頑張ってるのに上達しない…そんなダンサーが知っておきたいマインドセットをご紹介します。
せっかくの努力が無駄にならないように、
安全に上達するために知っておきたい似て非なる考え方を探ってみましょう。
Transcript
こんにちは、DLSの佐藤愛です。
今週は、バレエをやるなら理解しておきたいマインドセットをまとめた総集編と
ワークブックをお届けします。
努力と無理の境目、上達するためのルーティンなのか頑固者なのか、競争心と向上心など、
ダンサーや先生たちが間違えやすい、似て非なる考え方、マインドセットについて、
一緒に勉強していきましょう!
ワークブックは、こちらからダウンロードしてください。
DLSライブラリの3か月会員と1年会員の皆さんは、
ライブラリ内に新しく「音声クラス+ワークブック」というセクションを作ってあります。
ライブラリ詳細はこちらから。
ではどうぞ。
努力と無理の定義
第一回目の今日のポッドキャストでは、努力と無理は違うという話をしていきたいと思います。
5月に何度もお送りしてきた、昭和のスポ根の会話と近いところがあるかもしれませんが、
スポーツ根性!の前の段階というんでしょうかね、
ちょっと無理してやってみる、的な部分を努力だと思っている人たちが多くいるため、
トピックに選びました。
古き良き、DLSの流れに伴い、まずは言葉の定義から確認していきましょう。
辞書によって記載内容が少し違いますが、いくつか調べてみた中では
- ある目的のために力を尽くして励むこと
- 力をこめて事をすること
- あることを成し遂げるために、休んだり怠けたりすることなく、つとめ励むこと
なんて出てきました。
では無理とは何でしょうか?
- 物事の道筋が立たず、道理に合わないこと
- 強引に行うこと
- 心身や経済的能力に過度の負担をかけること
だそうです。
努力も、無理も、何かを行うときに使われる言葉ですが
大きな違いは、道理に合わない、過度の負担をかけたり、強引に押し切ること、のようですね。
努力と無理。
同義語ではないと分かっているはずですが、ダンサーたちは同じに考えている気がします。
だから似て非なるものシリーズ、なの。
「プロになる」を例にとってみてみましょう。
この目的のために、力を尽くしてレッスンに励むこと、
海外の先生の講習会に参加したり、
オーディションに出るであろうコンテ、バリエーション、面接用の英語などの練習に時間を割くこと。
これは努力と言えますね。
でも、ケガをプッシュしてたくさんコンクールに出ることは道理にかなっていますか?
ダイエットを続け、エネルギー不足で骨や筋肉が成長せず、
プロダンサーはもちろん、バレエ学校さえ耐えられないような体にすることが、
本当に目標のための行動だといえますか?
それ、本当に”努力”なの?
絶対にオーディションで聞かれないけど、自慢する人が多い、長いトウシューズ歴、
つまり幼いころからポワントで踊るとか、
オーディションだけでなく、
国際的なコンクールでも絶対に審査に入らない
床での柔軟性を手に入れるべく強引にストレッチを続ける、
が努力なんでしょうか?
でもダンサーたち、というか先生たちは
細くないとダンサーになれないわよ
みんな、どこかしら痛いんだから我慢しなさいよ
と言い続けます。
この前来日した時には、トウシューズを履くためのテストに、
開脚があったと教えてくれた人がいました。
股関節の外転可動域が、足首から下の骨の整列が必要なトウシューズに対しどう関係するのか、
私にはまったく見えません。
これこれ。
理論的にわけのわからないことを、無理やり行うことが無理なんですよね、辞書によると。
では自分の行動を振り返ってみましょう。
努力だと思ってやってきたこと、本当に努力でしたか?
それとも無理でしたか?
私がバレエ学校で足のケガをしたとき、運動量が減ってしまうから、痩せないといけないから、
とケガしている足で毎日学校まで歩いたことは努力だったのでしょうか?
それとも、無理をしていたのでしょうか?
答えは無理だ、ってすぐに分かりますね。
では、足のケガをしたとき、レッスンを休まなければいけない時、全く動かない方がいいのか?
ベッドから天井を眺めているしか方法はないのか?
