関節はダンサーにとってとても大事。でも、なぜ柔軟性だけでなく強さも必要なの?
バレエのレッスンで知っておきたい関節の仕組みや、ケガを防ぐためのエクササイズについて、
改めて考えてみました。
ダンサーも先生も、目標に向かって安全に踊るために、一緒に見直してみませんか?
Transcript
こんにちは、DLSの佐藤愛です。
私の様に、ポッドキャストアプリ組は自動的にエピソードがダウンロードされるので気づかないかもしれませんが、
YouTube組はビックリしているかもしれません。
なんでって?
それは今日のエピソードがとっても長いからです。
今月のポッドキャストテーマは「総集編」。
過去にお届けしたシリーズを1本にまとめ、一気に復習できるようにしました。
しかも、各エピソードの勉強用にワークブックも作ってあります!
まだ暑い日が続いているとは思いますが、気分は”勉強の秋”ということで、
ぜひ、ワークブックとポッドキャストで安全に、長く踊るための知識を身に着けてくださいね。
1発目の今週は、関節の種類シリーズをまとめた総集編です。
ワークブックは、こちらからダウンロードしてください。
DLSライブラリの3か月会員と1年会員の皆さんは、
ライブラリ内に新しく「音声クラス+ワークブック」というセクションを作ってあります。
ライブラリ詳細はこちらから。
では、総集編へ行きましょう!
関節にフォーカスしたのは4年前!?
2025年最後のポッドキャストシリーズは、関節についてお話していきたいと思います。
DLSのインスタをフォローしてくれている人たちは、
8月から「バレエ解剖学シリーズ」という名前の投稿をしているのを知っているかしら?
英語と日本語で、ポイントだけお話している投稿シリーズなんですが、
興味があったらプロフィールにあるハイライトから、「バレエ解剖学」を見てみて下さい。
そのシリーズの中で、関節にまつわる話を3回に分けてお送りしたんですが、
そこでハッとしたんです。
私、ポッドキャストで関節の話ほとんどしていないって!
もちろん、関節という言葉や、関節の構造がどーの、みたいな話はしていますよ。
例えば、エピソード500から549までの50回の中で、関節という言葉は282回出てきています。
ええ、単語の数まで調べましたとも、私、考え方がエビデンスベースですから。
単純計算すると、1エピソードの中で5.6回ほど関節という言葉を使っていることになりますよね。
でもね、関節「だけ」をテーマにしたポッドキャストはほぼないんです。
「ほぼ」がキーワードで、
エピソード374では「関節 動きの生まれるところ」というエピソードをお送りしています。
2021年にアップされたエピソードなので、4年前ですが。
さっき、前置きでお話した落とし穴ですよね。
- 私の中では、15年以上話していると思っている
- 実際に、ポッドキャストの中で話は出している
だけど
- 関節に特化してお話したのは4年前
だからエピソードを聞いていない人も多いでしょうし、聞いてくれていても記憶が曖昧になって当たり前。
やっちまったーというヤツですね。
そのような事実を8月に発見したのもあって、来週月曜日に行われる教師のためのライブラリ、
1年会員限定ライブで骨盤の話をするんですが、それはまた、別の話。
「関節 動きの生まれるところ」というタイトルでブログを書いたのは、
驚きの2013年、つまりDLSがスタートした時ですが、
先ほどお話したように、ポッドキャストでは2021年にエピソードにまとめました。
そのブログより、オープニング部分を引用しますね。
”皆さんの知っている通り、「骨自体」は動きません。
骨だけ勝手にどっか行っちゃわないし、動きを作ろうとしたら…折れてしまいますよね。
じゃ、動きはどこから生まれるのか?その答えは関節が握っています。”
関節はダンサーにとってとても大事
その後は、ダンサーが求めている柔軟性とか、俊敏な動きなどを練習する前に
「筋肉が、骨を、関節から動かしている」という事実をしっかりと理解する必要がある。
と続いて、関節の簡単な構造と、間違った体の使い方、
特に関節の構造や動く方向を理解せずにストレッチするとケガにつながる
という話をしていました。
スタジオで見られる急性のケガナンバー1の捻挫をはじめ
- つま先を伸ばすと痛くなる、足首の後ろ側
- プリエすると詰まったような違和感がある、足首の前側
- リハが続いたり、連続ジャンプの着地で痛くなる、膝
- アラセコンドで痛みが出る股関節
- カンブレで痛い腰
など、ダンサーのケガを考えてみると、関節が関係していることが殆どなんですよね。
さっきお話したように、関節とは動きの生まれるところですから、
動くと痛いというケガがあった場合、それって広い意味では関節が影響しているとも言えます。
ほーら、関節はダンサーにとってとても大事だって分かったでしょう?
