筋トレをすると、筋肉が硬くなる?柔軟性が落ちる?
そんなダンス界に蔓延る懸念をエビデンスベースで検証。
生徒が安全に健康に上達するエクササイズプランも解説。
思い込みを手放し、科学的に生徒の体を育てていきましょう。
Transcript
こんにちは、DLSの佐藤愛です。
今月のポッドキャストでは、ダンスフィットネス
つまり、ダンスをこなすにあたって、適しているだけの健康状態とは何か?
という話をしております。
エピソード607では
レッスンだけではダンサーに必要なフィットネスレベルは達成できないのか?
という疑問をいくつかの研究をつかって考えてみました。
先週、エピソード608では
ダンサーに必要なフィットネスの9つの項目を勉強しました。
今日は、筋トレとかフィットネスなんて話をしたら絶対に聞く
ダンサー特有の懸念を解決していきたいと思います。
筋トレ嫌いのダンサー達
先週のエピソードで「筋力」とか「パワー」とかという単語を使うと
自動的に拒否反応が出てしまうダンサーや先生たちがいるんじゃないかしら?
ダンサーにエクササイズが大切です、って分かっている人でも
”エクササイズ”という言葉が指しているものは
フロアバーとかピラティスみたいにバレエの動きに近いものを
ストレッチと一緒にやっていく感じのイメージが
強いんじゃないかなって思うんです。
今月エビデンスとして使っているIADMSのリソースペーパーにも
この懸念が書かれています。
引用してみますね。
「ダンス界では筋力の向上が
柔軟性や美的外観に悪影響を及ぼすのではないかという懸念がいまだに存在します。
しかし、研究では、補助的な筋力トレーニングによって
芸術性や美的要件を損なうことなく
ダンスの質が向上し、ケガの発生率が低下することが示されています。」
なーんて言われても、不安は残ると思うので、今日は
- 太くなってしまう
- ラインがきれいじゃなくなる(バレリーナらしくない体になる)
というような懸念と
- 筋肉が硬くなる
- 柔軟性が落ちる
という懸念の2つのよく聞くカテゴリを、考えていきたいと思います。
筋トレすると太くなる?
まずはサイズの話から行きましょうか。
このポッドキャストを聞いてくれている皆さんと環境の近い
ダンス歴は6~13年の子達を対象にした研究を見てみましょう。
今までレジスタントトレーニングをやったことがない子達に
9週間トレーニングを受けてもらいました。
その期間、普段のレッスンはそのまま受けています。
ダンスに必要な筋力やバランス、ジャンプ力がアップしたという報告も
パフォーマンスレベルがアップした、つまり、上手になったという報告も
嬉しいことなんですが
今日フォーカスしたい数値は筋肉が太くなるのかという話ですよね?
結果の部分にはこう書いてあります。
「本研究および先行研究の結果から
レジスタンストレーニングによって、顕著な筋肥大を伴うことなく
筋力・パワー・ダンス能力を向上させられることが示されています。」
確かに、筋トレの直後は筋肉が大きくなったように見えます。
でも、それは使った部分の血流が一時的に良くなっているから。
つまり、血管が膨張しているから。
これを使って、写真を撮る前に”パンプ”と呼ばれる
エクササイズをするモデルや芸能人も多いのですが
これは一時的な見た目の話。
プロフェッショナルに筋肥大、つまり筋肉を大きくするのはかなりの努力と知識が必要で
ダンサーが専門のトレーナーについてトレーニングしない限り
ボディビルダーみたいになっちゃうことはありません。
特に女性の場合は、ホルモンの関係でかなり難しいです。
もし、ダンサーが儚いイメージ
細くて白くて…という妖精さん的なイメージを持っている人達がいるなら
それはロマン主義時代の話なので色々とツッコミどころが満載ですよね?
バレエ史を専門としている芳賀(はが)尚子さんの御本によると
この時代の儚い感じを表現するために
ダンサー達は空中に吊るされて空中を飛んでいたなんて書いてあります。
この時代のバレエ絵画で有名なドガの作品や
タリオーニの有名な真珠のネックレスなどの裏話を知っている人達なら
この時代のダンサー達がどのような目で男性から見られていたのかを知っていると思いますが
今日の話ではないのでここまで。
軽く踊る、儚く見えるというのはテクニックの問題なので
重力に反してジャンプしたり、ソフトな着地をするには
筋力が必要だということは忘れないでおきたいものです。
ワイヤーで吊るされていなかったら。
リソースペーパーに紹介されている研究では
コンテンポラリーダンス学生が、通常のテクニックレッスンに加えて
週1回のダンス・フィットネスクラスを1年間受講した結果
疲労の軽減、全体的なエネルギーレベルの向上、テクニックや跳躍力の向上といった変化を
ダンサー自身も実感できたと書いてあります。
また、ウォームアップとクールダウンの重要性を分かってくれたようで
フィットネスとケガ予防への理解が深まったとあります。
もし、”バレリーナらしい体”というのが、絶妙なテクニックがこなせて
ジャンプ力もあり、ケガをしづらいダンサーという意味だったら
エクササイズが必要だという事が分かるのですが
トレーニングが敵視されている状況というか、懸念されてしまうバックグラウンドには
ダンサーの健康より、テクニックより
見た目重視という問題があるんじゃないかと思われます。
DLSをフォローしてくれている人達は
そんな上辺だけの人はいないと思いますけどね。
でもほら、DLSのスローガン
「生徒の安全と将来の健康を第一に考えるレッスンが”当たり前”に」が
出来ていないのが現状なので、何度でも繰り返して伝えていきましょう。
筋トレすると筋肉が硬くなる?
