DLSポッドキャスト epi604 柔軟性、ケガとバランス感覚

柔軟性を高めることでバランス感覚が良くなる?

それとも、バランス感覚を鍛えることで柔軟性が高まる?

そんな疑問を解く鍵は固有感覚にありました。

柔軟性や過去のケガがバランス感覚に与える影響を、エビデンスベースで解説。

安全に目標を達成するヒントをまとめました。

Transcript

こんにちは、DLSの佐藤愛です。

今月のDLSポッドキャストは、IADMSの教師用リソースペーパーを参照に、バランス感覚

特に固有感覚、プロポリオセプション(proprioception)について勉強しています。

先週

  1. バランス感覚を作る3つの要素
  2. 固有感覚とは何なのか?
  3. ケガ予防との繋がり
  4. 固有感覚のチェック方法

をお話しましたよね?

3つの固有感覚チェックエクササイズ、やってもらえましたか?

今週は、柔軟性と過去のケガがバランス感覚にどうやって影響するのか?を

紐解いていきたいと思います。

柔軟性はバランスに有利?

まずは柔軟性とバランス感覚から勉強していきましょうか。

考え方の柔軟性、筋肉の柔軟性…

柔軟性とは様々な意味で使われる言葉ですが

ここでは関節の可動域という意味で考えてください。

まずは結論から。

柔軟性が高い人は、固有感覚が低い傾向があると言われています。

(出典元:The effects of joint hypermobility on strength, proprioception, and functional performance

柔軟性について、特にバレエ界のストレッチ神話については

10年以上ずーっとお話してきているので

昔からポッドキャストを聞いてくれている人達はまたか…と

ため息をついているかもしれないですよね。

でも、スタジオで泣きながらストレッチする子達がいなくなるまで

「痛くても生徒達に我慢してもらってストレッチします」と

得意げに投稿するバレエの先生がいなくなるまで

プロダンサーがやっているストレッチみたいな記事や投稿を真似して

ケガするダンサーがいなくなるまで

ずっと言い続けましょう。

関節には可動域があります。

可動域と言うのは、文字通り動きが可能な範囲ということ。

よって、その関節が持っている可動域が何らかの理由で低い場合は

オプティマル(optimal)、最善の状態に戻してあげる必要があります。

毎日パソコンに向かっているので

腕を前+股関節を屈曲した形が癖になってしまっている私の場合

それらの関節を反対方向に動かしてあげるのは大切でしょう。

体育の授業で捻挫し、2週間テーピングしていた足首を

元の状態に戻すためのストレッチは必要不可欠です。

でも、柔軟性のグラフは、右肩上がりではないんですよ。

オプティマルな状態を超えた場合

柔軟性で得られるメリットと

柔らかいため起こる問題のデメリットが入れ替わってしまいます。

固有感覚でも、柔らかいため起こるデメリットがあるんです。

先週勉強したことを思い出しましょう。

固有感覚とはなんでしたっけ?

そう、筋肉・腱・靱帯・関節などからのシグナルを、脳みそが理解して

体が空間のどこにあり、どのように動いているかを把握する感覚でしたね。

具体的には筋肉、筋膜、腱、靱帯、関節にある特殊な神経が組織の伸び縮み

かかっているプレッシャー、動きの速度、方向、痛みなどを感知して

それに対して無意識に対応してくれたり

意識してその感覚を感じることができるんでしたよね?

関節が柔らかい人達は

関節包や靭帯などのConnective Tissue、結合組織(けつごうそしき)が緩んでいるので

そこから得られる固有感覚が低下してしまうのです。

分かりやすい例は、魚釣り。

ピンと張っている釣り竿の糸は、魚がツンツンと小さな動きをしても

竿を握っている私たちにそのシグナルを送ってくれるでしょう?

でも糸が緩んでいたらどうだろう?

糸が緩んでいると、シグナルが上手く竿に伝わってくれません。

もちろん大きな引っ張りがあったら分かるけど、小さなツンツンは伝わってこない。

これが関節が緩い人達、つまり柔軟性が高い人達の固有感覚なんです。

全く感じないわけではないですが、鈍くなってしまう。

ある研究によれば

ハイパーモビディリティのある人達、つまり関節が過剰に動いてしまう人達では

特に膝関節で固有感覚が鈍いため、関節にとって良くない姿勢を選びやすいので

けがのリスクが増加すると書かれています。

何より、関節を安定させるための組織が緩んでしまっているので

関節が不安定になり、関節周りのケガは勿論

関節自体の変形が早まるなども言われているんです。

これらのエビデンスから、生まれつきはもちろん

無理やりなストレッチで関節を人工的に緩くしてしまっても

バランス感覚の一部、固有感覚に良くない影響が起こってしまうのが分かりましたか?