余談だけど、今読み返しても入門編としては良いことが書いてある記事なので
来週から難しい話になる前に、予習として読んでおくことをお勧めします。
動きを作るのは筋肉
けが予防のためにも、柔軟に体を使うためにも、関節が大切だということはわかった。
だからこそ、入念にストレッチして関節が動きやすいようにしてあげる必要があるのでは?
そう思った人、間違いではないんですが、1つ重要なポイントが抜けています。
関節は動きの生まれるところ。
だけど、関節「が」動きを「作る」のではないんですよね。
動きを作るのは、つまり関節を動かすのは筋肉なんです。
確かに関節の柔軟性は大切ではあるんだけど、
筋肉がないと関節を動かしてくれる張本人がいないので動けません。
ダンサーの柔軟性でフォーカスされやすい、つま先で考えてみましょう。
- ダンサーは、一般人よりつま先を伸ばさなければいけない…YES
- ダンサーの足首は、一般人より柔軟でなければいけない…YES
それに追加して、
- ダンサーの足首、つま先は、一般人より強くなければいけない…YES!
何度も繰り返すルルベはもちろんのこと、
- ほかのスポーツや芸術では絶対に使わないトウシューズ
- ほぼクッション性のないシューズで、2-3時間の舞台をこなすこともある職業
- 少しでも足が床を離れたら、伸ばさなければいけない、というテクニカルルール
を考えたら、
ダンサーのつま先が、超人レベルで強くなければいけないということに気づくよね。
関節を守るのも筋肉
関節を動かしてくれる筋肉ですが、実は関節を守るのも筋肉なんです。
軟骨、靭帯、関節包…関節には様々な組織があって、
それらすべて関節を守る仕事をしてくれてはいますが、
それら多くの組織は、パッシブに、つまり受動的に関節を守ってくれています。
だけどね、筋肉だけは私たちの努力で、大幅に強さをコントロールできるんです。
誰でも、何歳からでも、週に1度のエクササイズからでも、向上できるんです。
すごくない?
だから私は、バレエ学校で、治療家としてケガをケアし、
講師として解剖学を指導するだけでなく、
エクササイズクラスを担当して、
総合的にダンサーのケガの予防とリハビリをサポートしてきました。
だから今、がん治療でお休みしている時でも、
ボディコンエクスプレスというダンサーに特化したエクササイズを提供するクラスは、
インストラクターコース卒業生の先生たちに担当してもらっています。
DLS公認スタンスインストラクターコースを提供しているのも、
皆さんのスタジオのケガを防ぎ、
みんなの夢や将来の健康をサポートできる方法の1つだと強く考えているからです。
もちろん、ダンサーのケガが減れば、ケガのせいでバレエを辞める子たちも減る。
つまりスタジオ経営の面でも大切だという考えもありますが。
来週からのポッドキャストでは、関節の構造をもう少し深く掘っていきます。
ですが、今日お話した関節と筋肉との関係も忘れないでください。
そして何より、すでに聞きなれている言葉で、知っていることもあると思う関節だけど、
何度も繰り返すことで、思い込みや、忘れちゃっているところ、
知識として知っているけど、レッスンに取り入れていなかった部分などを確認してみてくださいね。
頭蓋骨のずれと線維性関節
日本に帰るたびにホットペッパーを利用する佐藤愛です。
ホットペッパーというサイト?ビジネス名?サービス?をご存じですよね?
私が日本にいたときは、コンビニとかスーパーに置いてある雑誌みたいな形で、
中に入っているクーポンを切ってお店に持っていく
というシステムだったと記憶しているんですが、
同世代の皆さん覚えてますか?
今日の内容に進む前に、さっきお話していたホットペッパーより、
関節に関係する商品名で、びっくりするものをいくつか。
- 骨盤矯正
- 骨格矯正
- 肩甲骨はがし
- 頭蓋骨の歪み解消
- 肋骨を閉めるマッサージ
ツッコミどころ満載なんですが、どうしてツッコミ満載なのかの話の前に、
関節の種類を考えてみましょう。
3つの関節の種類
関節にも種類があるとお話すると、解剖学マニアの皆さんだったら
「ボールとソケットで出来ている球関節とかそういう感じ?」と思うかもしれません。
それは正しい!
