DLSポッドキャスト epi462 「力を抜く」と「手を抜く」は違う 似て非なるものシリーズ#4

正しく力を抜けていますか?

力は抜いても手は抜かずに、手は抜いても力は抜かずに。

今回のポッドキャストでは、この2つの違いについて考えてみました。

どちらに不要な行動が含まれていて、どちらに必要な行動が含まれているのか。

外からは同じように見えたとしても、安全と健康を守るために正しい方を選択してくださいね。

 

 

聞きたい人はこちらから(読みたい人はスクロールしてね)

 

みなさんこんにちは、DLSポッドキャストへようこそ、佐藤愛です。お元気ですか?

 

ダンサーズライフサポート、通称DLSは”生徒の安全と将来の健康を第一に考えるレッスンを「当たり前」に。”を合言葉に、

元オーストラリアの政府認定バレエ学校専属セラピスト兼、セミプロフェッショナルレベルのダンサー向けエクササイズ、解剖学とケガ予防のクラスの講師を担当してきた佐藤愛が、

大好きなバレエを心ゆくまで続けたいダンサー、バレエの先生へ情報をお届けしています。

 

 

似て非なるものシリーズも、残り2回となりましたが、楽しんでいただけていますか?

今月のポッドキャストの感想や、こんなテーマはどう?というアイデアなどは、

hello@dancerslifesupport.comに送ってくださいね。

 

今日のポッドキャストでは、「力を抜く」と「手を抜く」は違う、についてお話していきたいと思います。

今月のボディコンサークルのテーマは「エポールマンとポーデブラ」でした。

でした、って言ってもまだ終わってはいませんが、既に定員に達しているので過去形でお話していきますね。

 

テーマを解剖学的に言い換えると、エポールマン、つまり頸椎の動きと、ポーデブラ、腕の運びと言う意味ですから、肩関節の動きにフォーカスしたクラスだったのですが、

首と肩に関して良く言われる言葉、というか、首と肩くらいしか、バレエレッスンで聞かない言葉があるんですけど何か想像つきますか?

 

「力を抜いて」。

 

肘や指先も言われることがあるかもしれませんが、ポーデブラという括りにしておけば分かりますよね。

下半身には絶対に言われない注意だと思いません?「力を抜いて」。

でも力を抜いては踊れません

 

肩から力を抜いたら猫背のように前に落ちちゃうかもしれないし、腕を動かすたびに肩が一緒に動いてしまいます。

首から力を抜いたら、正しい方向へ目線をつけたり、回転のスポットをつけることができません。

 

では、どうして力を抜いてと言われるのか?

それは無駄なリキミが入っているから、無駄な動きがあるから、なんだかラインが変だけど、先生がよく分かっていないので「力抜いて」と注意して終わってしまうから。

なんてことが考えられます。

もちろん、その言葉を発した先生本人に聞いてみないと分からないんだけどね。

 

無駄なリキミというのは分かりやすいでしょうし、昔首のリキミの記事を書いたから飛ばします。

気になる人はDLSブログで「首のリキミ」と検索してみるか、ポッドキャストエピソード152を聞いてみてください。

エピソード152だって!2017年にアップされたポッドキャストらしいですよ。

比較材料として、今日のポッドキャストはエピソード462となっております。

 

 

話を元に戻しましょう。

無駄な動きというのは、例えば腕を5番ポジションに動かした時に、肩も一緒についていってしまうとか、

ブラバーからデミセコンドに開くときに、指先から動きが始まり、上腕骨を外転させるのではなく肩関節が上がってしまうとか。

こういう無駄な動きが、肩エリアで起こるから、肩を下ろして、力をぬいて、と言われる可能性があります。

 

またこのような無駄な動きを制御するために、首に力が入る可能性もありますね。

最後の、先生が何を言っていいのか分からないから、「力を抜いて」「リラックスして」と言う場合というのも、言葉通りだと思うんだけど、

同じく、ターンアウトしてとか、引き上げて、でなんでも解決すると思っている先生たちがいますよね。

引き上げて、と言えば呪文のようにダンサーがよくなる、みたいな。

 

