エビデンスベースってどういう意味?
言葉の定義や科学的根拠のあるバレエ指導とは何を指すのかを考えてみました。
ダンサーのケガを減らし、長く踊るヒントが詰まっています。
Transcript
みなさんこんにちは、DLSの佐藤愛です。
2026年初のポッドキャストを記念して
オープニングも変更してみましたがいかがでしょうか?
慣れるまでに時間がかかるかしら?
それとも短くなって、聞きやすくなりましたか?
是非感想をhello@dancerslifesupport.comにメールするか
インスタ@dancerslifesupportにDMして教えてくださいね。
気持ち新たに、そしてイントロも新たに。
今年もダンサーが長く、安全に踊れる世界のために
エビデンスベースの情報をお届けしていきますので
どうぞよろしくお願いいたします。
さて、2026年一発目の本日は
今使った言葉、「エビデンスベース」というのは何か?
をお話したいと思います。
既にエピソードも594。
レギュラーリスナーさんだったら、エビデンスベースは科学的根拠のある
という意味だと分かっている人達が殆どだとは思うのですが
科学的根拠って何?と言われたらよく分からない…となりません?
論文があること?お医者さんが言っていること?英語で書いてあること??
去年、と言っても先月ですが、12月にお送りした
「関節」シリーズのポッドキャストの最初にお話したように
もう知ってるでしょ?というお題に敢えてチャレンジすることで
今更質問出来ないよね…ということがないよう
満遍なくDLSポッドキャストでカバーしていきたいと思います。
日本一のエビデンスベースなダンサーポッドキャストを目指して
本題に入る前に、「今さら」感満載なことをお話してもよろしいでしょうか?
生放送ではないので皆さんの意見は聞かずに、進めていきますけどね。
2014年からスタートしたDLSポッドキャストは、現在11年半。
エピソードも600に近づいてきました。
私はこの11年間、日本語のダンサー向けのポッドキャストが
あるかどうか知らなかったんです。
というか、検索さえしなかったの。
12月に2025年のリフレクションをしながら、今年のゴールを考えていた時に初めて
日本にはダンサー向けのポッドキャストがあるんだろうか?
という疑問が浮かんで、検索しました。
笑っちゃうくらい遅いですよね。
なんで検索に至ったかというと、今後のDLSポッドキャストの方向性と
その他にお届けしているコンテンツとのバランスを考えていたからでした。
簡単な話
- ポッドキャストを続けるかどうか
- 続けるなら今の形のままでいくか、変更するか
を考えていたのね。
データを見てみると、2024年11月から2025年11月の1年間
YouTubeとアプリ両方のポッドキャストダウンロード兼視聴回数は6万5千951。
たとえアプリでダウンロードした後に聞いていなくても
YouTubeでクリックしたけど、途中で離脱した人達がいても
年間6万回越えって大きな数字ですよね。
なので辞めるというオプションはすぐになくなりました。
前にもお話したと思うんだけど
ポッドキャストってSNSのようにいいねがついたり
回数が目で見えないし、リスナーさんからの反応も殆どないので
手ごたえをあまり感じないんですね。
だから、どうしようかなーと思っていたけれど
やっぱり感覚ではなく、データを調べて、判断することが大事なようです。
では次の質問。
「続けるなら今の形のままでいくか、変更するか。」
私は、1か月、1つのテーマに絞ってマニアックに見ていく、今の形が大好きなんです。
コンテンツを作る際、もちろん「皆さんに必要なものを」と考えるのは当たり前だけど
長く続けるためには、「自分が好き」という感情が大事ですよね。
バレエもそうだけど、好きじゃなかったら続かない。特に結果が出ない時は。
じゃあ、2026年のポッドキャストゴールは
「日本一のエビデンスベースなダンサーポッドキャストを目指す」というのはどうか!