ケガとバランス感覚

次は、過去のケガがどのようにバランス感覚に影響してしまうのかを勉強していきましょう。

IADMSのリソースペーパーによると

足首の捻挫のようなケガは、たとえ軽度であっても

全身に影響し、安定性やバランスを損なってしまうそうです。

DLS教師の為のライブラリでも捻挫のクラスがありますので

既に知っていると思いますが

捻挫のメカニズムや危険性、後遺症となる足首不安定症については

そちらで勉強してくださいね。

くれぐれも

  1. 捻挫したから湿布する
  2. 捻挫してるけどテーピングしたら大丈夫

なんて思わないでくださいよ?

湿布してレッスンに来てはいけません、というルールを

スタジオに作っておくのも大切だと思いますが

その話は昔のポッドキャスト、エピソード165

若かりし頃の佐藤愛から聞いてください。

軽い捻挫だったとしても、靭帯のケガです。

靭帯をケガするほど、関節の可動域を超える範囲に動かしてしまったということですから

関節周りの組織に損傷はあるでしょう。

ということは、先ほど見たように固有感覚に影響しちゃいます。

リソースペーパーによると

固有感覚の低下が見逃されると

アライメントの代償、局所的な筋力低下だけでなく

脳から出る、運動指令までも変わってしまう可能性があると書かれています。

体だけでなく、メンタル面でも固有感覚は大切です。

固有感覚という言葉、プロポリオセプションとは

ラテンで「自分自身」を意味する言葉からきているそう。

空間の中で自分を理解するというのは

世界の中で自分がどこにいるかを知って安心できるんですよね。

そのため、ちゃんとリハビリをせずに踊りに戻ってしまうと

ダンサーは安全に全力で動く自信を失うことがあるんです。

筋肉、腱、靭帯などにある神経がケガしてしまうと

その神経から脳への入力も変わってしまいます。

今まで持っていた、体の使い方が変わってしまうので

ケガの再発の恐れもあります。

エビデンスベースのバレエ指導とバランス

  1. 捻挫みたいな軽いケガだと無視して踊るでしょう?
  2. 近くのお医者さんにいくと「安静にしてくださいね」とか「湿布してくださいね」とか言われるでしょう?

こういう形では、ダンサーにとってリハビリが出来たとは言えないんです。

しかも、「バレエやってるから仕方ないよね」と

アドバイスにならないコメントで終わっちゃうこともあるし

何よりバレエを知っているはずの先生ですら

固有感覚を壊すようなストレッチをさせるわけ。

ストレッチって、筋肉だけを伸ばしているわけではないですからね?

関節を動かしているという事は、関節周りにある組織全て

中を通っている神経や血管、体の外側である皮膚も全て伸ばしていることになります。

今年の頭は、エビデンスベースの指導とは何か?を勉強しました。

そして、エビデンスベースで指導することの大切さをお伝えしてきたつもりです。

今月のテーマ、バランスもそう。

  1. アダージオでバランスをとりたかったら
  2. 軸にのったピルエットを軽々とこなしたかったら
  3. パドドゥを安定してこなしたかったら

バランス感覚は絶対に必要です。

そして、バランス感覚は固有感覚に影響されます。

固有感覚は関節、筋肉、靭帯、腱などの組織に影響されます。

お願いですから、

  1. ケガするようなストレッチを「バレエレッスン」と呼んで
  2. 痛みを無視させる練習を子供のころからさせて
  3. バランスが取れなかったら、貴方の努力不足よ!

なんて言わないでください。

ネットで目につくのは分かります。

有名な人達がやっていたり、イイネの数やフォロワー数が大きいと

事実なんだと思ってしまうところも分かります。

でもね、数字に踊らされていたら、自分の将来が壊れてしまう可能性があるんだよ?

「そんなこと言ったら

どうやってストレッチを指導したらいいのか分からなくなってしまいます」

という先生方、それはとても良い気づきです。

知らないことは指導できません。

だからストレッチ指導を辞めましょう。

その代わり、バレエの指導をしてください。

床で行うストレッチは、世界のどのバレエメソッド、シラバスをみても書かれていません。

でもね、固有感覚を鍛えると、柔軟性がアップするというボーナスもあるんです。

その話は、今月の最後のポッドキャストで

ダンサーに必要なバランス感覚を鍛える方法をお話するときにカバーしますね。

このように、エビデンスベースでダンサーに必要なエクササイズを学びたい人は

1年に1度しか申込が行われないDLS公認スタンスインストラクターコースをどうぞ。

アドバンスドコースでは、今日お話したような

ケガの後の固有感覚リハビリのコンセプトも学びます。

科学的根拠に基づいた知識で、ダンサーのケガを予防したり

サポート出来る人達が増えてくれるのを、私は心から願っています。

来週のポッドキャストでは

バレエを習っていたら、バランス感覚はレッスンの中で鍛えられてるんじゃないの?

という疑問についてお答えしていきますので

金曜日を楽しみにしていてくださいね。

Happy Dancing!

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