DLSポッドキャスト epi596 効果的なレッスン指導の条件

エビデンスベースの指導に大切なことは

YES、NOの白黒暗記ではなく、生徒に合わせて考えること。

バレエのレッスンやエクササイズをどう組み立てれば

生徒の目標に合った安全な上達につながるのか。

ダンスサイエンスの論文から紐解きます。

Transcript

みなさんこんにちは、DLSの佐藤愛です。

2026年は”エビデンスベース”についてをお話しているポッドキャストシリーズから

スタートしております。

今週が3週目になるんですが、いかがですか?

難しい?あんまり役に立たない?

それとも、今まで聞いたことがある言葉だし、なんとなくイメージは出来ていたけど

ようやく具体的に分かってきたって思った?

ポッドキャストの感想はhello@dancerslifesupport.comにメールでお送りいただくか

もしYouTubeで聞いていらっしゃったらコメントを残してくださいね!

読むのを楽しみにしております。

シリーズなので、パート1と2を聞いていなかったら

エピソード594に戻ってほしいのですが

ポッドキャストのながら聞き組は

年始から聞いていたけど忘れちゃっている可能性もあるので

簡単な復習をしておきましょうか。

「エビデンスベースとは

最良の研究エビデンスと臨床専門知識、患者の価値観を統合することである。」

という定義があり、文章の中にあるように

  1. ベストな研究(エビデンス)
  2. 先生、専門家がどうやって自分の専門エリアにエビデンスを取り入れるのかという知識
  3. クライアント、ダンサーの価値観

を総合することをエビデンスベースと言います。

そのため、エビデンスベースのバレエ指導とは

  1. 最新の、今手に入るベストな研究や、科学的根拠を
  2. 先生が、自分の生徒、スタジオなどの現場に当てはまる形にする知識をもち、
  3. 生徒の状況や考えを尊重する形で提供する指導

となる、とお話しました。

歴史から見てみても

エビデンスベースで指導すべき、という意見は満場一致だと思うのですが

エビデンスと言ってもリサーチの中にはレベルがあり、様々な種類があるので

先週はエビデンスピラミッドやエビデンスベースの問題についてもお話しました。

今週からは

エビデンスベースで指導したいと思ったら、具体的に何をしたらいいのか?

に話をシフトしていきたいと思います。

今日から使っていく学術論文は

カナダのトロント大学の准教授の心理士と

同じくトロントのヨーク大学ダンス学科の教授によって書かれたもので

題名が「Teaching the Dance Class」

サブタイトルは

「スキル習得・熟達・ポジティブな自己イメージを高めるための戦略」

となっています。

上達するし、テクニックマスターするし

しかもポジティブなセルフイメージも持てる指導法なんて

先生たちは喉から手が出るくらいほしい知識ですよね?

一緒に読み進めていきましょう。

効果的なレッスンは1つじゃない

この論文のオープニングは

「効果的なレッスンとは、1つではなく

理論的なレッスンプラン、指導法、そして指導のスタイルなど

様々な方法があります。」とスタートします。

確かに。

クラスの目的がテクニック上達の場合と、ダンス創作の場合では

効果的なレッスンの形が違って当たり前ですし

先生の力量、技術、得意分野や知識にも左右されるでしょう。

でも、それだとよく分からないですよね。

タイトルに書いてあったように

生徒が上達し、テクニックも向上し

しかも生徒はポジティブなセルフイメージが持てる。

そんなクラスを作るヒントが欲しいから勉強してるのに

「様々な方法があります」と言われちゃったら困ってしまうでしょう?

読み進めていくと、具体的に何が必要かが書いてあるのですが

その前に一度立ち止まって考えてほしいことがあるんです。

それは、指導って白黒じゃないよってこと。

白黒思考という言葉は何度もポッドキャストに出てきていますが

2026年に入ったので再復習してみましょうか。

英語ではAll or Nothing Thinkingなんて言われ方もしますが

すべて(All)か、なし(Nothing)か

つまりゼロか100かという極端な考え方を指します。

完璧主義者が多いダンサーに見られやすい考え方とも言われているのだけど

融通が利かず、固定的な考えしかできず

摂食症(2025年から摂食症という表現に変わったそうです)も含む

様々な問題につながってしまうことがあります。

  1. ケガや疲れに関係なく、毎日練習しなきゃいけない
  2. 絶対に砂糖は食べちゃダメ
  3. 集中するために、バレエ以外のイベントには参加しない
  4. おやつを食べちゃったから、今日はドカ食いし、明日は絶食する
  5. 細くなればダンサーになれる
  6. 体調が良くなくても、毎日エクササイズすべき
  7. レッスン前は絶対にストレッチすべき
  8. 30分のエクササイズなんて足りないから、やっても意味がない

などの考え方はAll or Nothingの考え方の例。

その他に分かりやすい例は会話の様々なところに

  1. 「いつも~だ」
  2. 「絶対~だ」
  3. 「~に違いない」「~すべき」

というような単語が聞こえた場合、白黒思考を疑ってかかる必要があります。

そのような考え方で

生活や健康を犠牲にしてでも踊ってくる、バレエ以外はやらない

と考えてきたダンサーが先生の道を選ぶことが多いので

指導者の多くはこのような考え方を普通だと思ってしまっています。

だからだろうね、ほかのダンスの先生たちは含まれないのに

バレエの先生は摂食症の原因の1つに数えられてしまっているのでしょう。

でも、それは今日のテーマではないのでここまでにして、指導法に戻りましょう。

白黒思考をなくして、より良いレッスンへ

  1. OOが正しい指導です
  2. レッスンでは絶対XXしなければいけない

という考え方をするのが得意な先生たちは

「様々な方法があります」という言葉が嫌いです。

イライラするし、答えが出ないことに対しストレスも感じるそうです。

だからこそ、この先に進む前に

  1. 「いつも~だ」
  2. 「絶対~だ」
  3. 「~に違いない」「~すべき」

という単語が頭をよぎったら、一度立ち止まってみましょう。

本当か、嘘か、事実かどうかは聞いていないです。

ただ「お?パンダ化してるかも?」と気づくだけでOK。

世界各国に様々なバレエ団があって、カンパニーごとにプリンシパルがいます。

そのプリンシパルたち

全員同じ踊りする?同じ体型?ジャンプや回転、表現もすべて一緒?