でも、もっとマニアに&正確に見てみると、球関節とか、楕円関節などの種類は
「滑膜性(かつまくせい)関節」という関節の種類の中の種類なんです。
どう、通じた?
関節という大きなカテゴリの中に、滑膜性関節などの関節の種類に関するカテゴリがあり、
滑膜性関節というカテゴリの中に、球関節などが続きます。
そして球関節というカテゴリの中に、肩関節や股関節というものが含まれて、
肩関節というカテゴリの中に肩甲骨やら上腕骨やら、肩関節を作る骨だったり、
ローテーターカフという肩関節に関与する筋肉のグループが入っているんですね。
ロシア人形、マトリョーシカみたいな感じですよ。
一つの人形を開けると、その中に人形が入っていて、
それを開けると次の小さな人形が入っている…みたいな感じ。
では関節の種類には何があるか?
先ほどからお話していた滑膜性関節のほかに、
- 線維性関節
- 軟骨性関節
があります。
バレエ解剖学は知識つめこみじゃない
ダンサーが知っておくとケガを予防したり、踊りやすくなるのは滑膜性関節のみ。
先生たちも、滑膜性関節の構造を理解すると、安全に指導できますし、
危険な動きを辞めることもできます。
そのため先週のエピソードでお話していた関節もふくむ、
DLSで「関節」とお話した際には、滑膜性関節の話をしています。
第一、滑膜性関節なんて言葉聞いたことがないでしょうし、
英語でjoint healthと話す場合も、治療家に診てもらう関節も、滑膜性関節だけですから。
でもね、ホットペッパーの謎を解くためには、ほかの2つを知っておく必要があるんです。
私が今、ダンサーや先生に必要な情報と噂話や商品をツッコむための情報で
2つに分けたことをしっかりと頭に入れてくださいよ?
ご存じのように、私はバレエ学校の解剖学講師から、
DLSを通じてダンサーや先生たちへバレエ解剖学をお話しています。
本も何冊も出しています。
でもね、それらの中で今回お話している滑膜性関節とか、線維性関節とかお話していないんです。
なんでかって?踊りに必要じゃないから。
私の考えるバレエ解剖学と、大学などで学ぶ解剖学の大きな違いは、
「踊りで使えるか」「スタジオ、現場で役に立つか」。
ダンサーに必要でないなら、あえてお話していません。
2015年から1000人以上の先生たちが受けてくれている、
教師のためのバレエ解剖学講座モジュール1でも、
最初のスライドで「現場で使える解剖学」についてお話していますし、
コアマッスルの1つに数えられることもある横隔膜についても、
ダンサーが横隔膜が弱いという注意を受けないとか、
横隔膜の柔軟性はオーディションで見られない、
先生の注意で横隔膜は出ないなどの理由から、現場で必要ないから飛ばすよ、と話しています。
じゃないと、知識はあるけど踊り方や指導は変わらない、頭でっかちになっちゃうから。
この先、ダンサーが知っていても踊りは変わらない2つの関節の種類
についてお話していきますけど、
体ってこうなってるんだーとか、このサービス受けないようにしよう、
とかの興味に使ってくださいませ。
線維性関節
線維性(せんいせい)関節とは、強い線維性結合組織で繋がれている関節で、
動きはほとんどありません。
線維性結合組織って言われても何?と思うと思うので、
伸び縮みしない、繊維のカタマリが、骨と骨をつなげていると思ってください。
靭帯はヒモみたいな感じで、骨と骨をつなげているということは、みんな知っているでしょう?
そんな感じなんだけど、ヒモではなく、もっと密で、短くて、たくさんある感じ。
お掃除で使うほうきをイメージしてみて、床を掃く頭の方っていうの?
そっち側みたいなイメージとでも言うんでしょうかね?
ヒモとは異なるというというのが通じたかな?
面倒なことに、線維性関節の中にも3つの種類があるんですよ。
- 頭蓋骨をつなげている縫合(ほうごう)関節
- 脛の骨、脛骨と腓骨をつなげている靭帯結合関節
- 歯の根っことあごの骨のソケット部分をつなげている釘植(ていしょく)関節
さっきマトリョーシカって言ったじゃない?
永遠に次の人形が出てくるわけですよ、解剖学の世界では。
だから必要な情報だけを選択しないと、一生終らなくなっちゃうってわけですね。
リスナーさんだったら、脛の骨が一番わかりやすいかな?
脛には、脛骨と腓骨の2つの骨があるのは知っていますよね?