と思いついたんです。
ようやく、どうして日本語でダンサー向けのポッドキャストの
リサーチをしようと思ったのかが見えてきましたよね。
複数の国でリスナーが生まれる可能性がある英語のポッドキャストと異なり
日本語のポッドキャストは圧倒的に数が少ないです。
その中でも、ダンサー向け、しかもバレエダンサー向けというのは非常に少ない。
そして、現役ダンサーへのインタビューなどではなく
解剖学やらエビデンスやらをお話している
DLSのようなマニアックなポッドキャストは
簡単に言うとDLS以外にないと気づきました。
90年代に「No.1ではなく、Only.1を目指して」みたいな言葉が
流行ったことがありましたが、Only.1になると、自動的にNo.1なんですよ。
50メートル走を一人でやるような感じだから、どれだけ遅くてもNo.1なんです。
余談。
オンリーワンって良い言葉のように聞こえるかもしれませんが
ただ1人ということは、常に孤独で
一人で決定し、全ての責任を一人で背負うことだから
必ずしも良いとは思えません。
多分、このポッドキャストを聞いてくれている
多くの個人事業主の先生たちは理解してくれると思う。
その話は置いておいて。
「日本一のエビデンスベースなダンサーポッドキャストを目指す」というのは
結局、自分との闘いなんだろうなっと思いました。
それって具体的には毎週
- より良いエピソードをお届けできるように努力すること
- よりマニアックで、より深く、科学的根拠をお話すること
- より現場に寄り添った、時代にあった内容をダンサーに提供すること
という努力をすることなんですよね。
だから、エビデンスってなんなのさ
だからさ、何度も言葉に出しているけれど
「エビデンスベース」って何なの?と
イライラしている人もいるかもしれませんので、本題に戻りましょう。
年始早々、イライラは体に良くありません。
2010年に医学雑誌 “Plastic and Reconstructive Surgery” に掲載された学術論文
タイトルは正に「エビデンスに基づく医療の実践方法」によると
エビデンスベースの定義は
「エビデンスに基づく医療とは
最良の研究エビデンスと臨床専門知識、患者の価値観を統合することである。」
と書いてあります。
DLSアドバンスドインストラクター達は
ここで「あー、またバリュー、価値観が大切になってくるんだ」
と気づいてくださいね。
コース内で何度も勉強しているから、もう大丈夫だよね?
「エビデンスに基づく医療とは
最良の研究エビデンスと臨床専門知識、患者の価値観を統合することである。」
定義として文章にはなっているけど、分かりづらいですよね。
簡単な言葉にしてみましょう。
エビデンスベースという考え方には3つのポイントがあります。
- ベストな研究(エビデンス)
- 先生、専門家がどうやって自分の専門エリアにエビデンスを取り入れるのかという知識
- クライアント、ダンサーの価値観
を総合すること、となるんです。
- 論文だけ
- 先生の経験だけ
- ダンサーがやりたいことだけ
では、エビデンスベースとは言いません。
エビデンスベースのバレエ指導とは
- 最新の、今手に入るベストな研究や、科学的根拠を
- 先生が、自分の生徒、スタジオなどの現場に当てはまる形にする知識をもち、
- 生徒の状況や考えを尊重する形で提供する指導
となるんですね。
エビデンスベースのバレエ指導
「私はこうやってきたから」「私の時代はこう言われてた」的な指導ではなく
科学や医学、そして未成年の指導だったら特に、解剖学、運動学、教育学などをベースに
最良の、つまり今できるベストな指導を提供したかったら
エビデンスベースの指導を考える必要があるということが伝わったかしら?
でも、それは最新の研究を印刷して、一字一句暗記することではないんです。
エビデンス、研究、根拠を基に
だってベースという言葉は「基に」という意味だからね
現場で使える形、生徒に必要な形にしなければいけないんです。
皆さんが分かる例を使おうか。
私たち、DLSファミリーは股関節の可動域には終わりがあるって知っているでしょう?
いくらストレッチしても、人間的に可能な可動域を超えないって知ってるでしょう?
人間的な可動域を超えたら、ケガするって知っているでしょう?
