腰は反っちゃダメなんでしょう?
反り腰はバレエに向かない?
その疑問にお答えするためには、背骨の構造を理解する必要があります。
腰のケガはダンサーでも多く見られるため、ちゃんと勉強しておきましょうね!
Transcript
こんにちは、DLSの佐藤愛です。
そうです、2週間前には腰には前弯があるから、
上向きで寝転がって腰の下に手のひらが入っても普通だよ、と言っていたけれど、
先週は、何度も腰から反ると、脊柱分離症、
つまり背骨の疲労骨折をはじめとした、ケガのリスクが上がるので十分気を付けて、
と言っていた本人です。
今日は、結局、腰って反るの?反らないの?
という疑問にお答えしていきたいと思いますが、
10月の頭に背骨のセクションとカーブについて、
先週は背骨の構造と柔軟性についてお話していますので、
そちらを聞いていない人はお先にどうぞ。
腰椎の前弯
エピソード633でお話したように、
腰椎には前弯、つまり腰は前に出っ張る弯曲があります。
腰椎カーブをはじめ、背骨カーブは重力に反して姿勢維持をしてくれる仕事と、
衝撃吸収をしてくれる仕事がありましたよね。
でも、赤ちゃんの時は腰椎のカーブはまだ出来ていないよ、ともお話しました。
今日はそこにもうちょっと情報を追加するね。
整形外科医であり、解剖学者のカパンジー先生の有名な本、「関節の機能解剖学」によると
1歳ちょっと過ぎくらいに腰椎はようやくまっすぐになるのだとか。
それまでは後弯、つまり背中が丸まった方向になっています。
そして、3歳頃から前弯が見えるようになり、8歳くらいにははっきりした前弯、
10歳くらいに成人と同様の前弯になるそうです。
よちよち歩き始めた子達の腰椎カーブは大きく見えますが、
あれは腰椎ではなくて、骨盤の前傾と股関節の屈曲が作っています。
ちなみに、エピソード633でも比較として出した足のアーチも同じくらい、
7,8歳で目で見えるようになってきます。
年齢に合わせたレッスン提供は必要最低限
ちょっと話はずれるけど、大事な事だから言わせてください。
これらの解剖学的事実を知ったら、どうして幼稚園児や小学校低学年の子達に、
「子供の方が体が柔らかいから」なんて意味の分からない言葉を発しつつ
- 完璧なるターンアウトでレッスン
- 床でのぎゅーぎゅー柔軟
- バレエシューズだから大丈夫、と難しいバリエーションでコンクールに出る
なんてさせてはいけない理由、分かりましたよね?
どうして厳しくて有名なワガノワバレエ学校でも10歳から始まるか分かりますよね?
今年の8月、DLS13周年イベントの1つに
「なんでポワントは12歳からなの?」というセミナーを開催しました。
1時間以上、最新の、専門家が作ったガイドラインを日本語で説明しつつ、
ポワントは「最低でも」12歳から、
だけどポワントで踊れるだけのテクニック、レッスン量、
筋力が必要だという話をしたんですね。
つまり12歳でもポワントの準備ができていない人達がいるってこと。
資料には「ポワントスタートを遅らせるべき」という言葉が何度も使われていましたが、
「早く履いてもいい」という言葉はありませんでした。
そのセミナーの最後、質疑応答で、
「エクササイズや正しいレッスンをしていたら、
小学4,5年生でもポワントスタートして大丈夫ですか?」と聞かれたのです。
1時間の説明が足りなかったのか、私の説明が下手だったのか、今でも悩みますが、
エクササイズやレッスン量で人間の成長を早送りすることは出来ません。
土踏まずも、腰のカーブも同じです。
- まだちゃんと形成されていない土踏まずを、より潰す方向になるひざ下のターンアウト
- 学生のケガ、ダンサーのケガがとても多い腰部分をたくさん曲げる柔軟
- 衝撃吸収用カーブが発達途中の背骨で、成人のプロダンサーの、
しかも選ばれたソリスト以上の人用に作られたバリエーションの練習
これらがどれだけ危険な行動か、大人がしっかりと理解してください。
やるのは子供達だけど、指導するのは、そして止めるのは、大人なのだから。
先生方は、
年齢に合ったレッスンを提供するのは、指導者として必要最低限だと覚えておきましょう。
オプションではありません。
必要最低限です。
結局腰は反るべき?
愛さん、言ってることは分かるけど、今日のテーマは
「結局、腰は反らさない方がいいの?それとも反ったほうがいいの?」だったはず。
もっと混乱してきたんだけど?
そう思っちゃう人達のために、短い答えを先にお渡しします。
「腰は反っていいです。」
理由は
からです。
でも、大事なことは、この続き。
- 年齢に合わせた、正しく、安全に指導された腰部の動きを練習すべきです
- 腰部は動くように出来ている構造なので、一番最初に練習すべきことは「安定」です
- 背骨のカーブには個人差、遺伝、年齢が大きく関係するため、上向きで寝転んだ時に手のひらが1枚以上入ったら「反り腰」というような判断は出来ません
1つ目「年齢に合わせた、正しく、安全に指導された腰部の動きを練習すべきです」は、
今までお話してきたので大丈夫ですよね?
2つ目「腰部は動くように出来ている構造なので、一番最初に練習すべきことは「安定」です」も、
ポッドキャストリスナーさんだったら大丈夫だよね?