でも、今日のテーマではないため、これ以上突っ込まずに進んでいきましょう。

今日のポッドキャストでは、ボディコンサークルのご紹介をしているわけではありませんが、せっかく話が出たから宣伝。

毎週日曜日朝9時から行われている、ダンサーの為のオンラインエクササイズクラス、ボディコンサークルは、毎月こうやってテーマが決まっていて、

テーマの解剖学的説明と、レッスンでの注意事項、そしてテーマにそぐうエクササイズを1か月かけて勉強していくクラスになっています。

レギュラーサークルメンバーが毎月申し込んでくれているので、なかなか席が空きませんが、申込は毎月15日にサイトにアップされています。

朝お会いできるのを楽しみにしています。

宣伝終了。

 

では、「力を抜く」とレッスンで言われたときに、本当に脱力するんじゃないという事が分かったところで、今日のテーマに戻りましょう。

「力を抜く」と「手を抜く」はどう違うのか?そしてどうやって間違えてしまうのか?

力を抜いて、と言われたり、そんなに頑張らなくていいんだよ、と言われても、常に100%でやらないと気が済まないというダンサー達がいます。

残念なことは、自分の中では100%でやっているつもりなんだけど、よく見てみたら無駄な事、本末転倒な事をしている人が多くいるの。

また逆に、本人は100%でやっているつもりなんだけど、周りから見たらもっと出来るのに…と思ってしまうような子もいます。

こちらも、自分の中では100%でやっているつもりなんだけど、実際には手を抜いている。

 

まずは前者、力を抜くことが出来ない人達について考えてみましょう。

2019年に「常に100%ってどういうこと?」という記事を書いたのだけど、そこから抜粋しますね。

 

_________________

しっかり休む、計画的に休む、も100%プレーする、と同義語

痛いのにプッシュしているのは、どうして100%にならないのか?

それは痛い=100%で踊っていないからです。

痛いところを庇って、100%の力を出していますか?

痛いところを放っておいて、次の日も100%で踊れると思いますか?

 

ストレッチで筋出力を一時的に低下させてレッスンする=100%ではない。

ケガの可能性があるストレッチをしている=100%で踊れないように、自分から努力しちゃっている。

 

つまり、100%でプレーするということは、100%でプレーできるようにケアしたり、メインテナンスしたり、努力することを指すのであって、

100%でプレー出来ない可能性を作っている時点で、それは100%のプレーとは呼べなくなるわけさ。

 

ということは、

  • 舞台前に体調を崩さないように、しっかりと栄養を取ろう
  • 足首の調子がよくないから、ターンアウトは減らすけど、その分上半身は誰よりも意識しよう
  • 今月はゲネプロや場当たりが続き、床が固いところでの練習が続くから、レッスンではアレグロはマーキングに変えて、スタジオの端で筋トレしよう

というものは、一見休んでいるように見えるけど100%プレーするということなんです。

100%プレーのために、「今日できる100%」をやっているということだからね。

_________________

 

力を抜くことが出来ない子達、力を抜いているとサボっているのではないか?と思ってしまう子達は、「力を抜く」必要があります。

力を抜くという言葉の意味は「緊張でこわばった体をほぐすこと」「力まずに、ゆったりと構える」だそうです。

つまり、緊張やリキミなど、不要な行動をやめるけど、構え、つまり前もって準備を整える、という意味なんですよね。

決して、パッシブな、受動的な行動ではなく、必要な準備は辞めない、前向きな姿勢だともいえると思います。

 

先ほどのブログ記事で出した例のように、今現在、自分が出来る100%とは何か?を賢く選択する必要もあります。

何が必要で、何が不要な行動なのか?を理解しないといけないから。

そのためには知識が必要ですし、練習も必要です。

ちなみに引用したセクションの次には、「まずは知識、次が練習」と書いてあります。

 

じゃ、後者の「手を抜いちゃう」事についてはどうか?

