今、世界が求めているのはどんなバレエダンサー?
海外のバレエ団の芸術監督のインタビューから、
留学やオーディションを考える前に知っておきたいポイントを整理してみました。
Transcript
毎月1日と15日にメルマガをお送りしているDLSの佐藤愛です。
DLSメルマガでは、DLSでやっているイベント系の告知や申込リンクなどはもちろんのこと、
この前お送りした英国ロイヤルバレエ学校の改革についてなどのメルマガ限定記事や、
過去のポッドキャストシリーズや記事、YouTubeリンクなど、
まだDLSを知らなくて見逃しちゃってた内容や、過去の復習などをお送りしています。
なんて説明しなくても、もうすでにご登録は終わっていますよね?
今月のポッドキャストでは、
「海外オーディションから学ぶ、求められるダンサー像 」
という題名の9月のメルマガでご紹介した、
ロイヤル・デンマーク・バレエの芸術監督、Amy Watsonさんのインタビューを、
オーディションの話だけに限らず、
バレエダンサーや先生、保護者が知っておきたい内容を深くみていきたいと思います。
今回のインタビューは今年の8月からスタートした
「Company Secrets Ballet Unfiltered」
というポッドキャストにアップされていたもので、
40分ほどの話し言葉英語のインタビューを
私が翻訳し、解釈し、抜粋して皆さんにお届けしています。
海外のバレエ団に興味があったら、英語の練習の為にも
ポッドキャストを聞いてみると勉強になると思いますよ。
さて、シリーズ1回目の今日は、皆さんが興味がある海外のオーディションについて。
このポッドキャストを聞いてくださってる方は、
海外のバレエ団のオーディションプロセスについて興味があるでしょう?
保護者の中には、海外のバレエ団に入るにはコンクールで優勝しなきゃいけない
と思っている人もいるかもしれませんよね?
だから、実際に海外のバレエ団のディレクターの生の声を一緒に分析していきましょう。
海外バレエ団=偉い、とは言ってないよ?
ただし、内容に進む前に2つ注意事項をお伝えさせてください。
1つ目は海外という言葉について。
日本以外を海外と言いますよね?当たり前だって?
日本、日本以外と2通りに分けることは間違いではないのですが、
「海外のバレエ団のディレクターが~」と言った場合は、
「日本以外の全ての国が~」という訳ではありませんよね。
もちろん、海外が偉い、正しい、という意味でもありません。
今回の場合は、デンマーク王立バレエ団のディレクターの話ですが、
デンマークとは海外であり、ヨーロッパであり、北欧です。
EU加盟国ではありますが、ユーロ圏ではありません。
海外全てで、ヨーロッパ全体で、EUで、と言っているわけではないことに
注意しながら聞いてくださいね。
デンマーク王立を推してるわけじゃないよ?
2つめはテーマとなるデンマーク王立バレエ団について。
辿れば辿る程、様々なスキャンダルが出ているバレエ団ではありますし、
バレエ学校でもスキャンダルがありました。
歴史ある学校だから、黒歴史も長いと言うことも出来るでしょうし、
バレエ界全体の問題である摂食障害や鬱、先生からの圧力等を
話す勇気があった人達が多かったとか、
もみ消されず、ニュースに取り上げられた国だったという見方も出来るかもしれません。
デンマーク王立バレエ学校だけでなく、
様々なバレエ学校でスキャンダルがありますが、
今回のポッドキャストと同様に、
英語、もしくはその国の言葉だけで書かれている事が多く、
日本のダンサーや先生たちが見つけるのは難しいことがありますし、
バレエ雑誌なども取り上げないでしょうね。
日本の学校も同じような事が言えるかもしれません。
ほら、体罰は学校教育法で明確に禁止されているのにも関わらず、
令和2年でもまだ600件以上あるということですが、
- 生徒側が言っても、聞いてもらえない
- 生徒側が言い出せない
- 訴えても「仕方ない」で済まされてしまう
などの問題があるだけでなく、毎回ニュース沙汰になることはない、
という感じと言うのでしょうか。
子どもへのしつけのための体罰を何らかの場面で容認する回答者は
41.3%だということですから、
体罰は普通だと理解してしまっている子供達が多くいる可能性があります。
そのため学校の体罰の数字はもっと高いでしょうね。
それと同じように、ダンサーの世界でも
- 細いのは当たり前
- 体型についてバレエの先生に言われるのは普通
という世界で育ったら、
そのような問題について言い出せないダンサー達は世界各国にいると思います。
我慢が美徳と言われる日本は特に。
痛くても我慢するストレッチが普通になってしまう流れも同じなのかもしれません。
あくまでも、現在のディレクターのインタビューについてを研究しているのであって、
- この学校が偉い
- DLSが推している
- ここに留学すべきだ!
と言っているのではないと理解してくださいね。
あー長い前置きだった!
