来日中に感じた「お山の大将」という違和感、バレエレッスンの中にもありませんか?
大将との違いを整理しながら
「お山の大将」にならないために何ができるのかを一緒に考えてみませんか?
Transcript
皆さんこんにちは、DLSの佐藤愛です。
このポッドキャストが皆さんの元へ届くのは5月1日、ゴールデンウィーク中となりますが
無料ワークショップや、インストラクターコース申込準備のため
私は4月、日本から帰ってきて数日後にドラフトを作っています。
2012年以降初めて、今回の来日ではセミナーをしませんでした。
というのはちょっと語弊があるかな。
小鬼合宿をインストラクターメンバーへの2日間セミナーと考えれば
セミナーはあるという数え方になるんですが
公に発表したり、申込するようなセミナーはゼロでした。
いつもの来日と異なり、少しはゆっくりできるかなーと思ったのですが
ふたを開けてみたらそーでもなくて。
でも、やはり現場の声を聴くと、そして、日本のバレエ界を目にすると
考えることや、思うことがあるんですよね。
レギュラーリスナーさんならご存じのように
今年のポッドキャストはよりエビデンスベースで
様々なリサーチを皆さんに日本語で出来る限り分かりやすくお伝えする事を
ゴールに掲げています。
でも、今月だけは、日本で私の感じたことというケーススタディをお届けさせてください。
エビデンスピラミッドでは弱いやつだけど
ケーススタディがあるからこそ、その後の研究に続くので、という言い訳をしておきますが
おしゃべりポッドキャスト系が好きな人は、この1か月を楽しんでいってくださいね!
小さな違和感
さて、2026年来日で感じたことシリーズのトップバッターとなる今日は
「お山の大将」ということについてお話ししていきたいと思います。
このポッドキャストを作るにあたって、再度意味を調べてみたのですが
『お山の大将』という慣用句は
昔の子供達の遊びにある「お山の大将おれひとり」という
掛け声に由来すると言われているんですってね。
慣用句の意味は、調べる方法によってちょっとニュアンスが違うようですが
私が今回考えている意図に近いのは
「大した功績もないのに威張り散らかしている」方ではなく
「仲間内や狭い範囲の中で一番になり、得意になっている人のこと」の方です。
英語ではa big fish in a little pond、小さな池の大きな魚
つまり、井の中の蛙的な言葉になる方です。
来日中、いつ、どうしてこれを感じたのか?
一つのイベントや一人をイメージして思ったというより
いくつかのシーンを見てきて腑に落ちた感じがあります。
今回、来日期間中に日本ダンス医科学学会があったので、参加してきました。
そこで違和感を感じたのがスタート。
その後に、日本バレエ協会の舞台を観に行って感じたのが次。
その後、インストラクターコースや小鬼合宿で意識したのが最後でした。
さっきもお話ししたように、別に一つ大々的な問題があったりしたわけではないんです。
どちらかというと、小さな違和感の積み重ねという感じ。
そして、帰国する飛行機の中で「お山の大将」という言葉が浮かんだんです。
学会も、舞台も、発表する人、もしくは踊る人がいます。
そして聞く人、見る人がいます。
そのためどうしても、パワーバランスが生まれるんですよね。
お金を払う方ともらう方、指導する人とされる人、インスパイアする人と、される人…
このように、学校だろうが、会社だろうが、舞台だろうが、推しのアイドルだろうが
起こるパワーバランスなので、それ自体が悪いわけではないですよ。
ただ、存在しているという事実はある。
そして、そのパワーバランスは、私にもあります。
インストラクターコースで指導する側と、生徒側。
だから、これら3つのイベントで違和感を感じたのかもしれません。
大将に、実力がないわけじゃない
さっき、言葉の定義で、私が今回考えている意図に近いのは
「大した功績もないのに威張り散らかしている」方ではなく
「仲間内や狭い範囲の中で一番になり、得意になっている人のこと」の方だと
お話ししましたよね?
パワーバランスが起こる、力関係があるというと
「それをなくして皆平等へ!」とすることが正しいように聞こえてしまうかもしれませんが
多くの人を引っ張るならリーダーが必要だし
バレエなんてものは主役から群舞までいて、初めて成り立つじゃないですか?
