背中を反らせれば柔らかくなる?
背骨の構造を知ることで、腰だけで反ってしまう理由や、
効果的に背中の柔軟性をアップする方法が見えてきます。
脊柱についてバレエと解剖学の視点から勉強していきましょう。
Transcript
こんにちは、DLSの佐藤愛です。
今月は背骨についてをテーマにお送りしています。
先週は背骨のセクションとカーブについて勉強しました。
ダンサーはもちろん、保護者や先生たちは、
そちらを聞いて正しい背中の使い方を覚えてくださいね。
先週は脊柱というカタマリから、頸椎、胸椎、腰椎などセクションを見ていったけれど、
今週は背骨単体をみていきましょう。
椎骨のボディとしっぽ
これからお話していく部分では、頸椎1番と2番を仲間外れにします。
というのもこの2人、ちょっと特殊というか個性的なのね。
ですが、頸椎3番から腰椎5番まではある程度似ている形をしているので、
その子達にズームインしてみましょう。
背骨の単体、椎骨には2つのパーツがあります。
そうそう、脊柱というのが背骨のカタマリ、骨格で、椎骨というのが1つの骨ね。
どちらも一般的には背骨、と言われますが区別していきましょう。
椎骨には椎体というボディ部分と、椎弓(ついきゅう)というしっぽ部分があります。
背中を丸めると、ぼこぼこ骨が触れますよね?
これが椎弓にある、棘突起です。
ちょっと話が先走っちゃったから、元に戻ってくるね。
椎骨には、椎体というボディ部分と椎弓というしっぽ部分があります。
ボディのサイズやしっぽの長さ、角度というのは椎骨一人ひとり異なるのですが、
- 頸椎では小さなボディに比較的短いしっぽが
- 胸椎ではかなり長く、斜め下向きのしっぽが
- 腰椎はボディが大きく、短く真っすぐ目な、四角いしっぽが
ついています。
なんでしっぽの長さや角度について話しているかって?
それはこの部分の構造が、どれだけ後ろに反れるか、
つまり背骨の伸展が出来るかを決めるからです。
この詳しい話は、後半で説明しますね。
脊柱とクリオネ
クリオネって知ってます?
一見可愛い見た目だけど、色々と調べてみると結構グロテスクなあの子。
ここから先は、クリオネの話が出てきますので、
姿を思い浮かべることができない人は
ささっとグーグルサーチしてください。
椎弓、つまりしっぽ部分には7つのでっぱりがあります。
先ほど私が先走っちゃった、棘突起と、左右のでっぱりである横突起です。
横突起の「横」とは、よこ、という漢字を使いますので、
横に出っ張ってる突起というシンプルな名前なんですね。
残りの4つは上関節突起(じょうかんせつとっき)の右左、
下関節突起(かかんせつとっき)の右左ですが、今日は割愛していきます。
椎骨を上から見ると、
- 椎体がクリオネの頭
- 横突起がクリオネの手
- 棘突起がクリオネのしっぽ
となりますが、
先ほどお話したしっぽ部分である椎弓の、
さらにしっぽが棘突起という感じでイメージしてください。
皆さんが目に見える部分、触れる部分は背骨の棘突起だったんですね。
椎弓とは、椎骨の「椎」に「弓」と書きます。
なのでしっぽ部分は弓なりにというか「くの字」になっているの。
くの字の出っ張っている部分が伸びたのが、棘突起。
くの字の上と下、つまり書き始めと、書き終わりの点を伸ばしたのが、横突起。
うーん、やはり音声で説明するのは難しいですね。
なので正確には、クリオネの頭、手としっぽの真ん中には穴が空いているんです。
そこに神経が通っているんだね。
子供の腰痛と椎骨
成長期の子達で腰痛を訴え、
分離症疑いのためにMRIを撮影した子達の4-5割に
腰椎分離症が見つかったというデータがあります。
腰椎分離症とは、さっき勉強した椎弓の疲労骨折のことなんです。
疲労骨折とはどういうケガだったか覚えています?
慢性的に、1か所に負担がかかり続けて骨折に至ってしまうケガ。
特にこの部分は、繰り返し反らせることと、
回旋させることで起こるケガだと言われています。
先週「背筋鍛えたいからエビぞり一本」という練習方法では
バレエダンサーに必要な様々な背骨の動きは出来ないよとお話しましたよね?