ではオーディションの話に進みましょう。
オーディション書類について
デンマーク王立バレエ団では、特設ウエブサイトから、
年がら年中、オーディション用の書類を送れるそうです。
オーディション用の書類とはCVとビデオ。
CVとは履歴書と訳すのが一番適切な言葉なんですが、
日本のコンビニにあるような、空欄を埋めるような形の履歴書は
日本でしか使わないので注意してくださいね。
私が留学していた時は、クラスの一部として
カバーレターとCVを書いて提出するという授業がありました。
ただ20年前の話なので、
お手紙とDVDを直接バレエ団に送るという勉強だったのですが、
今はデンマーク王立バレエ団のようにオンラインで行われることが殆どですよね。
とはいえ、カバーレターは第一印象になるので、必要だと思いますけど。
デンマーク王立バレエ団も多くのバレエ団と同じく、
IAP(インターナショナル オーディション プリセレクション)ガイドラインに
沿ったオーディションビデオを使っているそうです。
IAPガイドラインは2017年に作られたそうなので、
知らないバレエの先生たちも多いかもしれませんが、
海外のバレエ団を夢見ている人はもちろん、
オーディション準備の指導をする先生や、保護者達も
このガイドラインをしっかりと読んでおくと便利だと思いますよ。
今日はカバーしなければいけない内容が多いので割愛しますが、
このガイドラインも英語で書いてあるもんだから、
知りたい人はメールhello@dancerslifesupport.comで教えてくださいね。
ガイドライン自体は短いから、メルマガで取り上げられると思いますし、
そうしたら、皆さんが印刷してレッスンで使えるじゃない?
コンクールクラスでバリエーション練習も良いと思うけど、
多くのバレエ団が使っているオーディションビデオを作る
練習をするのは凄く役に立つと思うんだけどね。
コールバック(オーディション招待)
オーディションに呼ばれること、
第一次審査から次の審査に向かうことをcall backと言います。
書類を送った後、まずは、現在どんなダンサーが必要かを考慮して、
リハーサルディレクターが応募資料を選抜し、
その後芸術監督が最終決断を下すそう。
どんなダンサーが必要か?という部分についてAmyは、
シーズンやカンパニーメンバーのケガや退団等によって違うと話していました。
男性ダンサーを探しているのか、女性ダンサーを探しているのか。
プリンシパル、ソリスト、コール・ド・バレエ、経験のあるダンサー、
などのレベルを例に出していましたので、一概には言えないんでしょうね。
デンマーク王立バレエ団には、付属のバレエ学校があります。
そして、インタビューでも「自分たちの学校生を優先し、最初に見ます」と言っています。
ですが、さっきお話したように特設サイトで通年受け付けているし、
「常にダンサーを探し求めている」とか、
「オーディション資料は法律が許す限り長い間記録を残しておく」とも言っているので
最初にバレエ学校を見て、その後外部からのダンサーを取るみたいです。
しかも、経験のあるダンサーだけでなく、
プリンシパル、ソリスト、コール・ド・バレエなどを
”必要なダンサー”の枠に挙げていたのを考えると、
他のバレエ団、アパレンタスからの移籍も受け付けているようですよね。
コールバックがあったダンサーは 2日間、2回のカンパニークラスを受講します。
その様子は、芸術監督とリハーサルディレクターに見られているんですって。
レッスンで見られているポイントについても、Amyが話しています。
1番に見ているのは音楽性、
どのように音楽と関わるか、フレーズ感を持った踊りが出来るかなど、
基礎的な部分と共に、 勇気、大胆に挑戦、という単語も使って話していました。
2つめに彼女が見ているポイントは、コーディネーション力と、
“the transfer of weight” つまり質の高い重心移動です。
- 柔軟性
- 体型
- トウシューズ歴
- コンクールの結果
などの言葉ではなかった事に気づいてくださいね。
1回ではなく、2日間のカンパニーレッスンを見ているんですよ。
基礎、レッスン内容が見られているという意味じゃないですか?
8月にシリーズでお送りした、5歳児のバレエでもお話しましたが、
音楽性、コーディネーション力などは、幼い頃から練習できること。
- 甲が出たつま先
- 伸びた膝
- 180度開脚したジャンプ
ではなく、彼らの年齢にあった力を育てることが、
結果として将来踊れるダンサーを作るわけですよ。
保護者は、スタジオ選びに十分気を付けてくださいね。
健康なダンサーが欲しい
カンパニークラスを無事に終えたら、
次はフィジオ(理学療法士)のチェックが入るそう。
ケガがないかを確認するだけでなく、
心身共に健康かどうかを確認すると話しています。
このステップは、今年から導入されたと言っているので、
今後のカンパニー方針が見える重要なポイントですね!
最初の方でお話した黒歴史ではないですが、
間違った事をやっていた場合、過去は変えられません。
ですが、過去から学び、現在の状況を変えたら、
未来を変えていくことが出来ます。
バレエの先生だけではなく、プロフェッショナルが、
心身共に健康かどうか?を確認するというところに、
私はちょっとした希望を持っています。
そして、これらの事実を踏まえ、留学を考えている子達は、
「健康であること」がオーディションの一部として見られていることを
深く理解してほしいと思っています。
大人は勿論ですよ。
大人が言う言葉、行う行動を見て、子供達は何が当たり前なのか?を理解します。
私たちが彼らの未来を作っているのですから、
責任感をもって、常に勉強して、固定観念を変えていかなければいけないでしょうね。
オーディションの最後は20分のインタビュー だそうで、
ポッドキャストでAmyはその部分も時間をかけてお話していました。
でも長くなっちゃったので、
面接内容については、来週のポッドキャストでカバーしましょう。
ちょっと重い話からスタートした今日のポッドキャストですが、
井の中の蛙にならず、そして黒白思考にならないように気をつけながら、
皆さんの役に立つ情報をお届けできるような内容になっていたら嬉しいです。
Happy Dancing!