だから、「仲間内や狭い範囲の中で一番になる」という状態が生まれるんですよね。
そして、それは本人の実力でもあります。
例えば、学会で指揮を執っている方は
それはもう、日本のバレエ医学を引っ張ってきたような人ですし
発表している人達も、そのエリアの専門家なわけじゃないですか。
だって、そのテーマに対して研究してきたんだから。
日本バレエ協会の舞台も
主役はたぶんオーディションではなく、オファーが来た人達なんじゃないかと思います。
だからね、慣用句の意味から考えると語弊があるのは承知の上で
”お山の大将”になるべき人は存在すると思うんですよ。
そして、それは素晴らしいことだと思う。
高みを目指してきた人達にとって、今までの努力が認められた証だろうから。
日本語俗語辞書によると
”大将”とは本来、軍の指揮・統率をする人、とか、最上位の人を指す言葉だそうです。
そこから派生して、今は店主や社長など
何かしらの集団の長(おさ)や頭(かしら)のことも大将と呼ぶようになったとか。
だから、大将に実力はあって当たり前だし
上に立つ人を指す言葉だから、パワーバランスがあって当たり前なんでしょうね。
下の人への対応が、大将とお山の大将を変える
最初の方でお話ししたように、wikipediaによると
「お山の大将」という言葉は子供の遊びの掛け声からきていると言われているそうです。
結構怖い遊びで、数人で低い丘など、少し高い場所に競って登り
一番に頂上に登った人が「お山の大将おれ一人」と叫びながら
後から来るものを突き落とそうとするんだって。
ね、怖くない?
ただ、単に立場的な意味での”大将”という言葉と
今日お話している「お山の大将」という言葉の大きな違いはここにあると思うんだ。
後から来る人、自分より下の人に、どう対応するか。
学会で、若手の研究者の方だと思われる人が発表する時がありました。
彼は、発表の最後で「もっと勉強していきたいから、ご指導、ご指摘ください」的な
言葉を使って発表を終わらせたんです。
その後に、質問がある人が聞けるチャンスがあるんだけど
そこである先生が質問をしたんですね。
質問からスタートしたんだけど、結構否定的な言葉が多くて。
しかも、途中で敬語ではなく、上司が部下に話すような言葉に変わっていました。
確かに、その人の意見には一理ある部分もあったし
発表した人もそのような意見が欲しいと自分から伝えたことは事実なんだけど
その言い方で、みんなの前で、マイクを通じて話す内容だったんだろうか?と
私は違和感を感じました。
その後にもう1人の人が質問していて、その人は良い雰囲気だったので
丸く収まった感じがあったんですけど。
1人目の質問者は、元々自分の意見をハッキリ伝える人だったんじゃないか?
それは十分に考えられます。
私はその人と話したこともなければ、彼の経歴などまったく分からないので。
もしかしたら、発表者と質問者は知り合いだった可能性
メンターとメンティーだった可能性もあるかもしれません。
元教え子だった可能性もあります。
私が違和感を感じただけで、本人たちはそんなことはなかったのかもしれないです。
ただ、よく分かっていない私が、客観的に当日に見えた事は
彼はほとんどすべての発表者に質問をしていて
今回のケース以外は態度や言葉遣いは丁寧だったこと。
学会の役員という表現が正しいか分からないけれど
昔から関わっている人だったということ。
だから、パワーバランスがある中で
若手で、医学研究ではなく社会的研究の発表者に対しての態度が
他の人達とは異なったように見えました。
私は日本の他の学会に行ったことがないし
この学会も今回が2回目なので素人ですが
大きな大学が後ろについていて、OO先生と呼ばれる人達が集まる場所では
”大将”も見えるし「お山の大将」も見えます。
そして、そのラインはとーっても薄いと感じます。
知識があり、そのエリアの専門家で、一線で活躍している”大将”は
なんらかの瞬間に「お山の大将」になることがある。
もしかしたらそこに、悪意はないのかもしれません。
- 昔からこうだったから
- 自分も先輩にそうされてきたから
- 時代が違うから
など、彼らの中では、それが「普通」な可能性もあります。
今回の様に、本人はそういうつもりは無いけれど
外から見たら感じるちっちゃな違和感なだけかもしれません。
ただ、私が感じた違和感と同じように、これを聞いた大学生や若い研究者の中では
こうやって発表するの嫌だな、と思わせてしまった可能性はあると思います。
古い習慣や大先生という「お山の大将」
これ、バレエでも言えますよね?
- 有名なバレエスクール出身だから対応がよい
- 名前の知られた大先生だから文句は言えない
- 昔からこうしてきたから、今さら変えられない
などが存在するじゃないですか?
そして、最初は”大将”だった人達が
時間と共に、時代と共に「お山の大将」になっていく様子は
もしかしたら皆さんのスタジオでも見るかもしれません。
ほら、子供の遊びでお話ししたように、最初は皆同じ場所からスタートするんですよ。
そしてね、大将になった子も、一生懸命走ったんです。
努力して、力を出し切って、トップに登ったんです。
でも、そのあとについた子達を蹴り落としていく…
なんでそうするか?
