プリエが浅い、ジャンプの着地で踵が浮いちゃう…
これってアキレス腱が短いからだと思っていませんか?
プリエの深さをエビデンスベースでお話したポッドキャストです。
Transcript
最近、腱についてよく聞かれる佐藤愛です。
最近と言っても、現在出来る限り早めに、そして多くのポッドキャストを
レコーディングしているので実際のところは、2025年8月中旬ですが。
7月下旬~8月中旬は様々なところで、腱tendonについて聞かれたんですね。
腱についての解剖学を腱学と言いまして、
ちょっと特殊なというか、ニッチな部分になるんですね。
そして私はそこのスペシャリストではないので、
私自身もtendon specialistのコースを受けたりしましたが、
奥深い世界が広がっているんですよ。
例えば、腱とはエネルギーを貯めるところ。
ここでいうエネルギーとは食事、カロリーという意味ではなく、運動のことです。
筋肉のエネルギーを骨に伝える役目をしているので、
もちろん、筋肉からのエネルギーを伝える時にプチって切れては困るので、
柔軟性も必要だけど、別のトレーニングが必要なんですね。
だけど、「アキレス腱のばし」という名前は一般的に知られているように、
なぜか腱は伸ばすものというイメージが強いみたい。
ただ、腱は筋肉の様に伸び縮みを得意とする組織ではありません。
輪ゴム飛ばしで、よく飛ぶ輪ゴムは、柔軟性はあるけど、
ずーっと後ろに引っ張れるわけではないじゃない?
少し硬めで、強くて、指を離したらパン!と戻るみたいな感じ
と説明したら、イメージがつきますかね?
アキレス腱は、腱の中で一番太く、強いと言われます。
どれだけ強いかというと、体重の12-13倍は耐えられるみたいです。
平均的なアキレス腱の長さは15cmくらいなんて言われていますが、
計測時にどこまでがアキレス腱と言うか、どこからどこまでを計るべきか?
などで違うデータが出ることがあるようです。
ちなみに、男性の方が女性よりもアキレス腱が長い傾向があるようですが、
これは身長、つまり骨の長さや過去のケガの有無などによって変わると思います。
以上、バレエには関係のない、アキレス腱のトリビアでした。
プリエが浅いのはアキレス腱が短いから?
今月はプリエについて順番にお話しているので、
を聞いてくださいね。
今日はその続きで、少し難しいです。
プリエが浅いという悩みがある場合、最初に行うことや
先生に言われることはアキレス腱伸ばしじゃないでしょうか?
ただ、先週のポッドキャストの終わりでお話したように、
アキレス腱伸ばしの形で、ふくらはぎの筋肉を伸ばすのは結構知識が必要です。
多くの関節を超え、多くの隣接する筋肉があるため、
膝のゆるみや足首の方向、足指の方向などによって
効果的にふくらはぎの筋肉を伸ばすことが出来ない可能性があります。
でも、どうやって伸ばそうか?の前に
アキレス腱が短いこと「が」プリエが浅い原因なのか?を考えるべきですよね。
アキレス腱が短い事はあるか?
答えはYESです。
元々生まれつきと言うのもありますし、
小さい時からつま先歩きをしている幼い子達は
アキレス腱をはじめ、そのエリアを伸ばすトレーニングが足りずに
成長してしまうというのもあるそうです。
ケガで物理的に短くなってしまったり、
長期動かさなかったので可動域が狭くなることはあります。
でも、プリエとは、足首だけの動きではなかったんだよね?
どの関節が動くか、覚えていますか?
股関節、膝関節、足首とフットの関節。
じゃ、アキレス腱「だけ」に執着する理由はあるのでしょうか?
プリエが浅くなる原因は?
アキレス腱以外に、何がプリエの可動域に影響するかを知っておくと、
自分の問題点が見えやすくなると思います。
今から挙げるものは全てではありません。
例えば過去のケガ、精神的なこと、栄養的な部分は含めていませんが、
非常に大切なポイントになるので、そちらに原因があるかも?と思った人は
リハビリしてくれている人、心理士、管理栄養士など、
それぞれの専門家に聞いてみてくださいね。
プリエが浅い原因その1:正しく立てていない
プリエは立って行います。
そりゃそーだって?