答えはもちろんNOですね。
- ケガしている部分に負担をかけずレッスンに参加する方法
- ジャンプやポワントなど出来ない動きの代わりに出来るエクササイズ
- たとえエクササイズする場所がなくても、リハで見学している時のコツ
こういう知識があったら、ケガしている間の”努力”が出来ます。
でも、最初に上げた例のように、ケガを長引かせてしまい、
ケガの原因であるテクニックを修正せず、
「こんなに頑張っているのに結果が出ないなんて、私はやっぱりダメなんだ」
と無意味に凹むような行動は、努力とは言いません。
この違いが分かっていたら、ケガ自体を防ぐことが出来なくても、
ケガからの復帰は早まるだろうし、ケガの再発も減るだろうし、
何よりも、長く踊り続けることが出来るダンサーが増えると思いませんか?
ルーティーンと頑固の違い
今日のポッドキャストは、ルーティーンと頑固は違うというテーマでお送りしたいと思います。
ルーティーンという言葉は聞きなれないかもしれませんが、
決められた動き、日課、慣習という意味の言葉です。
舞台前のルーティーンというと、舞台前にそのダンサーが決まって行う行動をさします。
ダンサーそれぞれ、ちょっとした願掛けがあったり、時間の過ごし方があるでしょう?
メイクの前に髪をやる、とか逆の人もいるだろうし、
いつもアップで行っているエクササイズがあったり、聞いている曲があったり。
そういう感じ。
ルーティーンという言葉を使うには1度行う行動ではなく、
決められた動き、日課、つまり継続されている必要があります。
なので、「今までもこうやってきたから」とか
「うちのスタジオではこうしています」なんて言う感じで、
先輩たち、先生たちから受け継いできたものも多く存在します。
発表会でがんばったら焼肉を食べに行く、みたいな決まりがあるスタジオもあるみたいですが、
食事をご褒美に使う考え方は、危険だということは皆さんはもうすでに知っていることでしょう。
自分の中でルールを作っている人もいますね。
毎日プランクをやる、とか寝る前にストレッチ、とか、レッスンがあった日は半身浴とか。
こういった、自分の中のこだわりというか、ルール、
昔からやってきたルーティーンが頑固になってしまう落とし穴はどこにあるでしょうか?
「こうしなければいけない」という考え方に陥るとき、
イノセントなルーティーンは頑固な態度に変わります。
これってルーティーン?それとも頑固?
実際に私が見てきた例を挙げますね。
親指がずっと痛かったダンサー。
レッスンを休んでみても、マッサージを続けても、やっぱりポワントで踊ると痛くなってしまう。
あまりにも、シューズの幅が狭いから、私が大きなシューズにしたら?と提案したところ
「絶対にシューズのサイズに問題ない。いつもこれだから、サイズが問題になるわけがない」
と徹底否定。
ようやく新しいポワントに変更したら、マジックのように痛みが消えました。
こんなケースもあります。
クラスメイトに後れを取りたくないから、毎日ランニングを日課としていたダンサー。
雨の日も風の日も、体調不良の日も、一日休まず走ってきた、と胸を張る彼女。
でもこれって、ルーティーン?それともただの頑固?
私が考えるルーティーンと頑固の大きな違いは、健康を害するかどうか、
そして誰かに意見されたときに、オープンに捉えられるか否か、です。
最初の例の子のルーティーンは同じメーカーの、同じサイズのポワント。
これをシンデレラシューズと呼びましょう。
自分の中で、これだ!と思ったシューズがあったのですから。
でも、シンデレラシューズは実は、物語に出てくるいじわるお姉さんのように、
サイズが小さすぎました。
今まで問題がなかった理由は、踊る量が違ったから、かもしれません。
レッスン内容が変わったから、かもしれません。
そしてバレエ学校の子たちの年齢では、体がまだ成長中。
ただシンプルに足が成長した可能性も十分考えられます。
ここで、はだしの足とシューズを見比べて、
「見た目だけでも、このシューズがきついのがわかるよね。
痛みが続いているのは事実だし、思い切ってちょっと大き目なシューズを試してみよう」
と考えることができたら良かったですし、フィッティングだけは無料なわけ。
でも、かたくなに「私はこれです」と決めつけてしまうと「頑固」ですよね?
頑固とは「かたくなで意地を張ること。」「わからずやで、押しの強いこと。」だそうです。
日常とか、習慣、などの言葉を含む説明は全く出てきません。
2人目の彼女は、ケガをしていないから努力じゃないの?と思うかもしれません。
自分で決めたゴールに向けて頑張っているだけじゃないの?と感じる人もいるかもしれません。
誰からも、やめなさい、と言われていないのだから頑固でもないんじゃない?