もちろん、自分の立場を守るためですよ。
他の人達が追い付いてきたから、より高みを目指すのではなくて
他の人達に追い抜かれないように、蹴り落とす。
これが、今回の「お山の大将」という違和感なんだと思っています。
舞台を観に行った時、私はよく人間観察をしています。
スタジオの友達と一緒に来ているグループ、お母さんとお子さんペア
子供が出ているからついてきているだろうお父さんなど。
その中でも、お山の大将っぽい行動を目にすることがあります。
聞こえてくる話の中でも、お山の大将的な話もありますし
お山の大将を敬う手下みたいな言葉も聞こえたりします。
こういうのを体験して、思わず親友のフミさんにメッセージしちゃいました。
「私がこうなる前に、ちゃんと止めてね」と。
私の求める”大将”像
お寿司屋さんに行くと、「大将!」という声をかける人がいたりしますよね。
大将という言葉の中には、親しみを込めて呼んだり
からかって呼ぶ際にも使われる言葉だと書いてあります。
どうせ大将になるなら、こっちの大将がいいよね、と思いました。
先日終わったばかりのインストラクターコース5期生は
今までで一番小さなグループで、全員がバレエの先生というバックグラウンドでした。
今まで4回やってきたコースでは、バレエの先生が一番多いとはいえ
コンテや他のジャンルのダンスの先生とか
治療家、ボディワーカーさんなどが混ざっていたんだけど
今回は100%バレエの先生。
つまり、この人達はそれぞれ自分のスタジオに帰った時に”大将”になる人達ってことだよね。
でもね、私の勝手な想像ですけど、この人達は当分「お山の大将」にはならないと思います。
なぜかって?
それはこの10ヵ月、小さな池となる自分のスタジオから出て、多くの人達と出会って
しかも、出来ない自分とも向き合ってきたからです。
小さな池の大きな魚になるためには、小さな池に居座らなければいけません。
もしくは、少し高い丘の上にいなければいけません。
大きな湖、広い海に出てしまっては、大きな魚でいられないんです。
富士山に登るんだったら、周りの人達を蹴り落とすことは出来ません。広すぎるので。
しかも、自分もガイドがいるので、周りにいる人達を蹴り落としていたら命にかかわります。
つまり、せっかくの長年の努力で手に入れた地位がお山の大将にならないためには
自分自身が常に成長し続けなければいけないのではないか?
定期的に自分の行動を振り返り、気づかないうちに、後輩たちや生徒達
周りにいる人達の成長を妨げるような言動をしていないかチェックすべきなんじゃないか?
そういう事が出来ていて、周りから愛情とちょっとした冗談と共に
「大将」と呼ばれるような人になりたい。
これが、今回の来日で感じたことの一つです。
より高みを目指して!
ポッドキャストでもお話ししたことがあるかな?
元々、「鬼の愛」という愛称は私が作ったんじゃないんです。
エクササイズのセミナーで「愛さん鬼だ!」的なところから
「鬼の愛」という言葉を参加者が作ってくれました。
DLS公認スタンスインストラクターコースのコース生やメンバーたちを「小鬼」と呼ぶのも
1期生のみんながつけてくれた言葉なんです。
アドバンスドコースの最終試験後に行った
ピーターラビットの世界観が作られている、とーっても可愛いカフェで
私は鬼のツノがついたカチューシャと、「鬼」と書いてある水泳帽
しかも、毛糸の髪の毛付きをプレゼントされました。
周りからの愛情と、ちょっとした冗談と共に「鬼の愛」と呼ばれるのが
皮肉を込めた、文字通りの「鬼の愛」にならないように。
私も、自分の言動を省みること
カンフォートゾーンを抜けて勉強し続けることが大切なんだよなと感じました。
今年もDLS公認スタンスインストラクターコースのドアが開かれます。
まだ未定ではありますが、来年は20年以上暮らしたメルボルンから引っ越すとか
治療の薬が変わるなどで、コースが行われるか決まっていませんので
「お山の大将」予備軍から小鬼になりたい人達は、このチャンスをお見逃しなく。
資料請求はhello@dancerslifesupport.comへメールか、インスタのDMで教えてください。
申込は5月12日からスタートしますが、24日で締切りとなってしまいますのでご注意くださいね。
そうそう、来日の様子はYouTubeのDLSチャンネルで動画でもお送りしています。
コースの様子はもちろん、東京生活を覗いてみたい人は、チャンネル登録をお忘れなく。
では、今週のポッドキャストはここまで。
来週は「失敗」について感じたことをお話ししていきたいと思いますので、お楽しみに。
Happy Dancing!
