プロを目指すか、バレエを辞めて勉強に専念するか。
学生ダンサーの選択肢はこの2つだけではありません。
プロを目指す・目指さないに関係なく、踊る時間は人生の一部。
舞台表現を深めるためにも人生経験は大切。
勉強とレッスンの両立が出来るタイムマネジメント力は、社会人でも必要だよね?
バレエ一本に絞る前に考えたいことをお話しました。
Transcript
子供の頃の習い事で、バレエ以外にピアノと水泳、
英会話教室に通っていたことがある佐藤愛です。
ピアノはとっても嫌いだったのを今でも覚えていますし、
長い間習っていたはずなのに、そんなに弾けません。
一応中学1年生の時は、クラスの合唱コンクールの伴奏をしたんだけど、
写真はあるものの、あまり記憶にないですね。
最後の方はピアノの先生に申し訳ないという気持ちで毎回レッスンを受けていました。
だって宿題やっていないんだもん。
どうしてやらなきゃいけないの?と思いながら、
そして十分口に出しながらピアノを習っていた気がしますが、
今大人になって振り返ってみた時に、
嫌いなことを続ける大切さがあるんだろうなと思います。
プロを目指すなど関係なく、だけどピアノを続けていたら、
大人になった時の趣味になったかもしれないし、
コンサートに行く楽しみが分かったかもしれないし、
共通の話題も出来たかもしれません。
好きなことをやれ!
というのは素晴らしいアドバイスです。
巷の物差しでバレエが上手だから続ける、下手だから辞めるという判断ではなく、
本人が好きだから続ける。本人が嫌いだから辞める。
という本人の責任や、選択肢はとても大切だと思う。
特に、ながいこと日本のバレエ界を見てくると、
- 好きだけど、体が向いていないから辞める
- 好きだけど、コンクールで結果が出ないから辞める
- 好きだけど、親が受験の為にやめさせた
などのケースをたくさん目にします。
このような理由でバレエを辞めるのは、とっても悲しいので、
今日のポッドキャストの本題、バレエばかについてお話する前に、
ささっとカバーしていきましょう。
体が向いていないから、バレエを辞める
「体が向いていない」というのは
- 甲が出ない
- 膝がしならない
- 太腿が太い
などと同義語のようです。
そして、これはとっても危険。
ヌーブラみたいに、足の甲にペタっとはるシールがあるのをご存じですか?
そう、舞台の上で見るダンサーの足の甲には、フェイクもあるんです。
- 髪が短いなら、ウイッグでお団子にする
- まつげの代わりにツケまつげ
- 衣装の中にはバストカップ
などと同じように、商品があって、それを使えばいいだけな場合もあります。
「膝がしならない」という悩みの原因には様々な理由がありますが
膝がしなって見える最大限のポイントは太ももなんです。
太腿が前に出ていれば出ているほど、相対的に膝は後ろに下がって見えます。
よって、膝がしなって見えるのです。
この話は、教師の為のライブラリの「膝の過伸展と膝が伸びない子」というクラスで
多くのプロの写真を見ながら、絵をかきながら実際にお見せしています。
高く上がる脚、ターンアウト出来る股関節は、
股関節の能動的可動域ですから、
バレエレッスンの中で育てていきます。
脚が上がるからバレエをやるのではなく、
レッスンを受けるから、足が上がるようになるわけ。
ターンアウトも一緒。
床で開脚できるから、ターンアウト出来るのではなく、
日々のレッスンでターンアウトの筋肉を鍛えていくから、結果出来るようになる。
ちなみに、開脚は股関節外転で、ターンアウトは股関節外旋ですから、
開脚が出来ても、ターンアウトには直結しません。
オーディションで「あなたの開脚はどれくらい?」なんて見られません。
ポッドキャストリスナーさんだったら、もうすでに知っていると思うけどさ!
何が言いたいかって?
