DLSポッドキャスト epi616 今更聞けないオーバーストレッチの定義

「なんとなく」でストレッチ指導していませんか?

自分の知らないことは教えられない。

安全で効果的なバレエレッスンのために

今さら聞けないオーバーストレッチを解説してみました。

Transcript

皆さんこんにちは、DLSの佐藤愛です。

今月のポッドキャストでは、ストレッチをテーマにお送りします。

もうね、ポッドキャストでは何度も、何度も、何度も!

ストレッチをテーマにお話してきたんです。

だって、今日はエピソード616だからね。

10年以上溜まったアーカイブから

何時間ものストレッチ素材を探すことが出来ると思うのです。

直近だけでも、昨年2025年3月が

「今更聞けないストレッチについて」をテーマにしましたよね?

エピソード551では

「そうはいっても、体が柔らかい方がケガしないんでしょう?」

エピソード552では

「そうはいっても、運動前はしっかりストレッチして

ウォームアップしないといけないんでしょう?」

エピソード553では

「そうはいっても、年のせいで体が硬いから、ストレッチ必要でしょう?」

エピソード554では

「そうはいっても、ストレッチしないと不安になっちゃうんです」

というダンサー特有の悩みを紐解いていきました。

このシリーズから

いくら床で柔軟しても、ケガ予防にはならないって分かってくれたり

レッスン前のストレッチを辞めてくれていたら嬉しいし

年齢と柔軟性についての正しい知識と

スタジオに新しい対策を入れることについて

不安な気持ちを乗り切るためのヒントが手に入っていたら幸いです。

ストレッチに関しての「そうはいっても…」という悩みは4つだけじゃないですよね。

今月は、まだまだ残るストレッチの噂話や

「そうはいっても愛さん…」的な悩みに答えていきましょう。

1回目の今日は、前回のシリーズでカバーが足りなかったこと

オーバーストレッチの定義についてお話していきたいと思います。

もしかしたら、今さらストレッチとオーバーストレッチの違いについて聞けない!

という人もいるかもしれないですものね。

オーバーストレッチとは何?

オーバーストレッチとは何でしょう?

オーバーも、ストレッチも英語なので、英語の辞書で調べてみました。

Cambridge dictionaryによるとオーバーストレッチとは

「人や物に対して、本来できる以上、またはすべき以上のことをさせること」

と出てきました。

というのも、さっきもお話したように

オーバーもストレッチも英語なので、解剖学とかエクササイズ用語ではないんです。

そのため、私たちが考えるブロックの上にかかとを乗せて、膝を押し込む長座とか

椅子に足を乗せたスプリッツだけではなく

「お金や人材などを使いすぎる」「仕事をさせ過ぎる」という意味にも使われるのです。

ちなみにこの単語、いい意味では使われません。

ネガティブな意味を持つ言葉です。

とはいえ、このポッドキャストで意味するオーバーストレッチは

ダンサーの床で行うストレッチなんだから

「人や物に対して、本来できる以上、またはすべき以上のことをさせること」という言葉を

人間の体に当てはめてみましょう。

「人や物に対して」という部分は

「関節」「筋肉」「ダンサー」という言葉に変えられます。

「本来できる以上」という部分は

「正常な関節可動域」ですね。

すべき以上、という部分はやるべきではない

つまり「禁止されている」か、「不必要」と読むことができるはずですから

「ケガや年齢で行うべきではない」

もしくは「バレエや生徒に不必要」という意味になります。

  1. 関節や筋肉を、正常な関節可動域を超えたり、組織のケガや成長段階を考慮せずストレッチすること
  2. ダンサーを、人間の正常な関節可動域を超えたり、彼らのケガや年齢に適さない、またはバレエに不必要なストレッチをさせること

これらが辞書の定義から考えられる、オーバーストレッチの定義になるはずです。

ストレッチがダメだとは言っていない

エピソード551でも、しっかりとダメ押ししましたけど

私は一度も「ストレッチをしちゃいけない」とは言っていません。

今回も同じだよ?

今見たように、ストレッチとオーバーストレッチは、意味が異なる言葉です。

これ以上進む前に、この部分をしっかりと理解してくださいね。

とはいえ、オーバーでないストレッチだからといって

ウォームアップの代わりになったり

年齢に関係なく皆が出来るわけではないですから

そこは、2025年3月のポッドキャストシリーズに戻って復習してください。

「ダンサーは体が柔らかい」というのも嘘ではないです。

一般の人達よりも、足を高く上げたりつま先を伸ばしたりしなきゃいけないですからね。

しかも「練習を重ねたダンサーの動きが柔らかく見える」というのも事実じゃないですか?

軽やかな着地の方が、どすっと落ちたプリエよりも柔らかく見えますし

スムーズなポーデブラや、しなる背中なども

バレエダンサーを表現する言葉になっています。

でも、柔らかな、スムーズな動きの為には

強靭な筋力とコントロール力が必要だということを

私たちバレエの世界にいる人達は知っていますよね?

開脚できても

アダージオでアラセコンドに高く足を上げ、何もなかったかのように

プロムナードできるようになるわけではないって知ってますよね?

私の父の様に、発表会しか観に来ない人には分からないとしても

毎日レッスンを指導している先生や、週に何度もスタジオに通っている子達

そして、その保護者さんたちは分かりますよね?

シロウトが分からなくても仕方ないけど

どうしてこういった、バレエのことがある程度分かっている人でも

オーバーストレッチに惹かれちゃうのでしょうか?

これは、来週のテーマにしたいと思います。

あなたがストレッチを指導してもいいの?

