ダンサーのケガ : 脱臼&亜脱臼

*このブログは2014年8月に書かれたものを2021年に大幅加筆修正しました。

 

全くもって自慢出来ることではないというのは、百も承知ですが、私は今までバレエ関連のたくさんのケガをしてきました。

でも、足首の捻挫はした事がない(らしい…physioの関節テストによる)のと、脱臼はしたことがありません。

 

あ、嘘です。

小さいころに、お父さんに腕を引っ張られて肩脱臼したらしいですが、

  • 肩関節とは体の中で一番可動域が広い=ケガしやすい
  • 小さい子供の骨や関節はまだ完成していない
  • 外部からの力が加わっている(この場合は父親、遠心力、体重)

という3点から、ちっちゃい子の肩脱臼は結構良く見られます(いいか悪いかは置いておいて…

 

ただ、股関節の亜脱臼はよく起こります。

亜脱臼と病院でレントゲン付きで診断されたことはないですが、

  • 上手くはまっていないな、という感覚だけでなく体重をかけると痛みが生じる
  • 痛みだけでなく、可動域が制限される
  • なんらかの拍子でハマると痛みがなくなる
  • 過去に股関節のケガをしている

という部分から、勝手に判断しています。

良い子は真似しないでね。

 

なんで診断しないのか?というと、別に命に別状はないからです。

大体のダンサーはこうやって、自分の体の痛みを無視します。

良い子は真似しないでね(2回目)。

 

ちなみに私の場合、へんな風に座っていると勝手に外れるようです。

よく起こる場所は…飛行機内でした。

痛みで早く歩けないので、一番最後にゆっくりと飛行機を下りるとかしてましたが、最近はストレッチを徹底的に避けているのと、正しい姿勢で座るようにしているので頻度は減りました。

(この記事は、パンデミックのあった2020年後半に加筆修正しております)。

 

がしかし、この前夕方に犬の散歩に行こうと思ってソファーから立ち上がり、なんだか調子が悪い股関節だけどwalk it off, girl!なんて思っていたら、

外れて?シャープな痛みになって??そっちの脚に体重を乗せられず、道で転びました。

 

まさか30代になっても道端で膝小僧をすりむくとは思ってもみなかったよ。

Such as Life.

 

今日は脱臼についてお話していきたいと思います。

ダンサーに起こりやすいケガの1つに膝蓋骨亜脱臼というのがあるからです。

いつも通り、この記事はダンサーや教師&保護者の人達にダンサー版のケガ説明をお送りするためのeducation記事であり、私のように自己判断や診断をするためではございません。

良い子は…(以下省略)

脱臼・亜脱臼が起こる場所、関節の復習 

まずは脱臼がどうの、の前に脱臼・亜脱臼が起こる場所の復習をしておきましょう。

脱臼・亜脱臼は関節「にしか」起こりません

こちらの記事で関節については細かくお話しているのでそっちを読んでいない人は勉強してきてくださいね。

 

関節は骨と骨(1つ、もしくは複数)が靱帯によって結ばれているところ。

関節が外れたり(脱臼)、ズレたり(亜脱臼)しないように、

  • 靱帯
  • 関節軟骨
  • 関節液
  • 関節包
  • そして筋肉

が守ってくれています。

 

しかも関節を安定させるために、関節包にはネガティブプレッシャー(関節内陰圧)があって、

筋肉とか靱帯とかぜーんぶ取っ払っても、吸盤みたいに吸いついてくれる力が働いているのね。

 

これだけプロテクターがついているのにケガするんだ…という驚きを感じてもらえたら嬉しいです。

脱臼の種類

捻挫にも筋挫傷にも骨折にも種類があるように、脱臼にも種類がございます。

 

両サイドの骨の関節面が完全に外れちゃった場合を脱臼(だっきゅう・dislocation)と言い、

少しでも関節面が触ったままの場合を亜脱臼(あだっきゅう・subluxation)と言います。

(出典:Clinical Sports Medicine Revised 3rd edition, p11)

 

ほかにも皮膚が破れている+脱臼もしているという場合は開放性脱臼(かいほうせいだっきゅう)

そうじゃない場合は閉鎖性脱臼(へいさせいだっきゅう)なんて言われる種類もありますが、

交通事故などでなく、ダンサーの脱臼であれば、閉鎖性脱臼なはずです。

 

脱臼のことを完全脱臼(かんぜんだっきゅう・complete dislocation)といい、

亜脱臼のことを不完全脱臼(ふかんぜんだっきゅう・incomplete dislocation)という場合もあるのですが、

  • 不完全脱臼だから大丈夫だよね
  • 完全脱臼じゃなくてよかったね

という風にとってもらいたくないので、私はこの表現が嫌いです。

 

疲労骨折だから完全な骨折じゃないし、みたいな感じで受け取る人がいるのも知ってるんだけど、

そういう問題じゃないのよ。

 

どんな脱臼の種類だとしても

  • 脱臼したエリアを動かすと痛む、体重をかけられない
  • 腫れたり、あざが出来る場合もあるが、目で見えない場合もある
  • その関節をいつも通りに動かすことが出来ない
  • しびれやいつもと違う感覚(もしくは間隔自体がない場合も)

という症状が出ます。

ダンサーに見られる脱臼・亜脱臼の原因は?