手を抜くという言葉の意味を調べてみたら、「必要な手間を省くこと」「仕事などをいいかげんに行う」と出てきました。

 

例えば、

  • ちゃんとウォームアップせずにレッスンに参加する。
  • 前回のクラスで言われたことを完全に忘れてしまっている。
  • 長くホールドするって分かっているから、敢えて足を低くしておく。

など。

 

必要な基礎レッスンをせずに、バリエーションばっかり繰り返させたり、まだ十分にテクニックが育っていないのにポワントを履かせるなども、

難しい事をやってそうだけど、手を抜いた指導になります。

だって、ダンサーの成長に必要な手間を省き、バレエ教師という仕事をいい加減に行っているから。

こうやって見てみたら、「力を抜く」と「手を抜く」が同じだと思う人はいないだろう、と思いますよね?

正反対の人達を指しているように見えますよね?

 

じゃ、考えてみよう。

痛いのをプッシュして踊らないと、手を抜いているんじゃないか。

だってクラスメイトの殆どが痛みを抱えているし、痛いけど我慢できないわけでもないし。

こう考えてしまう人は無駄な行動をやめて、今の自分のできる事100%に集中する「力を抜く」練習が必要です。

 

疲れているけど、体に悪いって分かっているけど、舞台まであと少し。

食事量を減らして、夜遅くまで自主練しなきゃ、努力しているとは言えない!

と思ってしまう人も、正しい知識を身につけ、正しい方向に努力する必要があります。

 

覚えてます?

力を抜くという言葉には、準備するという意味も含まれているんでしたよね?不要な事はしないけど。

リハが休めない、遅れを取りたくない。

その気持ちは分かります。

 

でも、痛いままで、100%でないままで、踊り続ける方が、遠回りになっていませんか?

  • 興味はあるけど、コンクールが続くし、後で勉強しよう。
  • 必要だと分かっているけど、レッスンのために体力を温存したいからエクササイズクラスは出来ない。

と言う人達と、

  • 舞台は楽しいけど、今必要なのは基礎体力、筋力を作り、ケガから復帰する事だから、レッスンのアレグロやポワントワークはあえて休む。
  • 毎日踊っていたいけど、知識が足りないままで体を酷使したら壊れてしまうだけだから、レッスンを減らして勉強や、コンディショニングの日を作る。

と言う人達。

 

手を抜いているのはどっち?

力を抜いているのはどっち?

 

勉強する時間がないから、仕事が忙しいから、という先生たちも、

リハーサルが休めないから痛みをプッシュするという生徒と同じです。

  • 休みの日を計画する事
  • 自分のための時間を取る事
  • 自分に必要な勉強をして、生徒を守る知識を手に入れる事

これらは、指導から手を抜いているのではありません。

より良い指導者になるために、不要な行動を辞めて、必要な準備をしているんですから。

 

不要な行動を辞める事と、必要な行動を行うこと。

力を抜く、と手を抜くの違い。

これらを理解しても、周りからは違いが見えないかもしれません。

運動量だけ見ていると、手を抜いていると思われちゃうかもしれません。

 

でも、私たちは賢く前に進みましょう。

だって、周りの人の意見は貴方の夢と関係ないんですから。

 

痛みなしで踊る事でも、プロを目指すことでも、

自分が通いたかったスタジオを作り、こういう先生に習いたかった、という先生に自分がなる事でも、

夢はなんでもOKです。

このポッドキャストが力は抜いて、でも手は抜かずに、前に進むサポートになっていたら嬉しいです。

 

 

ということで、今日のポッドキャストはここまで。

最後まで聞いてくださってどうもありがとうございました。

似て非なるものシリーズ最終回の来週にお会いしましょう。

 

Happy Dancing!

!!ポッドキャストの購読方法!!

 

 

DLSのYoutubeチャンネルには過去のポッドキャストだけでなく、ビデオブログやインタビューなども発信しています。

チャンネル登録をお忘れなく!

 

Listen to all our episodes

Share This Post

Facebook
Twitter
LinkedIn