上の方は膝関節へ、下は足首の関節になります。
でも、この2つの骨がバラバラになっちゃったら困るから、
一応線維がつなげてくれているわけです。
同じ構造が、一の腕、つまり肘下でも言えます。
でもさ、脛骨と腓骨は骨で、骨と骨をつなげるのは関節だって言っても、
腓骨と脛骨分けるストレッチなんてしないのはわかるよね?
腓骨と脛骨、分かれちゃったら大けがだっていうのも分かるよね?
また、さっきお話した、歯に関する釘植関節。
知っていても踊りに役に立たないっていうのは分かるよね?
縫合関節の動き
ホットペッパーで見た、頭蓋骨矯正。
頭蓋骨って動くんでしょうか?
さっきお話したように、頭蓋骨は、ほぼ動かないというカテゴリになる線維性関節の一部で、
その中でも「縫合(ほうごう)関節」と呼ばれる種類になります。
縫い合わせる、と書いて縫合ね。
Physiopediaという、理学療法に関する様々な情報がまとまっているサイトによると
「頭蓋骨の縫合は機能的には**不動関節(ふどうかんせつ)に分類されます。」となっています。
例外は赤ちゃん。
出産がスムーズにいくように、赤ちゃんのみ、
頭蓋骨の骨たちは結合組織の領域が大人よりもはるかに広く、柔軟性があります。
お母さんたちならご存じのように、
生まれたての赤ちゃんは頭のてっぺんに穴が開いているように触れるんですよね。
そのおかげで脳みそも大きくなるスペースがあるとも言われています。
8歳までにはこのスペースは骨化され、みんなが知っている頭蓋骨になるんですね。
一応のところ、解剖学的には頭蓋骨がマルっと1つの骨になるわけではなく、
模型や、解剖学の本のイラストにあるように、ギザギザとした縫い目みたいなのがあります。
でもね、これらの関節に動きはほぼないです。
病気や、生まれつきの問題があった場合は別ですが、
そういうものがあったら、本人なら分かっているはず。
だって、頭蓋骨の仕事は、脳みそを守ることなんですもの。
動いたり、ずれたりしては困るわけです。
頭蓋骨は矯正できるの?
では頭蓋骨矯正とは何か?
この”治療法”はエビデンスベースではありません。
先ほどお話したように、関節の種類的にほぼ動かないだけでなく、
関節が動くために必要な、関節腔(かんせつこう)がない。
関節が動くには、骨と骨の間にスペースが必要なんですね。
スペースが大きければ大きいほど動きが大きく出来て、
スペースが小さければ小さいほど、可動域が狭くなります。
このスペースのことを、関節腔(かんせつこう)と呼ぶのだけど、
頭蓋骨にある線維性関節には関節腔がないわけ。
だから赤ちゃんでなければ、動かすことはできません。
100歩譲って、頭蓋骨が少しだけ動くとしましょう。
頭蓋骨の中には何があるんだっけ?そう、脳みそ。
頭蓋骨を動かすことが出来ると仮定したら、その中にある脳みそに影響します。
それって危険じゃないかしら?
頭蓋骨矯正したら、脳が破裂する!って言っているわけではないですよ。
頭蓋骨付近、そして顔にある表情筋は、非常に薄い筋肉たちで、
毎日表情を作ったり、話したり、食べたりするのに使われます。
だから、その筋肉たちのケアという面では問題ないでしょうし、気持ち良いと思いますよ。
首の骨、頸椎から頭蓋骨の後ろ側あたりにかけては、
スマホ、勉強など下向き姿勢が長い現代人にとって、負荷がかかりやすい部分でもあるから、
それらのマッサージも効果はあると思う。
だけど宣伝文句や、ちょっと齧っただけのエステの方、
ネットの情報に踊らされないためには、自分に知識が必要だってことが通じたでしょうか?
今日は、関節の種類の1つ、線維性関節についてお話してみました。
エピソードの前半にお話したように、踊りが上手になる解剖学知識ではありません。
頭蓋骨の柔軟性がアップしても、踊りは上達しないからです。
でも、知識欲が満たされた感じがあったり、解剖学って楽しいなと思ってもらえたら嬉しいです。
骨盤矯正と軟骨性関節
先週は頭蓋骨矯正という不思議なマッサージ法?治療法?を、
関節の種類から考えてみましたよね。
関節には様々な種類があって、種類の中にも、細かに分かれる種類がある。
まるでマトリューシュカのようだとお話したので、まだそちらを聞いていなかったら
2つ前のエピソード、関節シリーズの頭から聞いてみるのをお勧めします。
今日は骨盤矯正について。
骨盤矯正ベルトとか、骨盤矯正マッサージとか、聞いたことがあるんじゃないかと思いますが、
いかがでしょう?