そして、その動きが危険だから十分気をつけないといけないという話もしました。
その理由がここ。
エビぞりを1回したからって疲労骨折にはなりません。
でもね、まじめでバレエが大好きな子達ほど、
こういう動きをお家で練習してしまいます。
もしくは、体が柔らかく、エビぞりがたくさんできるから褒められた子は、
褒められた行動を続けます。
こうやって、気づいた時には骨折していたということがあるんです。
アラベスクが上がらないからエビぞり。
お腹が弱いと言われて背中を丸める腹筋。
1か所だけ、何度も、何度も曲げ続ければ針金が折れてしまうように、
1か所だけに負担をかけ続けると、疲労骨折へと進んでしまいます。
わたしもその一人でした。
当時は疲労骨折だとは知らず、スタジオの大先生ご用達の鍼灸師さんだったのかな?に
漢方と指圧を受けたのを覚えています。
先生からはおなかが弱いから腰が痛くなるんだと言われていました。
骨が折れている場合、マッサージをしても良くなりませんよ?
疲労骨折してるから腰が痛いのに、
背中を丸める腹筋運動をしたらもっとひどくなりますよ?
当時はこのような知識がなかったので、正しい努力をしていると思っていましたけどね。
椎間板と背骨の柔軟性
話を解剖学に戻しましょう。
椎体と椎体の間には、椎間板と呼ばれる軟骨が入っています。
軟骨の種類は線維軟骨というもので、骨盤の恥骨結合に使われる軟骨と同じ種類です。
椎間板、特にその中心にある髄核は水分量が多く、クッション性に長けています。
先週勉強したように、背骨にはカーブがあり、
衝撃吸収をしてくれるようになっていますが、
それだけでなく、椎間板もクッションの役割を果たしてくれているんですね。
実は椎間板は、背骨の柔軟性のカギなんです。
ご存じのように、骨は動けませんね。
動かそうとしたら折れちゃいます。
関節で動きが生まれます。
背骨の関節とは、今見ている、椎間板のあるところ。
つまり椎間板の部分で背骨は動いてくれるのです。
椎間板が分厚ければ分厚いほど、動けるスペースが大きいことになります。
- 頸椎部分にある椎間板は、骨のサイズに対して分厚く、首を大きく動かすことを助けてくれます。
- 腰椎部分にある椎間板は、背骨全体で見た時に一番分厚く、椎体の1/3というサイズ。
上半身を支え、足からの衝撃を緩和するという上下の衝撃吸収をやってくれます。 - 胸椎部分にある椎間板は、骨に対して椎間板が一番薄く、あまり動かない構造になっているんです。
だからね、ちゃんとトレーニングさせていないままで、エビぞりさせると、
- 腰から大きく反り
- 首を後ろにバッタリ倒す
けど
- 胸椎部分はあまり動いていない
という形になってしまうんです。
こういった腰にかかる負担の連続が、
先ほどお話した腰椎分離症の一因になってしまうんですね。
棘突起と背骨の柔軟性
椎間板の厚みだけでなく、クリオネのしっぽ、棘突起も背骨の柔軟性に影響します。
しっぽが短く、角度が床と並行に近ければ近いほど、その部分の背骨は動きやすく、
逆にしっぽが長く、角度が斜め下、屋根の瓦のようになっていればいるほど、
その部分は動きづらくなります。
後ろに反る時にね(=背骨の伸展)。
頸椎の特に4番は棘突起がかなり短くて、首が後ろに曲がるようになっているんですね。
首をカクって後ろに折るようにしたときに、一番凹んでいるところ、
そこがC4、つまり頸椎4番です。
腰椎のしっぽも短く、真横に突き出ている感じです。
さっき見たように分厚い椎間板もあるので、腰椎は屈曲や伸展、側屈が得意です。
でもね、上下の関節突起のせいで、回旋は苦手です。
出来ないとは言っていないよ?苦手だけど。
関節突起とは何か?
これを言葉で説明するのは難しいので、今は
背骨って思ったより複雑な構造をしているんだなーと思ってくださったら嬉しいです。
胸椎のしっぽは長く、斜め下向きになっています。
しっぽの長さ、椎間板の薄さに追加して、胸椎には肋骨がついているじゃない?
