バレエのレッスンだけで、バランス感覚は育つ?
研究をもとに、固有感覚やエクササイズ
バランスに関する年齢別の注意点を整理してみました。
安全に踊るために必要不可欠なバランス感覚、しっかりと理解しましょう!
Transcript
こんにちは、DLSの佐藤愛です。
今月のDLSポッドキャストは、IADMSの教師用リソースペーパーを参照に
バランス感覚を科学的にひも解いています。
すでにカバーしてきたポイントは
- バランス感覚を作る3つの要素
- 固有感覚とは何なのか?
- 固有感覚のチェック方法
- 柔軟性とバランス感覚のつながり
- ケガとバランス感覚について
でしたよね?覚えていますか?
全部頭に入らなくても大丈夫。
ながら勉強でも、ちょっと齧っただけの知識でも
この先、なんらかのきっかけで勉強しようと思ったときに役に立ちます。
小さい時から外国語に触れる機会があったとするじゃない?
その後、大人になるまで全然使わなかったとしても
旅行に行くからちょっとやっておこうかな?と思ったときに
過去の記憶が残っている感じとでもいうのでしょうか?
もちろん、ペラペラじゃないかもしれないけど
大人になって初めてその言葉に触れる人と
20年前だったとしてもすこーしやったことがある人だったら
学びが違うだろうなというのは想像つきますよね?
もう少し分かりやすい例では
小さい時にバレエを習っていたとします。
プロになるつもりではないし、受験でやめちゃったとしても
大人になった時に古典バレエの音楽を聴いたら心が踊ったり
自分が踊ったことがある作品はなんとなく動きを覚えていたり。
そういう感じで、今バランス感覚について読書感想文のように書けなくても心配ないです。
もし将来、このテーマをもっと学びたいなと思ったときに
役に立つかもしれないという可能性だけで十分。
ぼーっと携帯をスクロールしてて、1週間で10時間以上も無駄にしてるより
全然マシだと思いません?
しかも、音声を聞いている時、手は動かすことが出来るので
家事や運転など日常生活で必要なことをやりながら勉強することもできるかもしれないし
編み物やペインティングなど、趣味のお供にもできるじゃない?
そう思ってくれた方はぜひ
DLSポッドキャストをお友達ダンサーや先生、保護者の方々に教えてあげてください。
一緒に勉強して、一緒にエビデンスベースで上達していきましょう!
まぁ、ポッドキャストやオーディオブックが好きな私が
音声ラーニングの良いところを語っていても仕方ないので
今週のテーマ
「レッスンでバランス感覚は鍛えられるんじゃないの?」を見ていきましょう。
レッスンではバランス感覚は鍛えられないの?
先週、先々週のエピソードを聞きながら、多くの先生やダンサーが思った疑問は
「レッスンでは足りないの?」だと思います。
一度でもバレエレッスンを受けたことがあったら
もしくは見学したことがあったら
バーレッスンのアンシェヌマン、ほぼすべての終わりは
バランスを取っていると思いません?
プリエのアンシェヌマンでは
たぶん足も手も5番ポジションでルルベしているだろうし
ルティレやら、アチチュードやら様々なバランスが含まれていると思いません?
そのような「バランスの練習」と分かるものだけでなく
たとえバーがあっても、片足で立ち
バレエスタンスを保ったままで動脚、ジェスチャーレッグを動かしていると
姿勢維持という面から、バランスの練習になるはずですよね?
今月使っているリソースペーパーでも
「研究では、ダンサーは体操選手や未訓練者と比べ
位置を正確に再現する力が高いことが示されています。」と書いてあります。
位置を正確に再現する力とは
エピソード603でご紹介した固有感覚チェック1でやったように
片方の関節、手足の位置を
どれだけ正確に反対側の関節、手足で再現できるか?の能力のことです。
もうちょっとバレエっぽく説明すると
鏡を見ずに腕を1番や2番ポジションのように
左右対称のポジションに持ってくる感覚というと通じるかしら?
