DLSポッドキャスト epi617 オーバーストレッチが必要だと思ってしまう理由

SNSで見たストレッチ、そのまま真似していませんか?

バレエで起こりやすいオーバーストレッチの危険性を

オーストラリアのニュースをもとに考えてみました。

Transcript

こんにちは、DLSの佐藤愛です。

今月のポッドキャストでは、今更聞けないストレッチについて

特にオーバーストレッチと言われる、派手なストレッチというのかな?

についてをお話しています。

すでに様々なストレッチについての「そうは言っても愛さん、あのね…」という

系統の質問には、多くのポッドキャストエピソードでお答えしてきました。

まだ聞いていない人たちは、特に2025年3月にお送りしたシリーズもお聞きくださいね。

様々な視点で、ストレッチの噂話にお答えしています。

さて、先週はオーバーストレッチの定義を確認し

このような解剖学的な可動域を無視したストレッチを勉強していない人が指導できるのか?

という問いかけをしてみました。

オーバーストレッチとは

  1. 関節や筋肉を、正常な関節可動域を超えたり、ケガや年齢、バレエテクニックに適さないストレッチをさせること
  2. ダンサーを、人間の正常な関節可動域を超えたり、彼らのケガや年齢に適さない、またはバレエに不必要なストレッチをさせること

という定義をしましたよね?

解剖学がよくわからなくても

正常な可動域を超えたり、ケガや年齢を無視したストレッチはダメだよね?

というのは分かるじゃないですか?

ではなぜ、バレエのことを知っている先生でも、子供の安全について考えている保護者でも

オーバーストレッチに惹かれちゃうのか?

今日はこれについてを考えていきたいと思います。

2015年に警告はされている

話は10年以上前、2015年にさかのぼります。

オーストラリアのメインニュースチャンネルABCが

ダンサーのケガについての記事を出しました。

タイトルの直訳は「SNSでの過度なストレッチの模倣によるダンサーのケガ」

オーストラリアのニュースなので

バレエに特化した雑誌の一覧ではないことを頭に入れておいてください。

お茶の間に流れるニュース記事って感じです。

記事はこのようにスタートします。

”SNSで見た極端なオーバーストレッチを真似したことで

若いダンサーがケガをするケースが増えており

医療専門家は「キャリアを台無しにする可能性がある」と警告しています。

脚や股関節を過度に伸ばす画像がInstagramやYouTubeにあふれており

「スコーピオン」や「オーバースプリット・レッグマウント」といった

ポジションが広まっています。”

ちなみに、スコーピオンとは足をデリエールに挙げて両手で持つ形のもの

オーバースプリット・レッグマウント、というのは極度のY字バランスを指します。

いつもお話しているように、そして記事にも書いてあるように

脚や股関節のストレッチに命をかけているダンサーたちの様子が分かりますよね。

命なんて大げさなと思うかもしれませんが

キャリアを台無しにするということは

文字通りダンサー生命に影響するということでしょう?

実はこの記事、私もブログでカバーしました。2015年に。

当時、オーストラリアのニュースになるくらい

若いダンサーたちのケガの率がアップしていた時期から

バレエ学校でも、DLSでも、ストレッチの危険性を何度もお話してきました。

10年以上、私だけでなく、様々な専門家が警告をしてきているんです。

流行れば正義、誰でもインフルエンサー

この記事で専門家としてインタビューをされている理学療法士さんと私は知り合いで

何度も彼女のセミナーに参加しています。

DLSでよく出てくる、管理栄養士のふみさんと出会ったのも、彼女のセミナーグループ。

彼女はこうやってインタビューで話をしています。

”最大の問題は、新体操の動きをダンスに持ち込み

しかも、十分な準備なしに“すぐできるもの”として真似しようとしていることです。

本来はその前に積み重ねるべき細かなトレーニングが必要なのに、それを無視しています”

先週のエピソードでお話したように

オーバーストレッチの定義を知ったうえで

解剖学的に、もしくは運動生理学的に、ストレッチを学んだ人が指導しているのではなく

流行っているから、SNSで見たから、という理由で真似してしまう人たちがいる。

その代償は、将来プロを目指しているダンサーたちってわけです。

記事には、何十万人もフォロアーがいるダンサーたちが

SNSに投稿していると書いてあります。

つまり、スタジオのお姉さんがアシスタントとして後輩にやっている的なレベルを超えて

ほとんどの人の人生の中で、それだけ多くの人に会うことがないような人数が

投稿を見ているという事実が見えます。

記事には

”若いダンサー自身がYouTubeで「やり方」動画を投稿し

高度な体操的ストレッチを教えるケースも増えています。”

とも書いてあります。

さっきお話したように、この記事は2015年に出されています。

2020年のパンデミックで

舞台に立つことが出来ないダンサーたちの多くはSNSに進みました。

観客のために踊りたい人たちが、ダンサーという職業になるわけじゃないですか?

だから、シアターで観客に見てもらえないなら

SNSの観客、つまりフォロワーに向かって発信する理由もよく分かるんです。

それが、ダメって言っているわけではないですよ。

誰でもSNSに投稿できるんだから。

Tiktokは2018年、この記事の後にスタートし

インスタのアルゴリズムも10年前と変わっている。

ということは、2015年の記事よりも

さらに多くの流行りや、ダンスインフルエンサーが

日々投稿をアップしているということになるんですよね。

だからこそ

指導者でも、治療家でも、ダンサーを選ぶ側のディレクターでもない人が

ネットで「開脚が出来る方法」とかをアップしているという事実を

忘れないようにしたいんですよね。

その人の舞台を見たことがなくて

本当にプロダンサーとして活躍しているのか分からない人でも

フォロワー数があって、バズってるから

その人が言っていることを真似しているということを忘れないでください。

十分なトレーニングを受けていないダンサーが真似する

この記事の中では、実際にネットで見たストレッチを真似して

長期にわたるケガを負った10代のプロを目指すダンサー2人の話も出てきます。

そのうちの1人、17歳のシャーロットは

SNSの模倣が広がっている背景には

十分なトレーニングを受けていない子どもたちがいると指摘しています。

そして私は、この子の考えに拍手を送りたい!

