何を”言わない”か?の大切さ バレエ界版

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「注意が理解出来ない生徒に対し、どんな注意をしたら上手になるか?」

「どんな風に伝えたら、子供が聞いてくれるか?」

このような質問はほぼ100%の確率でセミナーの事前フォームや、クラス後のフィードバックフォームにある「今悩んでいることは何ですか?」のセクションに書いてあります。

  • 何を言うか
  • どうやって言うか

も勿論大事なんだけど、今日のトピック「何を言わないか?」ってそれ以上に大切なんですよね。

 

自分が知っていたら現役時代が変わったのに、と思うと色々と伝えたくなってしまう先生や、

可愛い我が子が後で大変にならないように先に伝えてあげたい親心。

そういった愛情はいい方向で使いたいですよね!

今日は「何を言わないか?」について考えていきましょう。

何を言わないか?ダンサーの管理栄養士版

この記事のインスピレーションになったのはDLSフォロアーだと既に知っているはずで、私のブログの中でも「フミさん」というタグがあるくらい何度も登場する

シドニー在住のダンサー専門管理栄養士の染原ふみさんのブログ記事。

 

フミさんの記事はDLSとは違って短く、1分ちょっとで読めちゃうはずだから元記事を読んできてくださいね。

(DLSの記事は長い事で有名だからさ笑)

 

彼女のブログのオープニングセンテンスはこちら

どんなことを言わないか、でその人の本質が見えることはよくある

 

口先だけ良いこと(正論・相手が聞きたいであろうと思われる言葉)を言う人は皆出会った事があるでしょ?

だけど行動を見ると…ねぇ。

 

フミさんが上げた3つの例を見ていきましょうか。

「甘さ控えめだから罪悪感無しで食べられます」

甘いものが好きか嫌いかは本人の趣味ですから、それが正しい、悪いではないです。

カンパニーダンサーへのアドバイスの一つに、パワーの必要な踊りの前はエネルギー量の高いもの(=カロリーが高いもの)で高GI(=すぐに使えるエネルギー)を取れ、というのがあるくらい

シチュエーションによって使い分ける人もいます。

 

そこじゃなくて、

  • 甘さ控えめ=罪悪感なし

という言葉は

  • 甘さが多い=罪悪感を感じるべき

を暗示していますよね?

 

表向きは「これは食べても大丈夫だよ!」と伝えたかったのかもしれないけど、

これ「は」食べても大丈夫って、こっち「は」ダメだけど…というメッセージが見えてしまう。

「日本人にはお米が一番」

甘いものが好きか嫌いか、が本人の趣味と同じように

ご飯を食べるとパワーが出る、とか腹持ちが良く感じる、なんていうのは本人の趣味、感覚なんだよね。

その場合主語は「私は」であるべきで、「日本人は」ではないはず。

 

このような言葉を食の専門家から言われたら、あ、そっか!と思ってしまいますよね。

「○○食べちゃった」

これはダンサー同士の言葉でよく出るかもしれないし、先生や保護者がポロリと口にしているかもしれません。

食べた、ではなく「食べちゃった」。

つまり食べちゃいけないものだったのに食べちゃった、という意味になりますよね。

 

この言葉を大人が言っていると、周りで聞いている子供達は

これは食べちゃいけないものなんだ!だって大人が言っているもん。

と思ってしまいますよ?

 

愛さん、うちの子話も聞いていないんだから、そんな微妙な語尾の違いなんて聞いていないですよ!

と思うかもしれないけど、赤ちゃんはどこで日本語を学ぶでしょうか?