彼女の問題は、そもそもランニングを行う理由がクラスメイトについていくため。
つまりレッスンで使える体力、体づくりでしたよね?
そうしたら、体調不良の日に走ることが
最終ゴールであるレッスンで使える体を作ってくれるでしょうか?
雨の日に滑りやすい道、視界が悪い状態でランニングし、
ケガしてしまうリスクはいかがでしょう?
しかも海外。
雨の暗い日で、人手が少ないであろう時に、
一人で走ることは安全なチョイスだったのでしょうか?
ここで、ルーティーンなのか頑固なのか?が見えてきます。
エクササイズを続けたい。
だけど天気が悪い、だったら近くのジムを使うのはいかがでしょうか?
バレエ学校にジムが付いている場合もあれば、学生割引が使える可能性もあります。
そもそも、ランニングを選んだ理由がお金がかからないから、だとしたら、
おうちで出来るエクササイズを選ぶのはいかがでしょう?
同じく、ランニングはストレス解消にもなるしやりたい。
だけど体調不良、という状態ならば、走りに行きたい気持ちは強いけど、
明日のレッスンに備えて早めに寝るほうが大切なのではないか?と考えつきます。
そこまでではないけれど、ちょっとお疲れかな?
だけど毎日バレエ学校の中に籠っていて、ストレスがたまるな、だったら
- ウォーキングに変える
- カフェの外の席に座る
- ミュージアムに行ってみる
など体調を考慮した形で、バレエ学校と寮生活からは離れる、
というルーティーンは守ることができます。
特にホームシックで、自分の部屋で一人になると寂しいという子だったら、
そして体調不良がちょっと風邪気味、とかくらいのレベルであったら
気持ちのためにもいいかもしれませんよね。
ランニングに執着する必要はないわけです。
あなたの努力、大丈夫?
ターンアウトのために開脚。
エクササイズは汗をかかないとやる意味がない。
発表会前にダイエットは普通
衣装のためにも、一緒に舞台に立つ人たちのためにも痩せてなきゃ。
このように考えている人たちは、
「私は頑固だからストレッチを続けるのよ」と思っていないでしょう。
これがルーティーンの難しいところ。
覚えています?ルーティーンという言葉の意味は、いつも行っていること、日課、習慣。
なので本人にとっては普通なので、
- 間違ったことをしている
- 危険なことをしている
という意識は全くないのです。
ほかの、より良い方法があるという事実にさえ、気づかないことも多い。
それを顕著に見せてくれるエピソードを最後にお話ししますね。
生徒思いの、勉強熱心なバレエの先生。
ふとした会話から、夏休みはどれくらいスタジオをお休みにするのですか?という話をしました。
そうしたら、とっても少ない日数。
なんでもっとちゃんとお休みを作らないのか?と聞いたところ、
最初の答えは「できません。いつもこうしてきたから。」でした。
でも、大先生がいるわけでないし、その方がスケジュールを作っているわけじゃないですか。
だから出来ない、のかやらない、のか。
そんな話を彼女としました。
ここまでポッドキャストを聞いてみて、自分の中のルーティーン、
実はただの頑固だったのかも?と思うような行動はありませんか?
もっといい方法、もしくはルーティーンをアップデートしたほうがいいかも、
というエリアはありませんでしたか?
ぜひ、このポッドキャストの感想と共に、私に教えてくださいね。
hello@dancerslifesupport.comにメールを頂けるのを楽しみにしています。
競争心と向上心の定義
さて、今週の似て非なるものシリーズのテーマは競争心と向上心についてです。
これもまた、ジューシーな話ができそうですよね。
早速言葉の定義から見ていきましょう。
競争心とは他人に負けまいと張り合う気持ち、
他に張り合って勝ちたいと思う気持ちという意味だそうです。
では向上心とは何か?
辞書によると、現在の状態に満足せず、よりすぐれたもの、より高いものを目ざして努力する心。
だそうです。
すでに気づいた人も多くいると思うのですが、競争心とは周りと比べる心、
向上心とは、現在の自分より成長したい心だと言い換えることができますね。
バレエ界で競争する場所、といったらコンクールがトップで躍り出てくるため、
今日はコンクールを例にとっていきましょう。
コンクールに出る理由は、同じ年齢の子たちがうちのスタジオにはいないので、
向上心を育てたいから、という先生が多くいるのを知っています。
でも育てているのは本当に向上心、もっと上手になりたいんだ、という気持ちでしょうか?
