「バレエをやってるのに太るのは不真面目?」そんな思い込み、していませんか?
成長期の体型変化は正常で大切なプロセス。
先生や親の一言が、子どもにどのような影響を与えるのか、一緒に考えてみませんか?
Transcript
長いこと、バレエスタジオのお母さんたちがニュアンスを込めて使う
「女の子らしい体になってきたから」という言葉が嫌いだったDLSの佐藤愛です。
この言葉、聞いたことがありません?
「女の子らしい体になってきた」という文章はgoodでもなくbadでもなくis、
と私が使う言葉のように、感情がないはずなんですが、その言葉が使われるときは、
「年頃の女の子が太ってきたことをいい形で言おうとしている努力」
みたいなのが感じられて嫌いでした。
今考えると、これは周りの大人たちの反応だったのか、
私自身が「思春期に太ることはいけないことだ」と思っていたから「女の子らしい体に…」
と言われると努力が足りないと思ってしまっていたのか、分かりません。
どちらにせよ、ネガティブな意味合いを勝手につけていた気がします。
このポッドキャストをリアルタイムで聞いてくださっていたら、まだ今日は5月なんですが、
DLS公認スタンスインストラクターコースの5期生お申込みが無事終了しまして、
指導者向けのエピソードたちに小休止を入れようかなと思ったんです。
しかも、DLSメルマガを読んでくださっている皆さんならご存じのように、こっそりと裏で
「保護者が知っておきたい成長期の体セミナー」をオンデマンドクラスに作り直していまして。
その準備ができたので、久しぶりにポッドキャストでは保護者向け、
お家で出来ること系をお話しようじゃないか!と思いつきました。
ということで、今日のテーマは
「バレエをやっているのに、太ってきたのは不真面目な証拠なのか?」
自分がやりたいって言ってたのに、体型管理もできないの?
太りやすい時期だって分かってるんだから…お家でも言ってるのに?
という、口が裂けても鬼の愛さんには言えないけど…
という成長期の体の変化について考えていきましょう!
成長期の体型変化は、女性でも男性でも起こりますし、
体型についてのコメントは男性ダンサーでも受けるものです。
ただ、今日お話していく体型というのは、ホルモンが影響するため、
女性をメインにさせて頂いています。
成長期の男性ダンサーには、男性ダンサーなりの悩みや問題が出てくるので、
それはまた別の機会に取り上げましょう。
成長期の体型変化は「正常」で「健康のしるし」
まずは、事実の確認をエビデンスベースで行うのがDLS流じゃないですか。
だから根底からスタートしようか。
成長期に体型変化はするのか?
答えはYES。
だって成長する期間、って名前だものね、これに反対する人はいないですよね。
成長期に体重が増えるのは普通か?
この答えもYES。
だって身長が高くなったら、その分体重が増えて当たり前だもんね。
多分ね、冒頭にお話した「女の子らしい体」と言われる理由は、
身長が伸びたから体重が増えた、という部分ではなく、
前の体型に比べて、今の体型は太った、ということなんだと思うんですよ。
- おしりが大きくなった
- ふっくらしてきた
とか言う人達も多いでしょう。
そしてそれが目に見えるから、親が、特に母親が言うようになります。
異性の親が胸やお尻、太ももについてコメントをするのは、
気持ち悪がられるので、という場合も多いですが、
もしかしたら娘とちゃんと向き合う時間、顔を合わせるタイミングがない
という父親もいるかもしれません。
父親が良くて、母親が悪いと言っているわけではないのでご理解くださいね。
ただ、親の言葉の重みについては、もう少し後でお話していくので、
成長期、思春期のデータに話を戻しましょう。
思春期の体重増加や体型の変化は、生理的に「当たり前」です。
特に女性ホルモンであるエストロゲンの影響で、
脂肪が増えるのは正常な、健康的な、成長です。
成長期なので、このような成長は「正常」です。
米国疾病予防管理センター(CDC)によると、
月経が安定して始まるには、約17%の体脂肪が必要とされていますし、
月経は成長の一部であり、
骨をはじめ、体の様々な組織を正常に働かせるために必要不可欠です。
まとめてみると、
- 成長期は体が成長する時期
- 成長とは、身長だけでなく、ホルモンや臓器など多方向に渡る
- 女性の場合、月経も成長の証拠
だとしたら、
脂肪が増えるのは成長で、健康で、親としても、バレエの先生としても喜びたい変化です。
親の言葉が“体の見方”を決める
とは言っても、バレエ界ではこういう成長は嫌われる傾向があります。
昔に比べたらだいぶ良くなったけど、
残念ながら勉強不足のスタジオ、先生、そして保護者は、
このような体の変化があるのは知ってるけど、変わらないでほしい
って思っている人達が多いと思うの。
かなり前になりますが、私が働いていたバレエ学校に
日本のスタジオから小さなグループが短期留学にきていたことがありました。
中学生くらいの子達と引率の先生。
私はその先生のことをよく知っていて、
勉強熱心で、生徒思いで素晴らしい先生だと知っていますし、
そのスタジオでは絶対に!100%!DLS12年をかけて、
体型について口に出さないって宣言出来ます。
それなのに、短期留学に来ていた子達の1人が、
生理が来てほしくない。だって太っちゃうから。
というニュアンスのコメントをしていました。
その後、先生と私は
「スタジオでそういう事を言ったことがないのに、どうしてそう思うんだろう」
と話し合ったのを覚えています。
スマホはあったけど、今みたいにインスタやらtiktokやらで、
コロナで劇場が閉まった時期から一気に増えた、現役ダンサー達が色々アップしている、
専門家じゃない、かなーり危険な食生活とか、アドバイスがなかった時代です。
これだけ気を付けている環境でも、学校や社会で言われるイメージや言葉って
こんなに強く心に残るものなんだな、とビックリしたのを覚えています。
私が「女の子らしい体に」という言葉が、意味なく大嫌いだったのと同じなのかもしれせん。
へーそうなんだ、という話で終わらせないためにも、データを見てみましょう。
Eating Disorder Hopeという団体によると、
「見た目について親から頻繁にコメントされなかった子どものうち、
将来的に極端な体重コントロールを行った割合は約4.2%。
一方で、頻繁にコメントされていた子では、その割合が23.2%にまで跳ね上がった」
そうです。
“About 4.2% of girls who did not regularly hear comments from their parents about their appearance were found to use extreme weight control measures later in life. For girls with parents who regularly made comments, that number was closer to 23.2%.”