そのため、正しく立てていなければ、
例えば、骨のアライメントや重心に影響するプレースメントが出来ていなければ、
関節の持っている可動域を自由に使うことは難しくなるでしょう。
プリエが行われるのは股関節から下の下半身ですが、
上半身がしっかりと保てなければ、下半身は上半身の面倒も見なきゃいけないし、
プリエもしなきゃいけないので大変!
正しく立てていない、の中には、
正しいバレエスタンスを保つ筋力がない、も含まれます。
だから「バレエの立ち方できてますか?」を最初に書いたし、
DLS公認スタンスインストラクターコースで、小鬼たちに学んでもらっているんですよね。
プリエが浅い原因その2:正しくターンアウトが出来ていない
プリエは大体の場合、ターンアウトで行われます。
そのため、正しく立てている上に、正しくターンアウト出来ている必要があるのね。
よく、プリエでは膝を横に開きます、って言いますし、
先生たちもプリエの時に、膝を外にーって注意するけれど、
プリエで膝を外にする理由は、ターンアウト、つまり外旋ではなく、外転です。
だって、そもそも外旋している股関節から始まっているはずだから。
言葉も似ている、外旋と外転の理解が出来ていないから、
皆がカエルとか胡坐ストレッチに励むんですが、
今日のテーマではないから割愛するよ。
プリエが浅い原因その3:footが硬い
プリエで動く関節の中に、フットがあるよと9月最初のエピソードでお話したの覚えてる?
たくさん関節の名前があったけど、覚えなくていいよってお話しましたよね。
フットにある関節、アーチの部分はプリエの時に動きます。
そのため、フットが硬いとプリエも硬くなります。
ここでいう「フットが硬い」というのは、つま先が伸びないという意味ではないよ。
解剖学的には、つま先を伸ばす動き(底屈)と逆の背屈が必要なんだから。
アーチは足の真ん中にあるので、ミッドフットとも呼ばれるこのエリアが
スムーズに動くようになると、
- つま先も伸びる
- プリエも出来る
足を育てることが出来ます。
そんな魔法のモーバライゼーションは、プリエ本に載っているので
しっかりと本を読んでやってくださいませ。
プリエが浅い原因その4:下半身の筋力不足
今日お話する最後の原因は、下半身の筋力不足です。
先ほど、原因その1で上半身のバレエスタンスを保つ筋力が必要とお話しましたが
もちろん、下半身の筋力もとっても大切。
プリエを深くする=可動域を大きく使う=関節を大きく動かす筋力が必要
ということで、プリエが浅い人達の多くに、筋力不足が挙げられます。
スクワットを考えてみてください。
深いスクワットと、浅いスクワット、どっちの方が筋肉使うと思います?
深いスクワットでしょう?
プリエってガニ股スクワットだからね。
理論的にプリエを練習しよう
- プリエとは何で、どの関節が動くのか
- プリエの可動域とは何か
- 可動域の制限を作るものはなにか
このように、理論的に解剖学の様にエビデンスベースで考えることが出来ると、
安全に、そして効果的に上達する事が出来ます。
逆に、このような知識がなければ
「プリエが浅いからアキレス腱伸ばししなさい」
という必ずしも当てはまらないアドバイスをすることになり、
オーストラリアバレエ団が出しているように、
ふくらはぎのストレッチから下半身のケガが増え、
腱の仕事であるエネルギーを貯めることが出来ず、ジャンプが上達しない
という悲しい結果になってしまいます。
こうなった場合、怒られるのは先生ではなく生徒、ダンサーです。
努力が足りないと言われるのはダンサーで
先生が勉強不足だと怒られることはありません。
だからこそ、ダンサー達は賢く踊っていきましょう。
保護者はスタジオ、先生選びを徹底しましょう。
コンクール歴や留学歴では、その先生が生徒の為にどれだけ勉強しているかは分かりません。
そして、先生たち。
勉強していきましょうよ!
たとえ100%プリエについて分からなくても、スタジオで言う言葉が変わるはずです。
プリエの浅さ、プリエを頑張ろうとすると足首の前が痛くなってしまうことについて
もっと学びたい先生は、教師の為のライブラリにある
「前方インピンジメント&プリエの浅い子」をどうぞ。
今日ちらっとお話に出た、アライメントも
「今さら聞けないアライメント指導法」というクラスがライブラリに入っています。
来週は、プリエを上達させるレッスンヒントをお話していきます。
先生たちは指導で、ダンサー達は自主練で使ってくださいね。
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