですよね。
だからこそ先生は、良い質問が出来るようになるのも大事だと思うのです。
生徒が分からない、できないと相談してきてくれた部分を
「私のときはね~」と経験談で話すのではなく、質問してみる。
そうすることで、その子が困っている壁に気づくことが出来ます。
自分で答えが出せる子もいるかもしれませんし
「試しにOOやってみたら?」みたいなアドバイスをすることが出来るかもしれません。
たとえ分からなくても
「OOのXXが分からないのか。じゃ来週までに先生も調べてみるね」と
答えてみるのもアリだと思う。
今日はプランクを例にとってお話してきましたけど、問題が
- 受験で生徒が辞めてしまう
- 保護者が家でストレッチさせてしまう
などスタジオで見られる問題だったとしても、同じように自問したり
ボトルネックになっている部分を見つけたりすることが出来るんじゃないかしら。
解剖学的にバレエを指導したいと思った場合
安全にエクササイズを指導したいと思った場合
答えはひとつではありません。
その生徒さんの体、骨の長さ、筋力、バレエやエクササイズ歴は違うのだから
プランクの形から、プリエの深さ、伝える注意の方法も異なるわけじゃないですか?
先週末に今年の申し込みが終わり
来週から6期生が始まるDLS公認スタンスインストラクターコースでは
100のエクササイズを暗記するのではなく
1のエクササイズを100通りにする方法を学びます。と伝えることもあります。
100のエクササイズを学ぶのは暗記。
1つのエクササイズを100通りに考えるのは、言葉通り、考える力。
そして私は、動きを教える指導者なら、考える力は絶対必要だと思っています。
コースや試験はもちろん、ライブラリやポッドキャストで、
考える力、つまり質問する力を磨いていけるお手伝いが出来ていたら
嬉しいなとも感じました。
それが、生徒の安全と将来の健康を考えるレッスン、だと思うからです。
ということで、今日のポッドキャストはここまで。
今月はいつもと違う感じでしたけれど、楽しんでいただけましたでしょうか?
ポッドキャストの感想、リクエストは
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来月は、またまたストレッチについてお話していきたいと思います。
ポッドキャストでは、何度も何度もストレッチについて取り上げてきましたが
今回はオーバーストレッチについて深く考えていくので
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Happy Dancing!