鏡を見ずに、踊りの中で
左右の腕の高さ、形、肘の方向や、指先の曲がり具合などを対称にする
この力は固有感覚の一部なんですね。
でも、その後の文章では
「一方で、ダンサーの固有感覚やバランスに関する研究結果には議論があります。」
と書かれています。
4つのダンサーの固有感覚研究のポイントが書かれているので
一緒に見ていきましょう。
1)バレエレッスンのみで
それ以外のコーディネーション力を鍛えるトレーニングを行っていない場合
足関節の関節位置覚やリハビリ後のバランス指標の改善は認められなかった。
2)長年踊っているダンサーであっても
計測してみると知覚やバランスの誤差があった。
3)柔道の選手の方が、ダンサーよりバランス感覚テストの成績がよかった。
4)プロダンサーに目を閉じて
フラット→デミ・ポワント→ポワントとしてもらうと
バランス感覚テストの成績が悪くなった。
研究1,2,3で、バレエだけでバランスが向上していないことが分かりますし
研究4番で、振付によって、つまり、フラットからオンポワントなど変わることで
よりバランス感覚が必要になる。
そのため、「継続的にトレーニングする必要があると考えられます」と書いてあります。
大人バレエ生徒さんのバランスは?
このポッドキャストを準備しながら
私も「そうは言っても、レッスンでバランス感覚鍛えているじゃない?」と思いました。
特にシルバー世代の大人バレエ生徒さんの場合
レッスンでバランス感覚を鍛えるから転倒(てんとう)防止になるんじゃないと。
バレエだけではなく、すべてのダンスにはなるのですが
2024年にバランス感覚とダンスについてのメタ研究が出ていました。
メタ研究って覚えています?
1月のポッドキャストで勉強したエビデンスの種類で
エビデンスピラミッドの一番トップになる
つまり、一番根拠があると言われる研究の種類によると
「転倒予防を目的とする場合
筋力トレーニングやバランストレーニングの代替としてのダンスについては
確実性の非常に低いエビデンスしかありません。」と書いてありました。
つまり、バレエが他のスポーツよりも優秀だということではない
ということが分かると思います。
大丈夫、こちらのメタ研究によると
大人ダンサーにとって、ダンスは脳の働き全体に効果がある可能性が
そして、こちらのメタ研究では
脳の働き全体と、記憶力に良い影響があると見られると分かっています。
そのため、バレエが無駄になることはないですよ。
幼稚園生のような幼い子供達とバレエ、固有感覚については
研究が見当たらないエリアになります。
ですが、5歳のバレエレッスンシリーズで勉強したように
子供達の年齢に合わせたレッスンは
バランス感覚を含む様々な運動能力のサポートにもなるはずです。
成長期ダンサーとバランス感覚
今、大人バレエダンサーと幼稚園児についてちょっとお話しましたが
ダンサーのバランス感覚トレーニングをお話する際
絶対に外せない年齢層があります。それは成長期。
というのも、成長期は急激に身長体重が増えるだけでなく
手足の長さや骨盤の広さなども変化します。
今までの体に合わせて強化してきたコーディネーションやバランス感覚を
新しい体というか、成長した体でやり直さなければいけないんです。
ダンサーのエクササイズトレーニングについて書かれている研究によると
思春期ダンサーは
筋肉、腱、関節、靭帯などからの情報を受け取る固有感覚が変わってしまうため
バランス感覚の1つである「視覚」に頼りがちになる時期だそう。
そのため、固有感覚を別途鍛えることで
この時期のテクニック上達に影響するそうです。
それに加えて、私はけが予防にもなると思います。
成長期、もしくはそれ以下の年齢のお子さんがバレエを習っている場合は
体の変化や、それに合わせたレッスンについて
そして、どんなケガが起こりやすいか?など
成長期ダンサーの体の変化と
その時期を乗り越えるために家族が知っておきたい知識をまとめた
「保護者が知っておきたい成長期ダンサー」オンデマンドセミナーで勉強してくださいね。
バランス感覚を鍛える必要がある人達は?