それとも競争心、他人と自分を比べ、負けたくない、勝ちたいと思う気持ちでしょうか?
競争しなくてもチャレンジはできる
チャレンジすることは大切です。
同じ年代の子たちに感化されることも、特に小さなスタジオだったら貴重な経験になります。
でも、それって別に競争しなくてもできることなんですよ。
順位を発表しなくても、試験ができるように。
コンクールに出なくても、バリエーションが練習できるように。
相手と戦ったり、蹴落とさなくても、自分を育てることができるし、
誰かが自分の中で満足した踊りができたと同時に、あなたが自分の力を発揮することができます。
どちらか、ではなくて、同時に。
バレエ団に入りたいなら
長年DLSを通じてお伝えしていますが、バレエ団とは会社です。
みんなで作品を作り、舞台を届けることを仕事としています。
もちろん、バレエ団員がお互いを切磋琢磨していることでしょう。
ゲストダンサーがほかのカンパニーから来たら、感化されることでしょう。
でも、集団生活ができないような人間を育てることが、
ダンサーを育てることではないというのは、指導者はしっかりと覚えておかなければいけません。
保護者にも同じことをお伝えしたい。
- OOちゃんはもう3回転できるじゃない
- XXスタジオでは8歳からトウシューズ履いているのよ
というような比較は、本当に子供たちを成長させてくれるのでしょうか?
やる気を出させるために、はっぱをかけるために言っているのかもしれないけど、
本人の気持ちは、本人にしか決めることができません。
昔のバレエ漫画だけでなく、経験談などで、トウシューズの中に画びょうを入れるとか、
先輩から卑劣ないじめを受けたなどの話を聞いたことがあるかもしれません。
これって、性格が悪い子たちがやっているわけでも、
バレエで残るためには嫌な奴にならないといけないというわけでもないと私は思います。
だって、元々おとぎ話や昔話の役になり切って、観客を感動させたいと思う人たちだよ?
本当に、人を傷つけたいと思うような人が選ぶ職業だとは私は思えないんです。
カツラ着けて、お姫様のふりをして、妖精の羽がついた衣装を、大人が着てお仕事するんだから。
ただ、彼らにとってバレエは競争で、相手を落とすか、自分が落とされるか、
というよくわからない危機感があって、もしくはそのような環境で育てられてきて、
そのレンズでしか物事を考えられないような大人に育ってしまったとしたら?
自分が上達するほう、つまり向上心ではなく、どうやって相手に勝つか?
の競争心だけでしか同僚、友達を見ることができなかったら?
そんな人が、アーティストとしての生活ができるんでしょうかね?
競争がなくなったとたん、踊る意味がなくなってしまった人も多くいるのではないでしょうか?
スタジオの先輩や、雑誌でよく見た名前のダンサーなど思い当たる人はいませんか?
競争心が強いと困ること
何度もになりますが、チャレンジ、挑戦することは大切です。
コンクールだけが競争心を育てるわけでもありません。
上手く使えば、コンクールはとてもいい勉強の場所になるはずです。
どうやって、コンクールを生徒にとっての良い勉強の場にするか?の部分は、
ライブラリのシークレットライブにするか、新しいクラスにするか考え中ですが、
皆さんが手に取って、使いやすい形にしてお送りする予定です。
でも、向上心と競争心は違うということ。
これは忘れないでください。
最後に、競争心の問題が垣間見えたエピソードを1つ。
エクササイズの先生からの質問で、
どうしたらよりよいクラスを提供できるか?をお話していました。
そこで、参加者の知りたいの人たちに感想をきいたら?とアドバイスをしたところ、
「そうですよね、なんだか、参加者にジャッジされているというか、
参加者VS私、の気がしていました」と彼女が言っていました。
競争心って、コンクールで負けない!と思うだけでなく、自分がけなされるんじゃないか、
下に見られるんじゃないか、相手よりも勝たなければいけないのではないか?
という気持ちにさせてしまいます。
周りからの意見やフィードバックは、攻撃のように聞こえてくるし、
グループで一緒に作り上げようというアクティビティを行ったときには、
自分が一番いいアイデアを出さなければ、と鼻息荒く、
相手の意見を聞く耳を持てなくなってしまい、
仲間の成功を心から喜ぶことができなくなってしまいます。
もしかしたら、そういう環境で自分が育ってきて、辛い思いをしてきた人が、
ほかの子たちと競争させて、自分の子供が1番になれば、
負ける思いをしなくて済むから一番いいのではないか?