多くの人達がバレエを辞める原因の「体」というのは、
作れるものだということ。
だから、レッスンを辞めたら「バレエ向きの体」は作れないし、
たとえ生まれ持っていなかったとしても、購入できるものもある。
ただし、ケガしてしまったら踊れません。
病気になったら踊れません。
なので、バレエ向きの体とは、踊れる体を指します。
踊れなくなるような、つまりケガのリスクが高いレッスンは、
バレエ不向きな体を作るレッスンとなり、
そんなスタジオに居ても上達はしないでしょうね。
コンクールで結果が出ないから辞める
先週のポッドキャストでも、コンクールの裏話を少ししましたけど、
日本のコンクールで結果が出なくても、毎年1位をとり続けていても、
バレエ学校オーディションには全く影響しません。
バレエ団オーディションにも影響しません。
国際的なコンクールで結果が出たら、
バレエ学校は入学、編入できるかもしれないです。
でも、それは100%ギャランティでバレエ団に入れて、
一生プロダンサーとして食べていけるとは決まっていません。
イメージ的には、高卒より、大学を卒業していた方が
企業の面接に通りやすいかもしれないけど、
たとえ有名な大学を卒業していて、ネームバリューで就職活動が楽だったとしても、
会社に入ったからって、毎年順調にプロモーションが出るわけではないし、
首にならないというギャランティがあるわけではないってこと。
コンクールからバレエ学校入学という進路は、
雑誌をはじめ、取り上げられやすいから目に入りやすいだけだということを、
保護者や先生は、ちゃんと覚えておいてくださいね。
勉強、受験のためにバレエを辞める
昔、バレエ学校で働いていた時に、
マレーシアやインドネシア、フィリピンからの生徒も留学してきたんだけど、
その子達に聞いたところ、それらの国も、
早くにバレエ留学するか、ある年齢でバレエを辞めて勉強に専念するか、なんですって。
なので日本だけでなく、アジア圏はバレエ「か」学業、
という2択を考えやすいのかもしれません。
私は個人的に、バレエと勉強が一緒に出来るという技術を身につけるのは
大人になった時に非常に大切だと思うのね。
履歴書にも書けるというポイントにもなるとは思うけれど、
自分で時間やスケジュールを管理して、優先順位をつけて生活するというのは、
社会人として素晴らしい力だと思うし、
体力、筋力があれば、集中力も続きやすいでしょう。
ほら、疲れていたら、集中出来ないのは、皆知っているじゃない?
その逆で、疲れづらかったら、集中力も切れづらいってことでしょう?
ただ、懸念点として、ある程度の年齢になると
バレエの先生が
- たくさんレッスンして、コンクールに出るのが当たり前
- 夜遅くまでのレッスン、より長引く発表会の練習
とかをしていたら、そりゃ学校生活とバランスをとることが出来ないよね。
先生の贔屓とかも出てくるだろうし。
なので、勉強するからバレエが出来ないのではなく、
スタジオや指導者の問題だとは思いますが、どうなんでしょう。
バレエ「だけ」で良いのか?
ということで、バレエを辞めないでねーというような話をしてきましたが、
今日のポッドキャストの本題はここからなんです。
議題は、好きなこと「だけ」で良いのか?
つまり、バレエがしたかったら、他の習い事を辞めて、学校も行かず、
毎日スタジオにこもることが良いのだろうか?という話。
私にはバレエがあるから!と友達と遊びに行くこともなく、
スポーツ大会なども、ケガするから、へんな筋肉がつくから、などで不参加でいいんだろうか。
なによりも、親が全ての選択を「バレエ」だけで考えていいんだろうか?
バレエの話、バレエのマンガ、バレエの映画、バレエのイベント…
もちろん、それらは素晴らしいと思うんだけど、
それ以外にはどんな家族行事があったり、バレエ以外の趣味や視野を広げるために
どんなサポートをしているんだろうか?
先ほどお話していた
体型、コンクール系の裏は、ケガ、病気、燃え尽き症候群でバレエを辞める
だと思うのですが、
バレエ1本か、辞めて受験・勉強系の裏は、
視野の狭い、アーティストとして重みのない人間が育ってしまうことのではないでしょうか?
