DLSポッドキャスト epi593 柔軟性と関節の形 関節の種類その3

ダンサーやバレエの先生はもちろん、体を動かす人達が知っておきたい関節。

このポッドキャストでは、人間の体にある関節の殆どを占めている

「滑膜性関節」の作りや、種類をお話しました。

Transcript

本日は今年最後のポッドキャストとなるのですが

実は11月にレコーディングしている佐藤愛です。

ご存じのように、今年40歳になり、人生中間地点スペシャルイヤーのはずが

違う意味でスペシャルイヤーになっているじゃないですか。

ご存じではない方のために簡単な「前回までのあらすじ」。

6月に誕生日を迎え、7月末にガンが見つかり、8月にDLS12周年があって

その後から今まで、様々なテストやスキャン、手術に再手術

その後に放射線治療が決定など

毎週病院にいるんじゃないかという生活をしてきているのですが

実は7月末には指の手術もしていたし

ガンの検査中に腎臓にも気になるところがあるから検査が必要なんて言われたりと

ミッドライフクライシスみたいな感じで生活しております。

いつ病院に呼び出されるか、どれだけ治療で動けないかなどが分からないため

9月よりボディコンサークルをお休みしていますが

同じように、ポッドキャストなどのコンテンツも前倒しで

できるときに、できるだけやっておこう!という気持ちで作っているんですね。

だから、12月エピソードを11月に作っているっていうわけ。

いつもなら、12月エピソード、特に年末のエピソードは

その年を振り返ったり、来年の抱負を語ったりしているのですが

今年はそうはいかないみたい。

だから12月のポッドキャストでは関節の種類シリーズをお送りしてきました。

最終回の今日は、関節という構造の中にある3つの種類の最後

滑膜性(かつまくせい)関節を見ていきたいと思います。

関節の種類の復習

本題に入る前にささっと復習しておきましょうか。

関節は骨と骨がぶつかるところ。そして動きが生まれるところ。

ですが、すべての関節が自由自在に動けるわけではなく

3つある関節の種類のうち、今日お話しする予定の滑膜性関節以外は

大幅に動きの制限が存在します。

  1. 頭蓋骨のような線維性関節
  2. 骨盤の、恥骨結合のような軟骨性関節

はほぼ動かないか、動きは数ミリです。

そのため、過去2回のエピソードでは

頭蓋骨矯正骨盤矯正とは、解剖学的には何なんだ?ということを考えてみました。

でもこの知識は、踊りには関係ありません。

頭蓋骨の柔軟性とか、恥骨を開いて、みたいな注意は、ダンサーはされないからです。

あ…骨盤開いて、という先生がいますね。

でも先週のエピソードを聞いたら、それが可能かどうかわかるでしょう。

滑膜性関節とは

ダンサーをはじめ、動きを指導する人、動くことが仕事の人が知っておきたいのは、滑膜性関節。

体のほとんどの関節はこの種類になるので、一番数が多いんですね。

そのため、解剖学参考書などで関節、Jointと言われる場合は、滑膜性関節のことを指しています。

少なくとも、私の本ではそうです。

だって、毎回滑膜性関節と言うの、面倒じゃない?

では滑膜性関節とは何なのか。

ほかの2つの関節とは異なり、滑膜性関節には「関節腔(かんせつこう)」という構造があります。

解剖学で「腔」という言葉が使われるときは、体の中にある空洞を指すんですね。

と言っても、骨と骨の間にぽかんとスペースが空いているわけではないんですが…

関節腔という言葉より、関節包(かんせつほう)という言葉の方を知っている人も多いでしょう。

関節の包み、と書いて関節包。

名前通り、関節をくるんでいる袋、風船みたいな感じ?です。

風船の中って空洞になっているじゃない?

それのことを関節腔と言うのね。

だから、「ほかの2つの関節とは異なり、滑膜性関節には関節腔という構造がある」

というセンテンスは、「滑膜性関節には関節包という構造がある」と言い換えることも可能です。

風船がないと、空洞もないのでね。

関節包”風船”の中は、空気ではなく液体が入っています。

この液体のことを、滑液(かつえき)と言います。

面倒なことを言うよ、この滑液は滑膜が分泌してくれるのね。

だから正確には関節包→滑膜→関節腔って感じで、

この滑膜という存在から、滑膜性関節と言う名前がきているわけ。

骨と骨がぶつかるところには軟骨があるので

その軟骨もこの関節包という袋の中に入っているという形になります。

前十字靭帯のような一部の特殊な構造を抜かし

ほとんどの靭帯とか、腱とかは関節包の外側にあります。

面倒ですよね。

このシリーズで何度もお話しているけど

私の考えるバレエ解剖学ではこういう細かい部分は知らなくていいと思うの。

関節は動きの生まれるところだけど

動かすのは筋肉だし、関節を守ってくれるのも筋肉。

という理解があるだけで大丈夫なので心配しないでくださいね。

滑膜性関節の種類

関節にも種類があって、1つの関節の種類の中にも種類があって…

今月勉強してきた関節の面倒な部分マトリョーシカは

滑膜性関節ではもっと面倒になります。

なぜかというと、滑膜性関節は6種類もあるからです。

  1. 肘のような蝶番(ちょうつがい)関節、ヒンジジョイント。
  2. 手や足にある鞍(あん)関節、”クラ”関節と呼ばれることもあるみたいですが、サドルジョイント
  3. 先週、仙腸関節についてお話した際、カラボスしちゃったと説明した平面(へいめん)関節
  4. 首の骨、頸椎の1番2番の不思議な形を作っている車軸(しゃじく)関節、ピボットジョイント
  5. 足のMP関節部分や、頸椎1番と頭蓋骨部分などを作る顆状(かじょう)関節、コンディロイドジョイント
  6. 皆さんが一番良く知っているので、今更説明は不要な球関節、ボールアンドソケットジョイント

名前を覚える必要はあるか?