と考えてしまう親御さんも出てきてしまうのかもしれません。
バレエママ、とかステージママ、なんていわれる人たちは、
自分のかなわなかった競争心の矛先を、ほかの家族に向けているのかもしれませんし、
常に競争しなければいけない、というかわいそうな気持ちの中で生活しているのかもしれません。
競争でしか自分を認められない、周りと比べることでしか自分の価値が分からない。
それって、悲しい人生になっちゃうと思いませんか?
だからこそ、教師、保護者など私たち大人は、子供たちに向上心を伝えてほしいなと思うのです。
力を抜いて、と言われたら?
今日のポッドキャストでは、「力を抜く」と「手を抜く」は違う、
についてお話していきたいと思います。
今月のボディコンサークルのテーマは「エポールマンとポーデブラ」でした。
でした、って言ってもまだ終わってはいませんが、
既に定員に達しているので過去形でお話していきますね。
テーマを解剖学的に言い換えると、
エポールマン、つまり頸椎の動きと、ポーデブラ、腕の運びと言う意味ですから、
肩関節の動きにフォーカスしたクラスだったのですが、
首と肩に関して良く言われる言葉、というか、
首と肩くらいしか、バレエレッスンで聞かない言葉があるんですけど何か想像つきますか?
「力を抜いて」。
肘や指先も言われることがあるかもしれませんが、
ポーデブラという括りにしておけば分かりますよね。
下半身には絶対に言われない注意だと思いません?「力を抜いて」。
でも力を抜いては踊れません。
肩から力を抜いたら猫背のように前に落ちちゃうかもしれないし、
腕を動かすたびに、肩が一緒に動いてしまいます。
首から力を抜いたら、正しい方向へ目線をつけたり、回転のスポットをつけることができません。
では、どうして力を抜いてと言われるのか?
それは無駄なリキミが入っているから、無駄な動きがあるから、
なんだかラインが変だけど、
先生がよく分かっていないので「力抜いて」と注意して終わってしまうから。
なんてことが考えられます。
もちろん、その言葉を発した先生本人に聞いてみないと分からないんだけどね。
無駄なリキミというのは分かりやすいでしょうし、昔首のリキミの記事を書いたから飛ばします。
気になる人はDLSブログで「首のリキミ」と検索してみるか、
ポッドキャストエピソード152を聞いてみてください。
無駄な動きというのは、
例えば腕を5番ポジションに動かした時に、肩も一緒についていってしまうとか、
ブラバーからデミセコンドに開くときに、
指先から動きが始まり、上腕骨を外転させるのではなく肩関節が上がってしまうとか。
こういう無駄な動きが、肩エリアで起こるから、
肩を下ろして、力をぬいて、と言われる可能性があります。
またこのような無駄な動きを制御するために、首に力が入る可能性もありますね。
最後の、先生が何を言っていいのか分からないから、
「力を抜いて」「リラックスして」と言う場合というのも、言葉通りだと思うんだけど、
同じく、ターンアウトしてとか、引き上げて、
でなんでも解決すると思っている先生たちがいますよね。
引き上げて、と言えば呪文のようにダンサーがよくなる、みたいな。
でも、今日のテーマではないため、これ以上突っ込まずに進んでいきましょう。
力を抜くのが怖いダンサーたち
では、「力を抜く」とレッスンで言われたときに、
本当に脱力するんじゃないという事が分かったところで、今日のテーマに戻りましょう。
「力を抜く」と「手を抜く」はどう違うのか?そしてどうやって間違えてしまうのか?
力を抜いて、と言われたり、そんなに頑張らなくていいんだよ、と言われても、
常に100%でやらないと気が済まないというダンサー達がいます。
残念なことは、自分の中では100%でやっているつもりなんだけど、
よく見てみたら無駄な事、本末転倒な事をしている人が多くいるの。
また逆に、本人は100%でやっているつもりなんだけど、
周りから見たらもっと出来るのに…と思ってしまうような子もいます。
こちらも、自分の中では100%でやっているつもりなんだけど、実際には手を抜いている。
まずは前者、力を抜くことが出来ない人達について考えてみましょう。
2019年に「常に100%ってどういうこと?」という記事を書いたのだけど、そこから抜粋しますね。
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しっかり休む、計画的に休む、も100%プレーする、と同義語
痛いのにプッシュしているのは、どうして100%にならないのか?