そう、周りの人の言葉

 

意味は分からないかもしれないし、聞き取れないかもしれないけど、喋るようになる。

そして日本語に囲まれて育つと日本語が出来るようになるように、英語に囲まれて育つと英語が出来るようになるように、その子の日常と当たり前になっていく

バレエの先生が「言わない」言葉

今までのブログだと、フミさんのブログのまとめになっているだけだから、

私がDLSを通じて、1000人に近いバレエ教師の皆さんと接してきた中で感じる、バレエの先生方が「言わない」方がいい言葉を3つほど選んでみました。

 

さっきの赤ちゃんの例と、お米発言と同じように、バレエ(指導)のプロが子供に発する言葉の重みというのがあるから。

先生は体が恵まれなかったけど

「先生はバレエ向きの体じゃなかったけど、これだけ努力したら大丈夫だったんだよ」

と生徒に希望を持ってほしくで伝えている言葉だとしても、「恵まれた体」が存在するという考えを植え付けていませんか?

 

確かに、ダンサーに共通している体型(形、の方の体型)はあるかもしれません。

でも、それって時代と国によって変わっていくので1つではないという事を頭にしっかりと入れておきましょう。

 

私が高校生だったときに「いい」と言われていたダンサーの体型と、現在のダンサーの傾向は大きく異なります。

そんなことないよ!と思う人達でも、身長は時代と共に高くなっているというデータを見なくても、最近の子たちの身長を見るとわかるよね?


    体型だけでなくもし、下の点が事実だと仮定したら

    • 新しい作品が作られている
    • 新しい(=若い)アーティスティックディレクターが職についていく
    • バレエ鑑賞の形が変わっている
    • 世間の目も変わっていく(=オーディエンスが求めるものが変わっていく)
    • SNSを通じてダンサーの声が一般に届きやすい(=不祥事なども明るみに出やすいため、カンパニーの対応が変わる)

    2021年に学生の子たちがオーディションに行くときには、多くの事が変わっているでしょうね。

     

    バレエの歴史を見ても、「変化」がキーワードな芸術なんですよね。

    • とっくの昔に王宮では踊られなくなったし
    • ポワントは生まれただけでなく、形もポワントでのテクニックも変わったし
    • バレエはオペラの一部ではなくなったし
    • 衣装の長さも変われば、ガスライトでなくなったし笑
    • コンテンポラリーやモダンもクラシックバレエ団のレパートリーに入っているし…

     

    世界の広さとバレエという「生きた」芸術を理解していたら言わない言葉。

    私もケガしたけど踊ってきたのよ

    ご本人にとっては

    • 自分の大変だった経験を伝えてあげたい
    • 昔は酷かったんだよ、という経験談を伝えたい

    のかもしれないけれど、それを聞いている若いダンサー達に「ケガしたけれど踊ってくる」のが当たり前、という意味にとれちゃいませんか?

     

    • 久しぶりに舞台に立ってケガした
    • 痛みがあるんだけど、発表会のリハしてます

    というのをSNSでアップしている先生もいるけれど、忙しくて、ケガもしてたけど、舞台に立ったのよ!を勲章として受け取られていないか?十分に気をつけてくださいね。

    • 体のケアや日々のレッスンをちゃんとやって来なくても舞台に立っていい
    • 痛いのは当たり前

    という考えを与えていないかな、と考えてみましょう。

     

    最悪、その投稿にお友達先生から「素晴らしいですね!」とか「頑張ってますね!」とかコメントが入っているとしたら

    • 痛い事は勲章となる

    と思われてしまいませんか?

     

    痛いのは当たり前、というのはご家庭でも言われるみたいです。

    2021年中旬にやった家族で学ぶダンサーのケガシリーズ、3クラスあった全てで

    「痛いのは当たり前と私も育ってきたので…」という系統のフィードバックが届いていました。

     

    バレエをやっている子たちにとって、バレエの先生は憧れの人です。

    皆さんにとっても、そうだったでしょ?

    私も、スタジオの先生がやっている事がカッコいいと思って真似してたもん!