骨盤にある3つの関節
骨盤とは、3つの骨で出来てる骨のカタマリです。
ダンサーや先生はこれくらい知っていたら十分。
ですが、解剖学的に超細かくお話すると、
仙骨と尾骨の間の関節とか、尾骨って骨のカタマリだから、1つ1つ数える?とか
でも寛骨って腸骨、恥骨、坐骨の3つだよね?とか面倒になるんですが、
バレエ解剖学では、「骨盤とは3つの骨で出来ている」で大丈夫。
手を腰へ!というときに触る部分腸骨も含まれる寛骨2つに仙骨1つですので、
- 右の寛骨と仙骨の右側
- 左の寛骨と仙骨の左側
- 左右の寛骨のぶつかるところ
の3つの関節があるんですね。
さっき、寛骨って腸骨、恥骨、坐骨の3つの骨だよね?とお話しましたが、
寛骨の上の方は腸骨といいます。
面倒だよね、だからみんな解剖学が嫌いになってしまうのよ。
もっと分かりやすくしてほしいよね。
寛骨と仙骨の間の関節は、正確には寛骨の「腸骨」と仙骨で出来た関節となるため、
仙腸関節と言います。
英語では仙骨のことをsacrum、腸骨のことをiliumと言うので、sacroiliac jointsと言います。
そのため、仙腸関節は頭文字をとってSIJというあだ名みたいなのがあります。
大丈夫、恥骨部分はもっとシンプルです。
左右の寛骨の恥骨と呼ばれる骨がぶつかる関節、これを恥骨結合と言います。
そりゃそーだ、という名前でよろしい。
恥骨=軟骨性関節
先週、関節には3つの種類があるとお話しましたよね?
ダンサーなど、動く人たちが理解しておきたい関節、もしくは一般的に関節と言われるものは、
滑膜性(かつまくせい)関節と言います。
先週勉強した、頭蓋骨の骨たちをつなげているのは、線維性関節でしたね?
恥骨は、3つ目の種類、軟骨性関節という分類に入ります。
恥骨と恥骨の間には線維性のディスク、恥骨間円板(ちこつかん えんばん)が入っています。
イメージ的には背骨と背骨の間にある、椎間板みたいな感じ。
椎間板も恥骨間円板も線維性軟骨なんですが、
そうやって話を軟骨の種類に広げてしまうと分かりづらくなっちゃうから、
骨盤の関節に戻ってきましょう。
軟骨性関節は中で2つに分かれます。
マトリューシュカ、始まりました。
第一次軟骨性関節と第二次軟骨性関節です。
戦争みたいな名前ですが、分かりやすいっていえば分かりやすいかな。
今見ている恥骨は、第二次軟骨性関節のカテゴリになり、ほんの少しだけ動きます。
動く理由は、この後にみていく仙腸関節にあります。
第一次軟骨性関節の代表例は、成長軟骨。
ご存じのように成長軟骨、骨端線は動きませんというか、動いたら困っちゃいますよね。
なんだけど、「幼い頃の方が体が柔らかくなるから」と言って
ストレッチする大人たちが存在するのです。
ま、この部分はすでに成長期の体などでお話しているから、飛ばしましょう。
仙腸関節=滑膜性関節なんだけど…
では仙腸関節はどんな関節か?
実は仙腸関節は関節種類の中で一番動くと言われる「滑膜性関節」のカテゴリに入ります。
そうなんだけど、構造が非常に面倒なんです。
滑膜性関節は6つの種類に分かれます。マトリューシュカ大変!
6つの中で、仙腸関節は平面関節と呼ばれる種類で、
私がインスタの「滑膜性関節の種類」という投稿に入れ忘れちゃったやつです。
誕生日パーティーに呼ばれなかったカラボスになっちゃったのが平面関節です。
平面関節など6つの滑膜性関節の種類はまた今度詳しくご紹介しますが、
名前通り、平面関節は2つの平らな骨がぶつかる形になっています。
ふつうは平らでスムーズな平面がぶつかるのでスライドするように動くんですが、
仙腸関節はこの”平面”部分がごつごつしているのね。
関節の間に入っている軟骨も、恥骨結合にも入っている線維軟骨と、
弾力性がほとんどない硝子(しょうし)軟骨という2つ異なる種類が入っています。
しかも様々な靭帯が仙骨と腸骨をしっかりと結んでくれていますので、
昔は動かない関節という種類に入れられていたくらい、動きの小さな関節です。
こんな構造の関節は、私たちの体には仙腸関節ただ1つ、いや、正確には左右で1つずつだけ。
骨盤はずれるの?