大きく、安全に動くためには、強く、安定している必要があるからです。
ダンサー達、特にクラシックバレエを高いレベルで踊っている人達は、
腰椎のカーブを潰す傾向があります。
- 「おしりを使って」「お腹を入れて!」と言われてくるため骨盤をタックにしがち
- 背骨を引き上げるとは、まっ平な背骨だと思っている人達が多い
- 骨盤を後傾した方が、股関節からターンアウトしている気分になる
- 膝を押し込む癖があり、骨盤を後傾し、前に押し出してバランスを取っている人が多い
など、クラシックバレエ独特の間違ったトレーニングや指導が原因であることが多いのですが、
ボディイメージの問題から、おしりが大きいことは、悪だ!
という考えがある人達も多く、特に第二次性徴で骨盤周りの変化が出てきた女の子たちは、
必死でおしりを隠そうとしてきます。
その結果、骨盤を後傾させる子達が多いし、
そうやって習ってきた先生たちは、
腰椎から仙骨までが真っ平なことを、正しいバレエの立ち方だと思っていることが多いです。
このような子達の場合、腰は反るべき。
8月に1か月間行われていたボディコンサークルでも、何度も注意しました。
腰椎のカーブを保つ筋肉の1つ多裂筋は、コアマッスルの1つなんです。
だから、コアマッスル強化のためにも、体幹安定のためにも、
腰椎の生理的弯曲はとても大事になります。
上向きの腰と腸腰筋
巷で良く言われる「反り腰だから腰が痛い」これも事実ではありません。
WHOによると腰痛がある人の90%は非特異的(ひとくいてき)腰痛、
つまり明確な原因が特的出来ないものだとされているんですね。
原因が分からなくても、エクササイズは大きな効果があるそうですが、その話は置いておいて。
もし反り腰が腰痛の原因だったと分かったら、大きな発見なんですよ。
世界的に「莫大な経済的損失」があると言われる腰痛の原因が、
そんなに単純だったらビックリです。
まず、反り腰とは医学的な言葉ではありません。
腰椎過前弯、Hyperlodosisというのが反り腰の言葉なのですが、
これを測るためには、腰椎の前弯角度をレントゲンやMRIではからなければいけません。
見た目のカーブでは分からないんですよ。
特に臀部の筋肉の発達はカーブを大きく”見せて”しまいますが、それは反り腰ではありません。
こちらの研究で分かるように、
成人の腰椎カーブ平均は60度±10度となっていますが、
今まで勉強してきたように、年齢や遺伝など個人差があります。
ただ、正常と言われる範囲を超えた場合はHyper、つまり過度のLodosis、腰椎前弯か、
Hypo、つまり少なすぎる、Lodosis、腰椎後弯と言われます。
反り腰の人はいるか?と聞かれたら、答えはYES。
その人は腰痛があるか?と聞かれたら、現代人によく見られる痛みだからYESな人もいる。
だけど、反り腰「だから」腰痛があるのか?と聞かれたら、答えはNO。
もし、このポッドキャストをお家で聞いていたら、上向きで寝転んでみてください。
上向きで、足を伸ばし、寝転がります。
そして腰の下に手を入れてみてください。
どれくらいのスペースがあるかチェックしてみましょう。
今度は上向きのまま、手は腰の下に入れたままで、膝を立ててみましょう。
腰の下のスペースは変わりましたか?
きっと膝を立てた時に、スペースが小さくなった人が多いと思うのですがいかがですか?
これは、数秒の間に、あなたの”反り腰”がマジカルに良くなったわけではありません。
腸腰筋の1つ、大腰筋が、腰椎のカーブを作る方向に伸ばされるか、たるむかの違いです。
大腰筋は胸椎12番から腰椎1,2,3,4,5番について、骨盤の前を超え、股関節を超え、
大腿骨の小転子というでっぱりについています。
つまり、腰と、太ももの骨を結ぶ筋肉なのね。
そのため、太ももの点が遠くに行く、足を伸ばした姿勢では、腰の点が持ち上がり、
逆に、太ももの点が近くに来れば、腰の点が緩むから、重力と共に、床の方へ下がります。
ここに、骨盤の前傾後傾とか、重心の位置とも影響するんだけど、
今日はシンプルに点と点でお話しました。
何が言いたいかというと、
ちょっとした足の位置で、腰椎のカーブは変わって感じるんだよってこと。
だからそう簡単に、
手のひら入れてどーの、みたいな単純な情報を信じないでくださいねってこと。
背中を使いたいダンサーが覚えておきたいこと
ということで、まとめてみましょう。
腰は反っていいですよ!
生理的弯曲があってもいいし、腰椎の伸展という動きをしてもOKです。
ただし、
- 年齢
- 安定
- 正しいテクニック
は忘れないでください。
反り腰だからOO、のような白黒系の情報は信じないようにしましょう。
それは、反り腰が存在しないと言っているわけではないですが、
シロウトが見た目で判断できるようなものではないですし、
腰痛の有無も判断基準になりません。
正しい腰椎のカーブ、出来てるかな?と不安になった人、
特に長年”昔ながら”のバレエレッスンで骨盤タックが偉いと思ってきた人達は、
ダンサーに特化したエクササイズ、ボディコンエクスプレスをどうぞ。
毎週5つのタイムスロットから選べる、オンライン30分エクササイズクラスです。
腰回りの安定はもちろん、自分の体を理解したり、
長く、痛みなく指導し続けるための体づくりになるはずです。
来週は、背中を使いたいダンサーはちゃんと知っておきたい、
背骨周りの靭帯と、隠れた2つの関節についてをお話していきます。
来週のエピソードを見逃さないために、ポッドキャスト登録、チャンネル登録をお忘れなく。
Happy Dancing!