今日のポッドキャストのテーマは

「バレエのことを知っている先生でも、子供の安全について考えている保護者でも

オーバーストレッチに惹かれちゃうのはなぜか?」

でしたよね?

シャーロットが言うように

SNSを真似する子たちの多くは、十分な指導を受けてきていないんです。

レベルの高い指導と言い換えてもいいかもしれません。

彼女も、もう1人のケガしたダンサーも「極端なストレッチに挑戦する前に

長期的なダメージについて知っておきたかった」と話しています。

つまり、「知識があったら、真似をしなかった」とケガした張本人が言っているんです。

逆に言えば、彼らがSNSの真似をした理由は

  1. オーバーストレッチがダメだという判断ができなかったこと
  2. オーバーストレッチが危険だという事実を知らなかったこと
  3. オーバーストレッチではない、正しい柔軟性をアップする方法を知らなかったこと

となります。

考えてみてください。

山に迷って、お腹がすいている子がいます。

目の前においしそうなキノコがありました。

ってなったら、食べるよね?

山に迷って、お腹がすいている子がいます。

目の前においしそうなキノコがありました。

しかも、携帯を開けば、多くの人たちが、同じキノコを食べています。

だったら、絶対食べるよね!?

上手になりたいダンサーがいる。

目の前に、自分が出来ない技がある。

プロダンサー、つまり自分の将来の夢を達成した人がそれをやっている。

そうしたら、この技を取得しなきゃ!と思って当たり前なんだと思います。

でも、毒キノコの見分け方を知っている子は、キノコを口にしないかもしれません。

しっかり見極め出来なかったとしても

毒キノコの危険性を知っている子なら、手にしなかったかもしれません。

同じように、知識があったら危険な行動をしないって思いませんか?

SNSは現実ではない

知識がないから、SNSのオーバーストレッチを真似しちゃう。

だから、勉強しようね、で終わりにする前に

もうひとつだけ、皆さんに考えてもらいたいポイントがあります。

  1. バレエのことを知っている先生
  2. 子供の安全について考えている保護者

でもオーバーストレッチに惹かれちゃうのか?というテーマを考えたとき

これらの人たちが無知だったと言い切るにはちょっと語弊があると思うのです。

特にSNSで見た場合は。

というのも、SNSのアルゴリズムを考えると、自分の興味のないものは回ってきません。

そのため、私のSNSにはアメリカの銃問題とか、ヨーロッパの政治対策とかが出てきません。

大切な問題だと思うけど、SNSで情報を手にしようと思う内容ではないので

そのような投稿が出てきたら「興味なし」ボタンを押します。

つまり、オーバーストレッチに惹かれてしまう人たちは

柔軟性とか、ダンサーとか、そういうトピックを調べていたんだと思うんです。

最近では、そのような投稿にいいねしなくても、その動画を何秒見たか

その投稿の何ページまでスライドしたか、が分かるようになっています。

そして、見る時間が長かったものを興味があるものと理解して

アルゴリズムが回してくるようになっています。

つまりね、勉強する気はあった人たちだと思うの。

その上

  1. 多くのフォロワー数がいたり、いいねの数字がよいものは、口コミが良いんだと思って安心する心理と
  2. 同じような投稿が、フィードを埋めていくことで、みんながやっているんだという錯覚が

生まれてしまうんだと思うんです。

でもね、ネットを使う私たちが絶対に覚えておかなければいけないことがあります。

それは、SNSは現実ではないこと。

せっかく今日は、オーストラリアのニュースを取り上げたので

ここでもうひとつのオーストラリア発ニュースをシェアしましょう。

時は同じく2015年、オーストラリアの警察は

インフルエンサーのベル・ギブソンさんを調査していました。

彼女は、脳、血液、様々な内臓の癌を

薬ではなく自然食品などで克服したとして、SNSスターになりました。

SNSだけでなく

  1. Appleとのウェルネスアプリ
  2. 出版社Penguin社との料理本
  3. 様々なテレビ出演

などで一躍有名人になった人です。

でも、14か月に及ぶ調査の後分かったのは、全部嘘、詐欺だったということ。

ネットで見る内容は、特に専門家ではなく、私はこれで良くなった系のストーリーは

事実でなくても流行るんです。有名になるんです。

ギブソンさんのケースは稀だとしても

悪気はなくても、そして本人はそれで良くなったとしても

あなたには合わないかもしれないということを忘れないようにしてください。

なんせ、年齢、ケガの歴、あなた個人の解剖学的特徴は

他の人と一緒になることがないんですから。

ということで、今日のポッドキャストでは

オーバーストレッチに惹かれてしまう理由を考えてみましたが

いかがでしたでしょうか?

役に立ったよと思った人は、インスタのDMでポッドキャストの感想を教えてくださいね。

オーバーストレッチについて探求しているポッドキャスト、来週もまだまだ続きます。

お楽しみに。

Happy Dancing!

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