いやーないだろうね。

関節には様々な形がある、と分かっていたらそれで充分ですよ。

ぶっちゃけ、私もこのポッドキャストの準備をしながら

学生時代を思い出していましたもの。

平面関節をカラボスにしちゃうくらい、覚えていないんですから。

関節の形と柔軟性

名前よりも大切なことがあります。

それは、関節の形と柔軟性は密に関係しているということ。

ご存じのように、球関節はとっても良く動きます。

体の中で一番可動域が広いのが肩関節ですし

ロンデジャンプの動きで分かるように股関節も様々な方向に動きます。

ルルベで曲がる部分、MP関節は顆状関節の一つで、大きく曲がりますよね?

ですが、球関節のように様々な方向には動きません。

膝関節や足首は蝶番関節で、顆状関節ほどではないですが、可動域があります。

一番動かない関節は、先週勉強した平面関節。

平らな面と面が合わさっていて、こすれるようにしか動けません。

蝶番って何か知ってます?

今、お家にいたらどんなドアでもいいので開けてみましょう。

ドアではなくても、キッチンキャビネットでも構いません。

多分上の方と、下の方に、金具がついているのが見えると思います。

この金具を蝶番というのね。

蝶々の羽のようになっていて、閉じる、ひらくという動きをするでしょう?

ピッタリと閉じて、大きく開くとは思うけれど、反対側に曲がりませんよね?

ドアって、360度開くものではないので。

それと同じ構造が、膝や足首なんです。

長らく開けていない、古いドアだったら

久し振りに開けた時、動きがスムーズではないかもしれません。

でも、普通に開け閉めが出来るドアを、「もっと良くしよう」と反対側へ押しますか?

お家の場合は、ドアの反対側に壁があることが殆どだと思うので

壊れるまで開くことはないと思いますが、それでも反対側にある壁が傷つくでしょう。

もし、反対側に壁がなかったとしても、先ほどお話した蝶番の金具が壊れると思いませんか?

今年も、ダンサーの健康を考えて年末を迎えよう

  1. かかとの下にヨガブロックを入れて、膝を押し込める練習
  2. つま先を何かの下に入れて、伸ばす練習

このような動きは、ドアの動きをよくするのではなく、金具を壊す動きです。

ドアだったら、数百円でホームセンターから新しい金具を買って

スクリュードライバーで金具を外して、付け替えることが出来るでしょうけど

人間の体だったら、そんなに簡単には行きません。

しかも、何度も金具が壊れるだけでなく

金具がついている部分の木が割れてしまったり、はがれてしまったら

金具交換ではなく、ドアの修復が必要です。

人間の体の場合、ドアは骨になります。

数か月前の話になりますが、SNSの私の投稿にこんなコメントがありました。

「ぺったり開脚が出来ないプリンシパルもいる──

この表現、明確に否定します。そんなに甘い世界ではありません。

もちろん「絶対」は存在しませんから、世界中を探せば一人くらいはいるかもしれません。

ですが、それでも女性であればほぼ皆無です。

仮にいたとしても、異次元にスタイルが良い、音楽性が突出しているなど

他の“超人的な要素”があるからこそ成立しています。」

この方のアカウントは顔出しも、名前だしも、そして職業も書いていなかったので

どういう立場からこのような意見があったのか分かりません。

ですが、他の投稿を見てみると

「私が色々なスタジオにゲスト講師に行っていて」という言葉などがあるので

たぶんバレエの先生で、自分のスタジオではなく

日本でゲストとして教えている方なんだと思います。

つまりフリーランスの先生ではないか?と仮定できます。

でも、一度も自分の投稿があるわけではなく

他の人達の投稿を再投稿しているのが数枚あるだけのアカウントですので

よく分かりません。

良く出来たボットの可能性もあります。

2024年末に出た、オープンアクセス、つまり誰でも読める研究によると

  1. SNS上のボットは最低でも全体の19%以上、増加している可能性が高い
  2. AIの精度が上がっているため、専門家でもボットか人間かを判断するのが非常に難しい
  3. SNSを使っている人が、ボットに遭遇しないことはない

などが書いてあります。

しかもボットの特性として

  1. 感情的、否定的な投稿を増やし、人間の感情を悪化させる傾向がある
  2. ボットとやり取りすると、人間の投稿内容をよりネガティブにしてしまう

というのが書いてありました。

さっき見てみたコメントがどういう人で、どういう意図があったのか分かりません。

私は専門家ではないので、ボットかどうかの判断もつきません。

でも、2025年が終わる前に考えたいこと。

それは、今の時代、ボットやAIなどがSNS上で間違った情報を広げているという事実です。

人間だって間違えることはありますよ、私もそうだと思います。

でも、情報を広げるスピードが1人の人間よりも、圧倒的に早い。

だからこそ、私たちはしっかりとエビデンスベースの知識と、自分で考える力を

育てていかなければいけないのではないでしょうか?

そのためにも、私は来年も引き続き、皆さんに自分で考える力を育てられるような

情報やクラス、コースを提供していけるようにDLSを続けていきたいと思います。

今週も、そして今年もポッドキャストを聞いてくださってどうもありがとうございました。

今日の最初にお伝えしたように、現在闘病中で来年は来日セミナーを行わないですが

自分の力で考え、ダンサーの健康を守る指導者を育てる

DLS公認スタンスインストラクターコースは開講しようと準備しています。

また来年、お会いできるのを楽しみにしております。

Happy Dancing!

そして良いお年を。

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