それは痛い=100%で踊っていないからです。
痛いところを庇って、100%の力を出していますか?
痛いところを放っておいて、次の日も100%で踊れると思いますか?
ストレッチで筋出力を一時的に低下させてレッスンする=100%ではない。
ケガの可能性があるストレッチをしている=100%で踊れないように、
自分から努力しちゃっている。
つまり、100%でプレーするということは、100%でプレーできるようにケアしたり、
メインテナンスしたり、努力することを指すのであって、
100%でプレー出来ない可能性を作っている時点で、
それは100%のプレーとは呼べなくなるわけさ。
ということは、
- 舞台前に体調を崩さないように、しっかりと栄養を取ろう
- 足首の調子がよくないから、ターンアウトは減らすけど、
その分上半身は誰よりも意識しよう - 今月はゲネプロや場当たりが続き、床が固いところでの練習が続くから、
レッスンではアレグロはマーキングに変えて、スタジオの端で筋トレしよう
というものは、一見休んでいるように見えるけど100%プレーするということなんです。
100%プレーのために、「今日できる100%」をやっているということだからね。
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力を抜くことが出来ない子達、力を抜いているとサボっているのではないか?
と思ってしまう子達は、「力を抜く」必要があります。
力を抜くという言葉の意味は
「緊張でこわばった体をほぐすこと」「力まずに、ゆったりと構える」だそうです。
つまり、緊張やリキミなど、不要な行動をやめるけど、
構え、つまり前もって準備を整える、という意味なんですよね。
決して、パッシブな、受動的な行動ではなく、
必要な準備は辞めない、前向きな姿勢だともいえると思います。
先ほどのブログ記事で出した例のように、
今現在、自分が出来る100%とは何か?を賢く選択する必要もあります。
何が必要で、何が不要な行動なのか?を理解しないといけないから。
そのためには知識が必要ですし、練習も必要です。
ちなみに引用したセクションの次には、「まずは知識、次が練習」と書いてあります。
手を抜くってどういうこと?
じゃ、後者の「手を抜いちゃう」事についてはどうか?
手を抜くという言葉の意味を調べてみたら、
「必要な手間を省くこと」「仕事などをいいかげんに行う」と出てきました。
例えば、
- ちゃんとウォームアップせずにレッスンに参加する。
- 前回のクラスで言われたことを完全に忘れてしまっている。
- 長くホールドするって分かっているから、敢えて足を低くしておく。
など。
必要な基礎レッスンをせずに、バリエーションばっかり繰り返させたり、
まだ十分にテクニックが育っていないのにポワントを履かせるなども、
難しい事をやってそうだけど、手を抜いた指導になります。
だって、ダンサーの成長に必要な手間を省き、
バレエ教師という仕事をいい加減に行っているから。
こうやって見てみたら、
「力を抜く」と「手を抜く」が同じだと思う人はいないだろう、と思いますよね?
正反対の人達を指しているように見えますよね?
じゃ、考えてみよう。
痛いのをプッシュして踊らないと、手を抜いているんじゃないか。
だってクラスメイトの殆どが痛みを抱えているし、痛いけど我慢できないわけでもないし。
こう考えてしまう人は無駄な行動をやめて、
今の自分のできる事100%に集中する「力を抜く」練習が必要です。
疲れているけど、体に悪いって分かっているけど、舞台まであと少し。
食事量を減らして、夜遅くまで自主練しなきゃ、努力しているとは言えない!
と思ってしまう人も、正しい知識を身につけ、正しい方向に努力する必要があります。
覚えてます?力を抜くという言葉には、準備するという意味も含まれているんでしたよね?
不要な事はしないけど。
リハが休めない、遅れを取りたくない。
その気持ちは分かります。
でも、痛いままで、100%でないままで、踊り続ける方が、遠回りになっていませんか?
- 興味はあるけど、コンクールが続くし、後で勉強しよう。
- 必要だと分かっているけど、レッスンのために体力を温存したいからエクササイズクラスは出来ない。
と言う人達と、
- 舞台は楽しいけど、今必要なのは基礎体力、筋力を作り、ケガから復帰する事だから、
レッスンのアレグロやポワントワークはあえて休む。 - 毎日踊っていたいけど、知識が足りないままで体を酷使したら壊れてしまうだけだから、
レッスンを減らして勉強や、コンディショニングの日を作る。
と言う人達。
手を抜いているのはどっち?