そのため、この部分は動きづらくなっているんですね。
肺とか心臓とかが入っている肋骨部分がぐにゃぐにゃだったら困っちゃいますけど、
ダンサーとしてこの部分は、構造上動きづらいと知っておくことで、
- 動くのが苦手な胸椎を動かすように練習することができる
- エビぞりや、大きなカンブレのように背骨全部を動かすときに、
動かしやすいところ「だけ」でズルしていないか確認できる
つまり、安全にしっかりと背中を使えるようになるんですね。
ちなみに、私の通っていたバレエスタジオでは、エビぞりの形で先生が両手を持ち、
胸椎あたりに膝を当てて背中を「バキバキ」ならせるという”ストレッチ”を、
小さな子達のクラスにやっていました。
痛くはなかったと記憶しています。
逆に背骨が鳴ると、なんだか動けるような、柔軟になったような感じがしました。
お世話になったスタジオ、先生ですし、
彼らのおかげで私は今、ここでバレエに関係のある仕事をしています。
だから悪口が言いたいわけではないです。
きっと、先生たちも、自分たちが知っていることを、
生徒達の為に教えてくれていただけだから。
特に当時は、ネットで調べたり、論文を読んだりはもちろん、
バレエに解剖学なんて必要だと思っていた先生の方が少なかったと思いますから。
でもね、指導者として自分が指導する内容は、
しっかりと理論が分かっている必要はあると思います。
- 知らないなら、指導しない
- 知らないところは勉強する
- 勉強したら、指導できる
この3ステップを徹底するだけで、かなり多くのダンサー達の健康を守ることができると思います。
背中を使いたいダンサーが覚えておきたいこと
色々と難しい言葉が出てきてしまいましたが、背中を使いたいダンサーが覚えておきたいことは
- 背骨には構造上動きやすところと、動きづらいところがある
- 動きやすい頸椎と腰椎は、ズルしやすいので安定と強化が必要
- 動きづらい胸椎は、そこだけ集中して、徐々に段階的に、年齢に合わせて可動性をアップする必要がある
ということ。
それに追加して
- 背骨の構造を理解していないのに、バレエのアンシェヌマンに入っていないようなストレッチを、勉強していないのに指導しないこと
- 背骨の構造を理解していないのに、年齢やレベルを無視した振付をしないこと
- 特に、学生の「腰が痛い」は疲労骨折の疑いも忘れず、安全なレッスンを心がけること
を覚えておきましょう。
アラベスクに高く足を上げたいのは分かります。
スプリッツして、後ろの足を両手で持てたら「すごーい」って言われるのも分かります。
レッスン前にストレッチしてウォームアップしなきゃと”努力”しているのも分かります。
だって私もやってきたから。
でもね、椎体と椎弓の間にある穴、
脊柱管(せきちゅうかん)には、神経が通っています。
脊髄ってやつ。
背骨の関節1つ1つから、横に神経の腕が伸びていて、体全体に神経が広がっています。
この神経が傷ついたら、取り返しのつかない状況になるって、
解剖学を知らなくても想像できると思うのね。
しっかりと勉強して、安全に踊っていきましょう。
だって体がマヒしてしまったら、バレエなんて言っていられないのだから。
必要だったら、今年1月にシリーズでお送りした
オーバーストレッチのエピソードたちも聞いて復習してください。
安全な方法で、
バレエに必要な筋力や柔軟性を手に入れるにはどうしたらいいの?と思った人
ダンサーに特化したエクササイズ、ボディコンエクスプレスをどうぞ。
毎週5つのタイムスロットから選べる、オンライン30分エクササイズクラスです。
これからポワントやコンクールなど、より高いレベルで踊りたい中学生から
レッスンにたくさん通う時間はないけど、
大好きなバレエは上達したい大人生徒さんまで。
もちろん、指導し続けたい先生たちの体づくりの場所としても使ってください。
愛さん、先週は腰は反ってて良いって言ってたのに、
今週は腰をそったらケガするって言ってる。
どっちなのよ?と思った方々、大丈夫。
来週は、この部分をクリアにしていきましょう。
Happy Dancing!