— Eating Disorder Hope
このデータは昔のポッドキャストでも使ったことがあるので、
覚えている人もいるかもしれないですね。
でも、復習は大切だからもう一度。
親から体型についてコメントを言われていると、その時は見えなくても、
年齢が上がってから極端な体重コントロール、
ここでは、摂食障害的な行動という意味で使われる
extreme weight control measuresという言葉が使われていました、
を行う率が23.2%まで跳ね上がるということ。
ちょっと話が脱線しちゃうんだけど、
「use of extreme weight control measures」という言葉を日本語訳すると
「極端な体重コントロール」となるのですが、
具体的にはどういう意味か分かりづらい言葉じゃない?
なので、検索してみたんですよ。
そうしたら痩せる方法がいっぱい出てきました…
こういうグーグルのアルゴリズムは、
多くの人が検索する記事が上に出てくるようになっているのよね。
こういう社会だから、体型が変わることを極端に怖がる中学生が出てきちゃうんだろうね。
自分の子供だもの、誰も傷つけようとして発している言葉ではないと思うのですよ。
思ったことが、何もフィルターなく口から出てくるような単純人間な可能性もありますし、
バレエをやってるから、応援したい気持ちで心を鬼にして言っているのかもしれません。
自分も言われてきたことだから、何も考えずに言葉が出ることもあります。
でも、親の何気ない一言が、
- 自分の体を嫌いになる原因
- 自分はダメなんだと思うキッカケ
- 不健康な、もしくは病気に繋がる行動のトリガー
になったら悲しいじゃないですか。
細くないとバレエは出来ないんじゃない?
ここらへんで、聞こえてきますよ、皆さんの心の声。
「愛さん、そうは言ってもバレエやってるんだったら、細くなきゃだめじゃないですか。
体型について注意しないと、いくら踊れても意味がないんじゃないですか?」
と思う方々もいると思うのね。
長くなっちゃったので、バレエとの繋がりは、来週のエピソードに持ち越そうと思いますが、
その前に宿題を出してもいい?
今日のエピソードで、
私は人間の体として正常で、健康な成長期、思春期についてお話しました。
データと共に、体型について口にすることが、
子供達の人生のリスクを大幅にアップするということもお話しました。
それなのに「バレエは特別」だと思っていたら。
それがダメ!って言っているわけじゃないよ、ただ考えてみてほしい。
- どうしてバレエは特別なんだろう?
- あなたの、親としての立ち位置はどこなんだろう?
もし、このポッドキャストを聞いてくださっている先生がいたら
- あなたの指導者としての立ち位置はどこなんだろう?
- あなたのスタジオ方針は何なんだろう?
をもう一度、考えてみてください。
誰にも伝える必要はありません。
でも、自分の中で落ち着いて考えてみてください。
もしかしたら、ジャーナリング、日記に書き出してみるのも良いかもしれません。
文字にして、客観的に読むことが出来るから。
来週のポッドキャストまでの間、今の宿題をやってみてくださいね。
エピソードを終わりにする前にお知らせです。
保護者が知っておきたい成長期の体、オンデマンドセミナーが出来ました!
3時間越えのセミナーを、見やすい長さと字幕をつけて動画シリーズにしてあります。
ご購入後すぐに、どこからでも1か月アクセス可能です。
詳細は、DLSサイトより「保護者が知っておきたい成長期の体」と検索してくださいね。
このクラスは既に受講したけど、食事についてもっと知っておきたい。
そう思った方に朗報です。
TASTEという「摂食障害からの回復を後押しする対話と学び合いの場」団体が
来る6月15日朝10時よりダンサーと摂食障害、というオンラインセミナーを行うそうです。
1ヵ月見逃し配信付きなので、日曜日が忙しい人でも大丈夫。
実は私もゲストで参加するので、
ボディコンサークルの直後にオンラインセミナーに参加しませんか?
詳細やお申込みは、DLSではなくTASTEに問い合わせてくださいね。
インスタグラムで「Taste.food.and.life」と検索すると出てきます。
Happy Dancing!