力を抜いているのはどっち?
勉強する時間がないから、仕事が忙しいから、という先生たちも、
リハーサルが休めないから痛みをプッシュするという生徒と同じです。
- 休みの日を計画する事
- 自分のための時間を取る事
- 自分に必要な勉強をして、生徒を守る知識を手に入れる事
これらは、指導から手を抜いているのではありません。
より良い指導者になるために、不要な行動を辞めて、必要な準備をしているんですから。
不要な行動を辞める事と、必要な行動を行うこと。
力を抜く、と手を抜くの違い。
これらを理解しても、周りからは違いが見えないかもしれません。
運動量だけ見ていると、手を抜いていると思われちゃうかもしれません。
でも、私たちは賢く前に進みましょう。
だって、周りの人の意見は貴方の夢と関係ないんですから。
痛みなしで踊る事でも、プロを目指すことでも、自分が通いたかったスタジオを作り、
こういう先生に習いたかった、という先生に自分がなる事でも、夢はなんでもOKです。
このポッドキャストが力は抜いて、でも手は抜かずに、
前に進むサポートになっていたら嬉しいです。
丁寧な指導とは?
まだまだ、バレエ界には似て非なるものシリーズのネタになるようなお話が多くあると思います。
厳しい指導と体罰や罵倒の違いを理解していない先生や、
コンクール入賞とダンサーの才能の違いを分かっていない人達も多いでしょう。
このシリーズへの反響が大きかったら、また戻ってきますので
「こういうのもあるよ」という現場の声と共に感想を教えてもらえるのを楽しみにしています。
最終回の今日のポッドキャストでは、
「のんびり」「ゆっくり」と丁寧な指導は違う、についてお話していきましょう。
- 年齢に合わせたレッスン内容を!
- ケガしないようにレッスンプランをしっかりと考えて!
- そのストレッチやテクニックが、その子のレベルに必要でしょうか?
などお話しているDLSですが、一度も
- のんびりレッスンをしていきましょう
- ゆっくりとレッスンを続けていきましょう
とはお話していません。
焦らずに、とか着実に、しっかりと、とはお話していますけど、
のんびり、は私のボキャブラリーにありません。
理由は、このシリーズの名前通り、似て非なるものだからです。
「のんびり」や「ゆっくり」という言葉の定義は別に必要ないでしょう?みんな分かるよね?
「丁寧」という言葉には「礼儀正しい」という意味もありますが、
礼儀正しくレッスンする事を、のんびりレッスンすること、と間違える人はいないと思うので、
今回の定義は注意深く念入りであること、
細かいところまで注意が行き届いていること、としましょう。
お掃除でも、テスト用紙を提出する前の確認でも、
レッスンに忘れ物がないか?を確認する作業でも同じですが、
注意深く、念入りに、細かいところまで注意して、と行うと、確かに時間がかかりますよね。
でも、丁寧な対応って、別にゆっくりな、のんびりな対応ではないでしょう?
お店に買い物に行ったとき、丁寧な対応は嬉しいけど、ゆっくり、のんびりされたら…ねぇ。
違い、伝わりますか?
のんびりレッスンの弊害
今までシリーズで挙げてきた内容とは違い、
ゆっくり、のんびりレッスンしていてもケガしないよね?と思うかもしれません。
確かに、被害は少ないと思います。
でも、1つ大きな問題があるんです。
バレエを習いに来る人達、それがプロを目指していても、自分のために踊っているとしても、
上達すると嬉しいですよね?
成長が見えるって、人間はやはり嬉しいんです。
もっと出来るようになったら、思ったように動けたら、憧れの衣装が着れたら、やっぱり嬉しいです。
そんな中、先生が丁寧な指導とは、ゆっくり&のんびりと同じだと思っていたら、
生徒達は上達が見えづらくなります。
大好きなバレエ、時間をかけて、お金をかけて、長く通っている。
なかなか上達が見えない…としたらどんな行動をとると思います?
そんなに好きじゃなかったり、
ちょっと試してみようかな?と思っている人達だったら辞めると思います。
とってもバレエが好きで、将来踊って食べていきたいと思っている人達だったら?
多分、他のスタジオを探すか、ネットで自宅で出来る上達方法なんて言うのを調べると思います。
ネット検索で、正しい情報なのか、そうではないのか?