違うよね、それぞれのダンサーたち特有の踊り方があるよね?

確実なポジション徹底を見せ場にする踊りもあれば

エネルギッシュな勢いが必要な役もある。

とはいえ、同じ古典作品でも、同じ音楽でも、同じ振付でも

このダンサーが踊っているから感動するというのがあるじゃない?

そう、ダンサーって白黒じゃないんですよね。

ということは、指導者も白黒じゃないはずなんです。

生徒たちの性格、理解力、バレエ歴、環境、悩み、ケガ…

様々なエレメントを考慮して指導するのが先生の役目だったら

1つの指導法で絶対大丈夫、というのが存在するわけがない。

それは、好き勝手に指導していい、と言っているわけではないですし

今月のテーマはエビデンスベースなので

事実に基づいた指導を考えるのは大切だけれど

キーワードは「考える」です。暗記ではなくて。

先生の仕事は環境を向上させること

では、論文に戻りましょう。

ここでは、ダンサーがテクニックを習得する力、簡単にいうと上達する力は

以下の要因に影響されると書いてあります。

  1. 基礎体力&筋力
  2. 運動感覚
  3. レッスン
  4. メンタルトレーニング
  5. 十分な休息
  6. 運動記憶の定着
  7. 難しいパを順序だてて学ぶ
  8. 人間としての成長
  9. 先生から的確な注意をもらい、それを実践すること
  10. 学び、楽しみ、目的のあるレッスン環境

その後には

「学びとは内的なプロセス、つまり生徒の中で起こることであり

学んだからといって、行動が変わるとは限らない。」

「行動は自発的、つまり生徒がやりたいと思わなければいけない」

と書いてあります。

ここからも、先生が怒鳴ったって、何度もやらせたって

本人の学びにならないということが分かります。

また学んだとしても

その結果がまだ踊りに表れないこともあるかもしれない

というのも理解できますよね。

「先生は、生徒の自己肯定感と自己効力感を高めることで

技能熟達のための学習環境を向上させることができる。」

とも書いてありますから

生徒たちが「自分はできる!」「自分は価値がある」

と思える環境を提供するのが

指導者としての役目だということが分かるはずです。

「レッスンで先生からの注意をやる」ことが

バレエ上達だと思われがちですよね?

でもそれは、上達の一角だけなんです。

しかも、基礎体力とか筋力、休息や人間としての成長などは

先生が提供できるものではありませんから

実際に先生がスタジオで出来る要因は

  1. 順序だてて作られた、ダンサーのレベルに合ったレッスン
  2. ダンサーを否定せず、的確な注意を伝えられる技量
  3. 目的があり、ポジティブに学べるレッスン環境

の3つになるのではないでしょうか?

エビデンスベースのバレエ上達

先ほど見たように、上達する要因は10個ありました。

このうち、どの部分がどれだけ必要か?はダンサー1人一人で違います。

スタミナが弱い子もいれば、ケガしているので

メンタルトレーニングに時間を割いた方がよい人もいるし

成長期なので、体の成長を優先し、より多くの休息が必要な子もいます。

運動能力を育てるため

振付を繰り返した方がよい子もいるかもしれないけれど

記憶を定着させる時間が必要な子もいるかもしれません。

だからね、指導は白黒思考じゃできないってわけ。

もちろん、スタジオにいる全員を

1人ひとり最適な形でサポートするのはとても難しいかもしれません。

だけど、

  1. 週に7回レッスンに来てるからやる気がある
  2. バレエが上手になりたかったら、レッスンは休むべきじゃない

みたいな考え方があったら

今日のエピソードの真ん中あたりでお話した「パンダ思考」を疑ってみてください。

何よりも、エビデンスを使って考えた

バレエが上達するスタジオは「ポジティブな環境」です。

それは、甘いとか、なぁなぁにやってる、というわけではないですよ?

順序だてて作られたレッスンを指導し、的確な注意をしていなければ上達しないので。

また、危険なことをしていたら

大きな声で止めなければいけないこともあるかもしれません。

踊っている子の邪魔になるようなところでふざけていたら

ケガの可能性と、クラスメイトへのリスペクトのためにも

怒られて当たり前かもしれません。

でも、

  1. 子供たちがバレエ行きたくないと言い出す
  2. レッスン中、泣きながらストレッチする
  3. 太ってるとか、才能ないと言われ、自分が嫌いになる
  4. 先生が怖くて、体調不良を言い出すことが出来ない

というところだったら、たぶん上達しないでしょうね。

あれ?いつも愛さんが言ってる「Happy Dancing」に戻ってきてない?

と思った方、おめでとうございます。

その通り、前にもお話したけど

「Happy Dancing」はただの合言葉ではなくて

エビデンスベースの上達するバレエレッスンでしたよね。

ただ、今日のエピソードはここまで。

この話は、来週のポッドキャストにて

論文から具体的な16の方法を勉強するときに戻ってきましょう。

Happy Dancing!

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