カテゴリ的には動く形だけど、軟骨的には動かない形。
このため半関節なんて呼ばれちゃうこともあるらしい、SIJは、一応動きます。
文献によって数字は異なるものの、こちらのリサーチペーパーによると
屈曲・伸展で約 3°、続いて軸回旋が約 1.5°、側屈が約 0.8°と書いてありました。
それもそのはず。
仙腸関節の仕事、というか骨盤の仕事は、
大腿骨から届く床からの衝撃を吸収することなんですから。
1つの骨で固まっていたら衝撃吸収はできないし、女性の場合出産にも影響するでしょう。
でも、大きく動くように出来ている骨格ではありません。
まれに出産後、恥骨結合の隙間が10ミリ以上になると
恥骨離開(ちこつりかい)という問題になりますが、
普通の生活で、ベルトで固めないといけないようなずれは生じないはずです。
では、なんで骨盤矯正が存在するのか?
私は、その答えは大きく分けて2つ考えられるんじゃないかと思っています。
1つ目、治療家目線。
実際に仙腸関節は痛みを生じることがあり、1ミリ以下ではあるがずれは起こります。
足の長さが異なる場合や、関節炎、
さっき見たように妊娠や出産などが影響することがありますし、
ダンサーに多く見られる関節が緩い系の人たちの場合は、
通常可動域よりも広い可能性が十分考えられるため、ずれが起こるかもしれません。
でも、仙腸関節の1つは背骨である仙骨。
背骨の治療は神経に影響しますので、知識がない人がすべきではありません。
出産で靭帯が緩むから、サポートのためにベルトするという人なら別ですが、
足の長さが異なる場合、一番効果的なのは靴の中にインソールを入れることでしょうね。
このように、しっかりと診断して、対処を考える必要が出てきます。
2つ目、痩せ文化。
ホットペッパーで見られるボリュームを考えてみると、私は痩せ文化の方が強いと思います。
骨盤矯正という言葉とともに使われるのが、足がやせる、ウエストが細くなるなど。
つまり、あなたが太っているのは骨盤が歪んでいるから、と言いたいんでしょう。
だから骨盤を矯正したら、細くなりますよって感じで、
治療家ではなくエステでこのようなサービスが受けられるんだと思います。
特に女性に向けて出されていることを考えると、細くないと女性は価値がない、
出産後元の体型に戻らないと価値がない、という不合理な世論が見られます。
この話をすると、私は怒り狂った鬼になるので今日はここまで。
関節がずれるという表現にも疑問が残ります。
というのも、関節がずれていたとしたら、それは亜脱臼と言うカテゴリになるからです。
少しのずれだったら、マイクロ インステビリティと言われることもありますが、
その場合、目で見えないでしょうから「骨盤ずれてますねー」なんて言えないはずです。
まとめ 骨盤矯正と関節の種類
- 骨盤に関節はあるか? YES
- 関節は動くか? YES
- 関節がずれることはあるか? YES
- 骨盤矯正は可能か? YES
だけれど、
- 関節の種類や軟骨の種類を考えると、そもそも骨盤は大きく動くように出来ていない
- 出産や衝撃吸収のために、少し動く構造なだけ
- 仙腸関節にずれが生じている場合は、治療が必要かもしれないが、エステレベルではない
と分かります。
確かに、骨盤には多くの筋肉がついています。
それらの筋肉のマッサージをすると股関節が動きやすくなったり、腰が軽く感じることはあるでしょうね。
だって、それらの関節に影響する筋肉だから。
だから、骨盤矯正マッサージという名前だけで、実際は骨盤周りの筋肉マッサージだったら問題は小さいのかもしれないです。
先週の頭蓋骨矯正と同じように。
ですが、受ける側の知識がないと困ります。特に、未成年のダンサーが受ける場合は。
免許がいらない職業の人が、骨盤周りの治療と名乗って、おしり周りを触っているという事実や、
背骨、内臓に影響するエリアであるということもしっかりと考えて、
どのような治療、トリートメントを受けるのかを考えてみてください。
柔軟性と関節の形
12月のポッドキャストでは関節の種類シリーズをお送りしてきました。
最終回の今日は、関節という構造の中にある3つの種類の最後、
滑膜性(かつまくせい)関節を見ていきたいと思います。
滑膜性関節とは
ダンサーをはじめ、動きを指導する人、動くことが仕事の人が知っておきたいのは、滑膜性関節。
体のほとんどの関節はこの種類になるので、一番数が多いんですね。
そのため、解剖学参考書などで関節、Jointと言われる場合は、滑膜性関節のことを指しています。
少なくとも、私の本ではそうです。
だって、毎回滑膜性関節と言うの、面倒じゃない?