ロイヤルバレエスクールの芸術監督として2024年まで10年間活躍されていた
クリストファー・パウニーさんによると
「全ての子供達は、しっかり学業に取り組むべきです。
少年少女時代のほとんどの日々をバレエにささげることで、
勉強する時間がないとすれば、それは大きな問題です。
しっかりと勉強することがバレエを辞めた後のキャリアに役立つ、
という意味だけでなく、
知的できちんと考えられるダンサーこそが、
アーティストとしてもより成功しやすいという側面もあります」
だそうです。
この意見は、2019年にロイヤルバレエスクールのサイトに
アップされた投稿からの抜粋なのですが、
1989年に出された「competing with the Sylph」の第二版でも、
著者のビンセント先生はこういっています
「人生の選択肢を増やし、外の世界に興味を持ち、別のやり方をみつけること。
教育を受ける機会を犠牲にせず、リスクを最小限にしなさい。
ほとんどのダンサーは30代でプロとして踊ることを辞め、
人生の殆どを舞台で踊らないで過ごすのである。
このように、わずかな選ばれた人であっても、
ダンスに執着しないで人生設計を立てるべきである」
と書いています。
ちなみに、日本語版は、1989年にでた第二版を訳した形で出版されているのですが、
初版は1979年に出ている本。
今読んだ部分は、2版で追加されたのか、初版からついているのか分かりませんが、
どちらにせよ、このような警告はパウニー元芸術監督の30年前から、
今から考えると、40年前に近い時代から言われているってことですね。
バレエ大好きな子供をもつ親として出来ること
バレエダンサーの性格の一つとして、
白黒思考、all or nothing、0か100かの考え方の人が多い、
というように言われています。
DLSでもブログやメルマガで何度か取り上げたよね。
こういう性格の持ち主だと、
全てを捨てて、バレエ1本!か、バレエを捨てて普通の生活!
の2つの選択肢しか見えなくなってしまいます。
そういう人達が多い業界なので、バレエの先生たちも白黒思考に偏りがちです。
もちろん、バレエの先生はお家のことや、学校のことに対して、
口に出すべきではないはず。
だからこそ、保護者の皆さんは、
バレエ大好きな子供達の為に、白黒思考に偏らないように気を付けてください。
ダンサーはつま先を伸ばさなければいけません。
でもそれは、甲が出たら自動的にダンサーになれるわけではないということ。
その足で長い間踊れなければいけないし、一生歩けなければいけないということ。
膝の押し込みや、可動域を超越した柔軟が出来たら
プロダンサーのチャンスが増えるとは、まったく立証されていなくて、
逆のデータはたくさん存在していること。
コンクールで引っかからなかったら、プロになれないから
バレエを辞めて勉強すべき!と2択だけで考えないこと。
そして、バレエバカになるな!ってこと。
バレエも大切だけど、世界にはそれ以外の様々な芸術やスポーツがあります。
バレエ団とは、言葉通り、多くの人と一緒に仕事をする会社です。
バレエ作品は、人間や物語を描写しています。
人間関係も、勉強も、たとえ好きじゃないピアノだったとしても
バレエ以外の経験が、彼らの芸術に深みを与えてくれるはずですし、
その道を閉ざさなければ、バレエをサイドキックに、
より豊かな人生を送れるんじゃないか?ということを考えてみてくださいね。
「保護者が知っておきたい成長期の体」オンデマンドセミナーでは、
- 日本のバレエ界で言われていることが、果たして世界で通用するのか?
- 情報、エビデンスはどこにあるのか?
- 親として、子供達の為に知っておきたいことは何か?
を勉強することが出来ます。
いつでも、どこからでも、自分のペースで1か月間ご視聴可能なので
家族と一緒に見たり、お迎えの待ち時間に見たりなどして、使ってくださいね。
詳細をご希望の方は、DLSサイトで「保護者が知っておきたい成長期の体」
と検索してみてくださいね。
見つからなかったら、インスタ@dancerslifesupportにDMください。
Happy Dancing!