脱臼の原因は大きく分けて2種類あるのね。

  • 病気や先天性なもの
  • 後天性

そりゃそーだ、って言われそうですね。

両方のケースを「バレエダンサー」に特化してみていきましょうか。

病気や先天性なもの

二重関節なんて呼ばれる人達の多くがかかっていると言われるエーラス・ダンロス症候群の人や、

臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)の人、膝蓋骨が小さかったり、大腿骨の膝蓋骨がハマる部分が浅い人などは脱臼、亜脱臼になる率が高いです。

 

関節の構造を復習したときにお話した、プロテクターとなるのもが少ない(十分に働いていない)から。

 

ちなみに、エーラス・ダンロス症候群も臼蓋形成不全も、痛みはないですし本人が知らないケースも多くあります。

この子たちが得意な事?

床でのストレッチ。

 

こんなに体が柔らかくて恵まれているわね!

なんて言われる人達です。

 

体が柔らかいからバレエを(もしくは新体操を)習わせようかしら?なんて言われる事もあるし、

体が柔らかく、脚も高く上がるので若いときにコンクールで上位に入りやすいです。

 

でも、関節を守っているものが少ないので、亜脱臼をくりかえす事は多い

これを亜脱臼症候群(あだっきゅうしょうこうぐん)と呼ぶことがあります。

  • ハズれた感じがするがすごく痛いわけではないし、不安定になるだけ
  • 何度も起こるけど、ハマれば大丈夫

ってやつで、本人が亜脱臼しているという自覚がなかったりもするのね。

(だから一番上で私の例を出したんだけど…)

 

ぱきっていうとハマって動きやすくなるっていうダンサー、put your hands up!

沢山いるのは知ってるよ、だってよく質問されるもん。

 

こうやって不安定な関節を放っておいたり、必要な筋力を作らず、繰り返しケガしていると、

軟骨がすり減ったり、骨自体も削られてしまったりしてほかのケガや、手術が必要になってしまう場合も多くあります。

 

病気の中には関節の変形が起こってしまうものもあるので、そこから関節が脱臼&亜脱臼しやすくなってしまう場合もあるそうです。

後天性なもの

言葉通り、生まれつきではなく後から起こった事ね。

例えば外から力が加わった場合や、その関節を酷使した場合。

 

コンタクトスポーツと違って、ダンサーの場合は外からの力が加わる事は少ないとは思われます。

(それでも床がイーブンでなくてひっかかるとか、リフトで落ちる、転んだ時に、などは考えられますけどね)

 

それよりは、酷使。

こっちの方が大きな問題であり、ダンサーのケガを予防できる部分でもある。

この場合、たくさん関節を使ったら脱臼するわけではありませんが、

関節を守る組織である靭帯や軟骨のすり減りは生まれます。

 

長期にわたる無理やりストレッチも、靭帯を少しずつ伸ばす(ならいいが、切れてしまう事も多い)ことで、関節を安定させる=脱臼・亜脱臼させないように保護してくれている組織が減り、

ハズれ易くなる、DLS流にいうと間違った方向の努力ですね。

 

MSDマニュアル家庭版に載っていた一説をシェアしますね。

話すことができない患者(幼児や高齢者など)では、脱臼があっても、その部位を動かすことを嫌がる以外に、徴候がみられない場合もあります。

 

だから私がダンサーのストレッチを嫌がるのよ。

確かに、「正しく」行えば静的ストレッチは安全だし、ストレッチ直後にケガが見える場合もほぼないけれど、

  • 病気や先天性なものがあるかの確認や許可をスタジオ側が確認していない
  • ストレッチで痛いと言ったり、叫んだりしても先生が無視する(もしくは頑張っている証拠だと言われる)
  • お家でやってくださいね、とシロウトの親にストレッチを強制する
  • 小さいときからバレエは痛くて当たり前と思っていたり、先生に不満不平を言わない、いい生徒たちが残る

というシチュエーションで、不必要なケガが増えているんじゃないか?って思うから。

 

無理やりでないくても、泣くまでストレッチしてませんよ、という人でも

  • 何歳からやってますか?(こちらの記事でも骨盤の成長をレントゲンで見ていますよね)
  • その年齢のダンサーに、その柔軟性が必要なパを行いますか?
  • その関節、その方向に動きますか?
  • ダンサーに先天性なものがないか確認してありますか?
  • ダンサーにこの感覚が「ここ」だったらOKで、それ以外だったらストレッチ辞めてね、というブレーキを指導していますか?

を一度考えてみてください。

 

バレエに柔軟性は必要ですが、人生に使える関節は必要です

この一言、ジョークになったら良いんだけど、そうでもないでしょ。

 

うーん、勉強不足かもと思った先生は教師のための柔軟性セミナーの詳細もチェックしてください。

そのセミナーでもお話していますが、体が柔らかい=努力している、なんて単純ではないという柔軟性や解剖学への理解が、先生には必要だと私は思います。

脱臼・亜脱臼しちゃったらどうする?

  • ちゃんとプロに診断してもらってください。
  • 再発や症候群を避けるため、医者に言われた関節を動かさない期間を守ってください。
  • 先天性の人はストレッチを辞めて、関節を守るためのトレーニングをしてください。(プロについて行うのをお勧めしますよ。)

 

脱臼・亜脱臼しても一生踊れなくなるわけではありません

でも、放っておいたらダンサー生命は非常に短くなりますし、一生痛む関節と向き合わなければいけないかもしれません。

  • しっかりと休んで組織の回復をさせる
  • バレエダンサーレベルのリハビリをする

は絶対に必要です。

→ダンサーのリハビリを理解するためのeBookはこちら

 

予防として

  • 体の柔らかい子たちはしっかりとトレーニングして、関節を守れるだけの筋力とコントロールを作ること
  • ストレッチは十分気を付ける事(関節を守る組織を緩めている可能性があると理解すること)
  • ストレッチを指導するのであれば、お願いですからちゃんと勉強してからにしてください

 

Happy Dancing!

ai

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