ちょっとエビデンスヘビーな方向に話がずれてしまいましたね。
今日のテーマ「レッスンでバランス感覚は鍛えられるんじゃないの?」に戻ってきましょう。
研究でも分かるように
バレエダンサーは一般の人よりもバランス感覚が良いようです。
ですが、バレエ「だけ」やっていたら「100%」バランス感覚が良くなる
わけでもないようです。特に
- ケガしているダンサー
- 過去のケガでしっかりとダンス復帰に必要なリハビリをしてこなかったダンサー
- 過度柔軟性があるダンサー
- 成長期のダンサー
- ポワントなど、レベルの高い技術が必要なダンサー
に当てはまる人達は
バランス感覚、固有感覚のトレーニングが別途必要だというのが
このような研究や論文を読んだ私の考えです。
そこに追加して
- 上手になりたいダンサー
というのも入れておきます。
だって、上手になりたいダンサーというのは結局
難しいレベルの振付をこなせるようになりたい
ということだと思うからです。
- 高いルルベやポワントでバランスをとりたい
- 高い足をキープして踊りたい
- ピルエットのフィニッシュで、バランスをとったままでいたい
などの夢は、バレエをやっていたら誰でも持っていると思うし
先生たちも指導したいと思うのだけど
- ルルベの高さに目が行ってしまい、地面との接地面が小さくなることで、よりバランス感覚が必要になるという事実を忘れてしまう
- 高く足をあげられない、もしくは足が落ちてきてしまうというのを柔軟性と勘違いしてしまって、崩れない軸の強さや、空間の中で関節や手足がどのように動いているかの意識、感覚を育てていない
- ターンだから、ターンの練習すればいいんでしょ!というシンプルすぎる練習方法で、視覚だけに頼れない動きの中で踊るための、固有感覚を練習していない
などの問題があったら、そりゃー上達しないですよね?
だからエビデンスベースのレッスンが必要不可欠なんですよ
安全な指導の為にも、早く上達するためにも。
足の”固有筋”とレッスン、ダンサーのバランス
ちょっと話がずれるように感じるかもしれないけど
レッスンのバランス感覚に戻ってくるから聞いてください。
先月、2026年2月のポッドキャストでは
ダンサーの足について勉強しました。
その際、足、フットの部分には、内在筋と外在筋という筋肉があるんだよ
とお話しましたよね?
そして、バランス感覚シリーズ最初のエピソード603で
内在筋の別名は、足の固有筋というんですよ、とお伝えしました。
内在筋たちは、足のアーチを維持したり、サポートしたりすることで
安定して立つ、つまり、バランスをとって立つことが出来るようにしてくれます。
つまり、バランスをとるようなエクササイズは内在筋を鍛えてくれるし
内在筋を鍛えると固有感覚を強化できるので、バランスがとりやすくなります。
しかも、ポワントに必要なつま先を伸ばす動きは、内在筋の強さが必要でしょう?
皆さんがご存じのように、”足裏”を鍛えることで、強いつま先を手に入れられるんだものね?
ということは
バランス感覚の練習をする→足の内在筋の強化になる→強いつま先を手に入れられる
と考えつくんじゃないかしら?
過去のIGライブでも
ダンサーに特化したオンラインエクササイズクラス、ボディコンサークルでも
毎年来日セミナーで行っている「ダンサーの足」クラスでも
私はこれを皆さんに体験してもらっています。
正しく片足で立つだけで、つま先が伸びるということ。
そしてそれは、科学的根拠のある練習方法だということ。
だからね
- 形だけ真似した
- 床で行っている
- 柔軟性だけ、つまり受動的可動域だけを作る練習
は
- 踊りの中で
- バランスを取りながら
- つま先を伸ばす練習にはなっていない
ということを、しっかりと頭に入れてください。
ということで、今週は
レッスンとバランス感覚についてを、科学的根拠と共に深く考えてみました。
来週、バランス感覚シリーズ最後のポッドキャストでは
「じゃ、具体的にバランス感覚を鍛えるには何をすればいいの?」
という疑問を解決していきますので、金曜日を楽しみにしていてくださいね。
Happy Dancing!