それはエビデンス、根拠だということね。
でも、「股関節の最大可動域を考慮します」と暗記していたとしても
- レッスンは床で4人1組のストレッチから始まり
- 足が上がらないのは、柔軟性が足りないのと、足が太いからよ、と言い
- 骨盤を前に向けたままで、前後開脚が出来なかったら、グランパドシャは出来ないわよ、と言う
指導なら、エビデンスベースとは言いません。
逆に
- 骨盤を動かさずにデヴァンに脚をあげるのは60度までだから、それ以上あげないレッスン
- 骨盤を動かさない角度で、骨盤安定に必要な外旋六筋をギューッと使って、がちがちに固める骨盤
指導でも、エビデンスベースとは言いません。
知識があっても
それをどうやって、どの年齢に、どのように使うか?が
分かっていなかったら意味がないってこと。
そして、その部分が先ほどご紹介した論文の「臨床専門知識」という部分になります。
簡単にいうと、先生の力量だよね。
ダンサーの価値観も大切
エビデンスベースの指導をするためには、先生の努力だけでは足りません。
ダンサー、生徒自身もしっかりと考える必要があります。
もちろん、幼稚園生、小学生の場合は
生徒達の意思よりも、保護者の意思の方が強いかもしれませんので
保護者がしっかりと考えて
お家の教育方針や、バレエへの取り組み方を考える必要があるでしょうね。
だって、Aさんのエビデンスベースは
あなたと同じではないかもしれないんですから。
この話も、分かりやすい例で見ていきましょう。
Again, DLSファミリーなら
「片足カフライズは~」と私が言ったら「25回以上!」と
反射的に叫ぶことができるでしょうから、それを使っていきますね。
オーストラリアバレエ団が提示したことで有名な
片足ルルベ、カフライズが25回以上出来るダンサーは
ケガのリスクが少なかったということから
今や様々な国のプレ・ポワントテストの条件にも入っている片足カフライズ25回。
私が研修させてもらっていた時は25回でしたけど
その数年後、セミナーでチームとあった時には
「最近のダンサーに求められるテクニックを考えると
25回では足りないから30という見方が強い」という話を聞きました。
ですが、日本のプロダンサーではない皆さんだったら
片足カフライズは25回、正しく出来ることが
ポワントシューズを履いて踊るための条件の1つです。
これはエビデンスベースな考え方。
でも、大切だから、ケガのリスクが減るからといって
大人初心者クラスのレッスンに、片足カフライズ25回は入れません。
そんなことしたら、大人生徒さん達、帰りの電車に乗れなくなっちゃいます。
多分、腓腹筋の筋挫傷を起こすでしょう。つまりケガするでしょう。
トレーニングの世界には「オーバーロードの原則」がありますが
それは「漸進性(ざんしんせい)の法則」と共に使われなければいけないからです。
つまり、超負荷をかけるのは大切だけど
負荷は順を追って、徐々に与えられなければいけないということ。
「バレエ初心者はルルベが出来ない」とか
「バレエ初心者がルルベをしたら絶対にケガする」とは言っていません。
ただ、レッスンの中で既に
- プリエやルルベ、タンジュなど、いつもやらない可動域で足首を使い
- 片足バランスなど、姿勢筋であるふくらはぎに負荷がかかる形のホールドがあり
- 大人になるとやらなくなる、ジャンプを繰り返すアレグロ
なによりも
- いつもはやらない1時間45分動き続ける
というレッスンをこなしていることを忘れてはいけないですよね。
その中で、エビデンスがあり
プロダンサーもカンパニーも取り入れているからといって
カフライズを入れるのは
本当の意味でのエビデンスベースとは言えないってわけ。
根拠ある形で上達したいなら
ダンサーは他の人のマネをするだけでは足りないということだよね。
科学的根拠のあるレッスンを!
ここまでお話してきて、気づいたことありますか?
DLSはエビデンスベースだって?
そうなんだよ。
そうなるようリサーチを重ねた上でクラスやコンテンツを作っています。
根拠ないことを、多くの人に伝える人のことを嘘つきと言います。
私は、間違えることはあるかもしれないけど、嘘つきにはなりたくありません。
インスタ映えはしないだろうし、一発有名にもならないだろうけど
エビデンスベースの指導は
- 不必要なケガを防ぐ
- ダンサーが長く踊れるようになる
- 生徒が辞めないスタジオを作れる
と思うのです。
もちろん、指導者として、毎晩自分の出来ることは、全てやったぞ!と
満足するためにも大切だと思います。
ちなみに、結果がでないのなら、エビデンスベースと言えません。
エビデンスベースの1つに研究があり
研究として成り立つためには、同じ結果が何度も出る必要がありますから。
そのため、過去にDLSセミナーに参加してくださった人達ならご存じのように
「皆で同じことをやって、殆どの人が同じ結果が出る」
という実験を様々なところでやっていますし
インスタライブとかでも一緒にやったりするけれど
これは見世物なのではなくて、エビデンスベースなんですよ。
ケガに悩んでいるダンサーはもちろんのこと
結果を出して指導したい人、ちゃんと上手になりたい人は
今年こそ、エビデンスベースでレッスンを行ってみてください。
- SNSで見た、誰かのマネ
- OOさんが言ってたこと
などが、貴方に当てはまる確率は非常に少ないです。
忙しい皆さんだからこそ
正しい方向で努力することで時間も短縮しちゃってくださいね。
Happy Dancing!