さっきもお話したように

私はストレッチをやってはいけないとは言っていません。

でも、指導すべきでない人たちが指導しているとは思う。

どういうことか?

その説明の前に、バレエの先生たちの経歴を考えてみましょう。

バレエの先生たちのほぼ100%が、バレエを習ってきた人たちです。

そして、その人達の多くがメソッドやシラバスを学んでいるはず。

もしくは、自分が踊ってきた経験だけでなく

様々な指導者用講座やセミナーなどで学んでいるはず。

メソッドやシラバスがあるクラシックバレエはこういう面でちょっと有利ですが

モダンやコンテ、新体操などになってきたら

世界規模で管理されているシラバスなどがないから

それこそ、定期的に様々な指導者用講座やセミナーで

知識をアップデートしているはずでしょう。

そのため、クラシックバレエの先生以外の人たちも

DLSで学んでくれているんだと思います。

インストラクターたちも、結構な%でクラシックバレエ以外の先生たちがいますから。

これらのバックグラウンドの中で

果たして安全にストレッチを指導することを学んだ先生はどれくらいいるんでしょうか?

バレエのシラバスには、床で行うストレッチは含まれません。

ピラティスなどのボディワークの資格でも

前後開脚や開脚、エビぞりなどは含まれないはずです。

もう一度お聞きします。

安全にストレッチを指導することを学んだ先生はどれくらいいるんでしょうか?

さっき「指導すべきでない人たちが指導しているとは思う」とお話しましたよね?

治療家としての勉強の一環でも、運動療法やリハビリの知識でも

ヨガのアサナでも、サーカスパフォーマー用のセミナーでも

なんでもいいです。ストレッチの勉強がされているなら。

私は、自分の知らないことは指導できないと思っています。

だって、正しいか、間違っているかを判断するためには

その商品のことを知らなければいけないからです。

お料理を出す人なら、何を材料に使ったかを知らなかったら

衛生管理やアレルギー対応はできません。

スキンケアだったら、お店で売り出す前に

その商品の安全性をチェックしてあるはずです。

だから、ストレッチを指導して、お金をもらうのであれば

その安全性、内容、危険なことを知っていなければいけないのではないでしょうか?

体のことが分かっていなければ、ストレッチは指導できない

  1. 関節や筋肉を、正常な関節可動域を超えたり、組織のケガや成長段階を考慮せずストレッチすること
  2. ダンサーを、人間の正常な関節可動域を超えたり、彼らのケガや年齢に適さない、またはバレエに不必要なストレッチをさせること

これらが辞書の定義から考えられる、オーバーストレッチの定義だったとしたら

安全にストレッチを指導するためには

  1. 人間の体、関節、筋肉の知識
  2. ケガ、年齢からくる禁忌、contraindication
  3. バレエ、もしくはそのスポーツの正しい動き、求められる形

を理解している必要があり

そのうえで

  1. ストレッチを安全に、指導する知識がある

はずです。

そして、そのような勉強をすればするほど

人間の関節の可動域を制限する大きな要因は骨の形であり

それは個人差があることを理解するので

同じ角度、同じ形に見えるストレッチでも

Aさんは大丈夫で、Bさんは危険となることがあると分かるはずです。

今のAさんは大丈夫だったとしても

10年前のAさんはだめかもしれないし、20年後のAさんはだめかもしれない。

こういうニュアンスを理解するには、土台となる知識が必要です。

だからね

  1. そうはいっても、オーバーストレッチじゃなかったら大丈夫でしょう?
  2. そうはいっても、安全に行えば大丈夫でしょう?

という声が聞こえたとき、私はこう思ってしまいます。

「それより先に、あなた勉強してる?」

保留というオプション

鬼が発動したところで、もうちょっとツノを磨いてみます。

正直なところ

  1. OOさんがやってる、このストレッチ大丈夫ですか?

と質問している時点で、何かおかしいって気づいているんじゃないの?

その子の体とケガを熟知していて、リスクとメカニズムも理解していて

ストレッチを指導する上で出た質問だとしたら

「OOさんがやっているので大丈夫ですか?」的な質問にはならないはずなんです。

先週のエピソードのように、より具体的な質問が考えつくはずだから。

だって、オーバーストレッチの定義によると

OOさんがやってるこのストレッチ、やってもいいですか?の答えは

  1. はい、大丈夫です!
  2. いいえ、大丈夫ではありません!

2択なのではなく、骨格、年齢、ケガの歴などによって左右されるのですよね?

だけど、誰かに「大丈夫ですよ」と言われると

人は安心するんです。

そして、責任転嫁もできます。

  1. OOさんが大丈夫って言ってたから。
  2. XXさんがやっても、問題なかったから。

こう言えば、自分の責任ではなくなるんですよね。

そのストレッチが良い、悪いは置いておいて

もし迷うんだったら、不安なら

まずは勉強する必要があるんじゃないかしら?

そして、自分なりの答えが見つかるまでは

保留、つまりやらないという判断をすべきじゃないかしら?

大丈夫って分かったら、再開すればいいし

ダメだったと気づいたら、辞めててよかったと思えます。

「今はやらない」という判断は

ダンサーにとっても先生にとっても、賢い武器になると思いますよ!

ということで、今日のポッドキャストはここまで。

オーバーストレッチの定義だけでなく

その周りにある懸念点も一緒にお話してみましたがいかがでしたでしょうか?

来週は、バレエのことを知っている先生でも、子供の安全について考えている保護者でも

オーバーストレッチに惹かれちゃうのか?を考えていきたいと思います。

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Happy Dancing!

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