を見極められるだけ知識がついていればいいですが、
そういう知識がある人は、そもそもネット検索をしないでしょう。
他のスタジオを探すときの言葉は「OO先生はすごくいい人なんだけど、もっと挑戦したい、
同じように上を目指している子達と切磋琢磨したい」なんて感じでしょうか。
そして、コンクール受賞歴が羅列しているスタジオを選んでしまうかもしれません。
ゆっくりレッスンでも、正しいとは限らない
もちろん、今まで上げてきた努力を無理とはき違える行動(エピソード459)や、
向上心を競争心と間違えているほうが(エピソード461)、
ダンサーの身体的、精神的なケガリスクは大きくなります。
だけど、一見「のんびり」「ゆっくり」レッスンは害がないように見えるかもしれないけれど、
私は振り子が逆にスイングする危険性も見てきました。
貯金したら利子がつくように、丁寧なレッスンとは
最初は結果がゆっくりにしか見えないかもしれないけれど、
どんどん利子が溜まっていくものです。
だって、間違って学んでしまったテクニックをやり直したり、癖を直す時間が必要ないから。
そして、バレエのテクニックは全て、基礎のパーツがパズルのように合わさって出来るから。
32回フェッテも、32回のアントルシャシスも、
32回のプリエ、ルルベ、もしくはジャンプの繰り返しです。
プリエ、ルルベ、両足ジャンプは、初心者クラスでも学びます。
だから、基礎のパーツがしっかりと身についていれば、応用は結構簡単に身に着くのです。
正しいレッスンは最高の早道なんですよね。
バレエだけでなくても、算数、ピアノ、スポーツなど全て同じだと思います。
忘れてはいけないこと。
それは「のんびり」「ゆっくり」やっていても、正しく出来ているか?は別問題だということ。
基礎、正しいポジションを指導する際に、丁寧に説明し、何度も繰り返す必要はあるけれど、
のんびりしないと、基礎が身につかないわけではありません。
のんびりしていたら、バスに乗り遅れた。
ゆっくりしていたら、レッスンに遅れた。
ということもあるわけじゃない?
もちろん、敢えて「のんびり」「ゆっくり」を差別化に使っているスタジオだったら、
今までの話は無視してくださいね。
例えば、60歳以上のシルバーダンサーレッスンは、
のんびり、ゆっくり、同じ趣味の人達と集まって、コミュニケーションをとりながら、
体や頭を使います、だったら素晴らしいじゃない。
小さい時から続けていたバレエだけど、学校が忙しくなってしまった受験生が、
周りと比べることなく、週に1度ストレス発散の為のバレエクラスとか、
出産後、安全に体を動かす場所として、
ジャンプやハイレッグなテクニックが出てこないレッスンを受けて、自分の時間を確保するとか。
こういった理由が明確で、
受講する人達もクラスの趣旨が分かっていて参加するんだったら、全く問題ないですよね。
明確に理由を説明出来る時点で、「のんびり」と「丁寧」をはき違えていないことが分かりますから。
現在、インストラクターコースの3期生が教科2を勉強中です。
コース全てを通じてお話するのは、
「指導者が明確に理解が出来ていなかったら、生徒に指導する事は出来ない」ということ。
だって、指導者が100%わかっていなかったら、
生徒が危険な事をしているのか?を見極めることは出来ないでしょう?
エクササイズ理論を全て理解して!とか、
世界のすべてのシラバスを熟知していなければいけない!ではないけれど、
自分のスタジオで、自分がお金をもらって、時間をもらって行っている内容くらいは、
自信をもって説明出来るようになっていたいですよね。
何をするとどんな危険性があるのか?という理解や、ケガについての知識があれば、
早期発見がしやすい、などという理由でDLSライブラリをバレエの先生方にお届けしていますが、
今月のポッドキャストが、先生たちはもちろん、
ダンサーや保護者の皆さんの考え方、ものの見方へのチャレンジになっていたら嬉しいです。
いかがでしたか?
考え方は行動に出ます。
メンタルにも影響します。
だからこそ、早く安全に上達したかったら、そして長くバレエを楽しみたかったら
似て非なるものの違いを理解するようにしてくださいね。
来週は、痛みや悩みが多い場所、
ダンサーの股関節についてを勉強していくエピソードとワークブックをお届けします。
お楽しみに!
Happy Dancing!