    髪型とか、喋り方とか、ウォームアップで着ている服とか笑

     

    バレエをやらせている保護者にとって、バレエの先生の言葉は絶対です。

    信頼が大きくなればなるほど、この傾向が強くなっていきます。

     

    信頼してくれている人たちへの影響を考えたら、言わない言葉。

    もう年だから動けないけど

    アンシェヌマンを見せる前に、この一言をいう先生の多いこと!

    でも大人バレエトレーニーにとってこの言葉は心が痛いのではないでしょうか?

     

    • レッスンすれば、何歳からでも上達できる!
    • 年齢に関係なく楽しめるバレエ

    と掲げているのであれば、言動にもそれを表してくださいね。

     

    自分が最近トレーニングしていない言い訳だとしたら、それは心に秘めて、自分で努力してくださいよ。

    先生方が参加出来るボディコンサークルはDLSでありますから、自分のスタジオで生徒達にバレずにエクササイズできます。

     

    確かに、年齢と可動域や筋力は関係しています。

    同時に、何歳でもエクササイズをすれば可動域や筋力がアップするのも事実です。

    自分にとって都合のいい事実だけ選ばないでくださいね。

     

    *ただし!ケガをプッシュしてください、と言っているわけではございません。

    • 先生はOOというケガをしているのでこの動きはしないけど

    という説明は、痛い部分は無理しないんだ、というメッセージになるし

     

    • 先生はウォームアップをしていないから小さく動くけど、みんなは大きく動いてね

    という言葉は、先生でもウォームアップは絶対なんだ!と思ってくれる(もしくはウォームアップという言葉を聞きなれる)環境を作れるかもしれません。

     

     

    「年だから動けないけど」という言葉のもう一つの懸念は

    • 脚が高く上がること
    • ジャンプが高くできること

    「だけ」がバレエだと思われてしまわないか?という部分ね。

     

    • 顔の方向
    • 腕と目線のコーディネーション
    • パの進む方向

    そういうエリアはすごく大切で、特にお手本を見せなければいけない初心者クラスだったら足の高さやジャンプの前に、ここを勉強してほしいんじゃないかしら?

     

    体のこと、バレエの本質を理解していたら言わない事。

    悪意がないのは知ってるよ

    今日挙げた例全てで、誰かを傷つけようとしているわけではない、というのは100%分かっています。

     

    安心させる、元気づけるために言ったこと

    • 甘さ控えめだから罪悪感なしで食べれるよ
    • 先生だって体が恵まれなかったけど、ここまで来れたよ

     

    勉強してほしくて言ったこと

    • 日本人にはお米
    • 私もケガしたけど踊ってきたの

     

    自分を安心させるため、守るためにに言ったこと

    • OO食べちゃった
    • もう年だから動けないけど

     

    でしょ?

    言いたいことは分かるの。

    でも、その言葉を言わなくても伝えられるなら、他の言葉を使えるなら、そうしませんか?

     

    フミさんのブログにも

    もしもあなたがこの記事を読んで「細かすぎる」と感じたなら、それはあなたがその敏感性を持ち合わせていないからこそこれらのメッセージのダメージを受けずにこれた、ということです。

    と書いてありました。

     

    あなたにとって大丈夫、は絶対的真理でもなければ、全員そうすべき、でもありません

    そして私も含めて、情報を発信している人(バレエの先生、保護者だって子供たちに情報を発信しています)は

    • 若いダンサーの価値観は周りにいる大人の言葉から作られている

    事も忘れたくないですね。

     

    誰が最初に考えたのか分からないけれど、THINK=考えるという単語を使って標語みたいなのが存在します。

    学校とかで貼ってあったりするの。

     

    THINK before you speak

    • is it True? (真実ですか?)
    • is it Helpful? (役に立ちますか?)
    • is it Important? (重要ですか?)
    • is it Necesarry? (必要ですか?)
    • is it Kind? (思いやりがありますか?)

     

    画像をレッスンプランノートに貼るとか、生徒や子供と話す前にチェックするとかお好きなように使ってくださいね。

     

    Happy Dancing!

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