では滑膜性関節とは何なのか。
ほかの2つの関節とは異なり、滑膜性関節には「関節腔(かんせつこう)」という構造があります。
解剖学で「腔」という言葉が使われるときは、体の中にある空洞を指すんですね。
と言っても、骨と骨の間にぽかんとスペースが空いているわけではないんですが…
関節腔という言葉より、関節包(かんせつほう)という言葉の方を知っている人も多いでしょう。
関節の包み、と書いて関節包。
名前通り、関節をくるんでいる袋、風船みたいな感じ?です。
風船の中って空洞になっているじゃない?
それのことを関節腔と言うのね。
だから、「ほかの2つの関節とは異なり、滑膜性関節には関節腔という構造がある」というセンテンスは、
「滑膜性関節には関節包という構造がある」と言い換えることも可能です。
風船がないと、空洞もないのでね。
関節包”風船”の中は、空気ではなく液体が入っています。
この液体のことを、滑液(かつえき)と言います。
面倒なことを言うよ、この滑液は滑膜が分泌してくれるのね。
だから正確には関節包→滑膜→関節腔って感じで、
この滑膜という存在から、滑膜性関節と言う名前がきているわけ。
骨と骨がぶつかるところには軟骨があるので、
その軟骨もこの関節包という袋の中に入っているという形になります。
前十字靭帯のような一部の特殊な構造を抜かし、ほとんどの靭帯とか、腱とかは関節包の外側にあります。
面倒ですよね。
このシリーズで何度もお話しているけど、
私の考えるバレエ解剖学ではこういう細かい部分は知らなくていいと思うの。
関節は動きの生まれるところだけど、動かすのは筋肉だし、関節を守ってくれるのも筋肉。
という理解があるだけで大丈夫なので心配しないでくださいね。
滑膜性関節の種類
関節にも種類があって、1つの関節の種類の中にも種類があって…
今月勉強してきた関節の面倒な部分マトリューシュカは、滑膜性関節ではもっと面倒になります。
なぜかというと、滑膜性関節は6種類もあるからです。
- 肘のような蝶番(ちょうつがい)関節、ヒンジジョイント。
- 手や足にある鞍(あん)関節、”クラ”関節と呼ばれることもあるみたいですが、サドルジョイント
- 先週、仙腸関節についてお話した際、カラボスしちゃったと説明した平面(へいめん)関節
- 首の骨、頸椎の1番2番の不思議な形を作っている車軸(しゃじく)関節、ピボットジョイント
- 足のMP関節部分や、頸椎1番と頭蓋骨部分などを作る顆状(かじょう)関節、コンディロイドジョイント
- 皆さんが一番良く知っているので、今更説明は不要な球関節、ボールアンドソケットジョイント
名前を覚える必要はあるか?
いやーないだろうね。
関節には様々な形がある、と分かっていたらそれで充分ですよ。
ぶっちゃけ、私もこのポッドキャストの準備をしながら、学生時代を思い出していましたもの。
平面関節をカラボスにしちゃうくらい、覚えていないんですから。
関節の形と柔軟性
名前よりも大切なことがあります。
それは、関節の形と柔軟性は密に関係しているということ。
ご存じのように、球関節はとっても良く動きます。
体の中で一番可動域が広いのが肩関節ですし、
ロンデジャンプの動きで分かるように股関節も様々な方向に動きます。
ルルベで曲がる部分、MP関節は顆状関節の一つで、大きく曲がりますよね?
ですが、球関節のように様々な方向には動きません。
膝関節や足首は蝶番関節で、顆状関節ほどではないですが、可動域があります。
一番動かない関節は、先週勉強した平面関節。
平らな面と面が合わさっていて、こすれるようにしか動けません。
蝶番って何か知ってます?
今、お家にいたらどんなドアでもいいので開けてみましょう。
ドアではなくても、キッチンキャビネットでも構いません。
多分上の方と、下の方に、金具がついているのが見えると思います。
この金具を蝶番というのね。
蝶々の羽のようになっていて、閉じる、ひらくという動きをするでしょう?