お次の問題は筋トレすると硬くなる。
「カッチカチやで!」みたいな印象が強いというんでしょうかね。
柔と剛は対立しているというイメージもあるのかもしれません。
柔軟な体をとるか、強い体をとるか、みたいな二択って言うんでしょうか?
DLSポッドキャストを長年聞いてくださっている皆さまならご存じのように
そして、ライブラリで勉強している先生たちなら勉強したように
健康な筋肉は収縮だけでなく、伸張します。
つまり、伸び縮みします。
伸び縮みするので、力が出せるのだから、かたまっていたら使えません。
筋肉は何本もの筋繊維の集まりなので
もちろん、短縮性収縮、つまり、短く収縮させると硬く、大きく見えます。
ポパイの力こぶみたいな感じって言えば通じる?
でもそれが、デフォルトになっちゃうわけではありません。
- アラベスクいっぱい練習していたら、足が下がらなくなった
- プリエの特訓したら、膝が伸びなくなった
みたいなこと、起こらないでしょう?
アラベスクとは動きですから、筋肉が収縮して関節を動かします。
プリエも同じ。
その形で止まっちゃうわけじゃないんだから
どうして筋肉鍛えたら、かたまっちゃうと思うんだろうね?
アラベスクが高くあがること、プリエが深く使えることを
ダンサー達は体が柔らかいと言います。
Again、どうして同じコンセプトを筋肉でも考えられないんだろうね?
確かに、筋肉痛の日は筋肉が硬く感じると思いますし
いつもみたいにストレッチしようとするとイテテ!となるのもよく分かります。
でもそれは、一時的なもの。
筋肉痛が直ったら、筋肉痛の影響も一緒になくなります。
2,3日で良くならなかったら、それは筋肉痛ではなくケガかもしれませんので
放っておかないでくださいよ。
特異性の原則とダンサートレーニング
もちろん、筋肉を大きくすることが目的のトレーニングの場合
結果として筋肉が大きくなるでしょう。
つま先を伸ばすことが目的のトレーニングの場合、結果としてつま先が伸びるでしょうし
ターンアウトが目的の場合、ターンアウトが出来るようになるように。
トレーニングの原理・原則の1つに、特異性の原則というのがあるのですが
良いトレーニング、エクササイズというのはゴールに合ったものでなければいけません。
ただプロダンサーがやってるからって形だけ真似していても意味がないってこと。
エクササイズプラン作りは
DLS公認スタンスインストラクターコースでも毎回アセスメントで出るのですが
理論的に、しっかりとプランされたエクササイズをこなして
はじめて効果が出るものなんですよ。
エクササイズの回数やプロップ、つまり使うもの
エクササイズを行う方向などは、考え抜かれていないといけないわけ。
ダンサーの場合は
柔軟性は必要で、ももの裏を伸ばすとか、背中を使うだとか
体の背面にフォーカスした注意がよく行われます。
もちろん、ターンアウトしなけばいけないとか
片足で立たなければいけないなどもあるよね。
さっきご紹介した、学生を対象とした研究論文によると
バレエダンサーの着地は50%の頻度で片足
モダンダンスの場合は89%の頻度で片足で行われるそうですから
骨盤と軸足の安定は絶対条件になるはず。
そのため、エクササイズプランにも
そのようなエレメントが反映されているはずなんですね。
フィットネス向上させたいからって
バレエダンサーのことを良く知らないトレーナーについていても
あまり効果がないっていうのも忘れないでください。
そうすれば、筋肉カッチカチやで!というような
トレーニング内容には絶対にならないはずです。
今月の頭からポッドキャストを聞いてくださっていたら
現代のダンサーに求められるレベルや、より進んだダンス医学の研究より
バレエダンサーはレッスンだけでなくフィットネスを高めるトレーニングが必要だと分かった。
そして、そのフィットネスとは
プランク3分とか腹筋50回、エシャッペ1000回なんてよく分からないものではなくて
フィットネスの9つの項目を考慮すべきだというのが分かった。
これが分かればレッスンやトレーニングの盲点が見えるから
より効率よく、理論的に上達できるはずだと気づいた。
でも、どうしても筋トレとなると心配事がある…という人達も
今日のエピソードで大分問題が解決したのではないでしょうか?
最終回の来週は、ダンサーに必要なフィットネスを手に入れるにはということを
お話していきますが、終わりにする前に告知。
このように研究、エビデンスをベースに
ダンサーに特化したエクササイズを指導したい人
科学的根拠のある指導法を身につけたい人は
DLS公認スタンスインストラクターコースの詳細資料の請求をお忘れなく。
あと数週間で、1年に1度だけのお申込みが始まります。
約10ヵ月のコースでは、バレエ解剖学やエクササイズ理論からスタートし
今日お話したようなダンサーに特化したエクササイズプランの立て方を学んでいきます。
ダンサー特有のケガや問題を理解して
一人ひとりに寄り添った指導が出来るようになることが
このコースのゴールです。
- スタジオでダンサーをサポートするエクササイズクラスをやりたい先生
- ウォームアップやクールダウンなど、レッスンにエクササイズのエレメントを追加したい先生
- よりダンサーに特化したエクササイズを学びたい治療家やトレーナーの皆さん
はこのチャンスをお見逃しなく。
詳細をご希望の方は、hello@dancerslifesupport.comにメールして教えてくださいませ。
一緒に、生徒の安全と将来の健康を第一に考えるレッスンを提供してきましょう!
Happy Dancing!