ピッタリと閉じて、大きく開くとは思うけれど、反対側に曲がりませんよね?
ドアって、360度開くものではないので。
それと同じ構造が、膝や足首なんです。
長らく開けていない、古いドアだったら、
久し振りに開けた時、動きがスムーズではないかもしれません。
でも、普通に開け閉めが出来るドアを、「もっと良くしよう」と反対側へ押しますか?
お家の場合は、ドアの反対側に壁があることが殆どだと思うので、
壊れるまで開くことはないと思いますが、それでも反対側にある壁が傷つくでしょう。
もし、反対側に壁がなかったとしても、先ほどお話した蝶番の金具が壊れると思いませんか?
ダンサーの健康を第一に考えよう
- かかとの下にヨガブロックを入れて、膝を押し込める練習
- つま先を何かの下に入れて、伸ばす練習
このような動きは、ドアの動きをよくするのではなく、金具を壊す動きです。
ドアだったら、数百円でホームセンターから新しい金具を買って、
スクリュードライバーで金具を外して、付け替えることが出来るでしょうけど、
人間の体だったら、そんなに簡単には行きません。
しかも、何度も金具が壊れるだけでなく、金具がついている部分の木が割れてしまったり、
はがれてしまったら、金具交換ではなく、ドアの修復が必要です。
人間の体の場合、ドアは骨になります。
数か月前の話になりますが、SNSの私の投稿にこんなコメントがありました。
「ぺったり開脚が出来ないプリンシパルもいる──
この表現、明確に否定します。そんなに甘い世界ではありません。
もちろん「絶対」は存在しませんから、世界中を探せば一人くらいはいるかもしれません。
ですが、それでも女性であればほぼ皆無です。
仮にいたとしても、異次元にスタイルが良い、音楽性が突出しているなど、
他の“超人的な要素”があるからこそ成立しています。」
この方のアカウントは顔出しも、名前だしも、そして職業も書いていなかったので、
どういう立場からこのような意見があったのか分かりません。
ですが、他の投稿を見てみると「私が色々なスタジオにゲスト講師に行っていて」
という言葉などがあるので、たぶんバレエの先生で、
自分のスタジオではなく日本で、ゲストで教えている方なんだと思います。
つまりフリーランスの先生ではないか?と仮定できます。
でも、一度も自分の投稿があるわけではなく、
他の人達の投稿を再投稿しているのが数枚あるだけのアカウントですので、よく分かりません。
良く出来たボットの可能性もあります。
2024年末に出た、オープンアクセス、つまり誰でも読める研究によると、
- SNS上のボットは最低でも全体の19%以上、増加している可能性が高い
- AIの精度が上がっているため、専門家でもボットか人間かを判断するのが非常に難しい
- SNSを使っている人が、ボットに遭遇しないことはない
などが書いてあります。
しかもボットの特性として
- 感情的、否定的な投稿を増やし、人間の感情を悪化させる傾向がある
- ボットとやり取りすると、人間の投稿内容をよりネガティブにしてしまう
というのが書いてありました。
さっき見てみたコメントがどういう人で、どういう意図があったのか分かりません。
私は専門家ではないので、ボットかどうかの判断もつきません。
でも、2025年が終わる前に考えたいこと。
それは、今の時代、ボットやAIなどがSNS上で間違った情報を広げているという事実です。
人間だって間違えることはありますよ、私もそうだと思います。
でも、情報を広げるスピードが1人の人間よりも、圧倒的に早い。
だからこそ、私たちはしっかりとエビデンスベースの知識と、
自分で考える力を育てていかなければいけないのではないでしょうか?
そのためにも、私は来年も引き続き、
皆さんに自分で考える力を育てられるような情報やクラス、
コースを提供していけるようDLSを続けていきたいと思います。
いかがでしたか?
ワークブックの後半にある「リフレクション」部分も、時間をとってやってみてくださいね。
初の試みとなる総集編エピソード、いかがでしたか?長すぎる?復習になる?
それとももう聞いたことがあるから飽きた?
感想やフィードバックは、動画下のコメントで教えてくださいね。
来週は、2020年にお送りしたダンサーのリハビリシリーズをまとめた総集編エピソードをお送りします。
今ケガに悩んでいる人も、将来の為に勉強しておきたい人も、
ワークブックとエピソード、楽しみにしていてくださいね!
Happy Dancing!
