若い時でないと体は柔らかくならない?

2017年の春期来日セミナ―では柔軟についてお話するクラスがあったため、このような質問をたくさん聞きました。

どこかで誰かが記事にでもしたのか、雑誌でとり上げられていたのかしらねー?

すごく何度もブログでとり上げてきているのに、多くの人達に聞かれるのでびっくりです。

 

ここでとり上げているのは

 

「若いうちにしか体が柔軟にならない」ので「プロのレベル」になるために「むりやりストレッチをさせていく」という事についてお話しています。

 

今回はそのダイジェスト版という事でいくつか挙げますが、コンセプトとして「ストレッチ」を理解していないとこの記事に書いてある事を全て理解するのは難しいかもしれません。

既に記事にしてある事もたくさんあるので、並行して読んでもらえると嬉しいです。

1)バレエレッスンは柔軟性を高められるように作られている

タンジュ、ジュッテ、グランバットマン=股関節の可動域を徐々に広げる訓練です。

アテール、ルルベ、オンポワント=つま先の可動域を徐々に広げる訓練です。

デベロッペ=ルティレで股関節のみ、そこからハムストリングが関与するエリアに脚を上げるストレッチです。

 

なので、体が固い子がいたら、レッスンで飛ばしている部分、もっと力を入れなければいけない部分がある、って事なんです。

 

もちろん、そこから「プロレベル」になるために必要な柔軟性があるかもしれませんが、それはバレエ学校などのプロの現場で育てます。

 

2)間違ったストレッチの影響

この部分は前に記事にしてあります。

→実際に年齢別レントゲンをみてお話しているものはこちら

→実体験からむりやりストレッチを考察しているものはこちら

→新聞にものったくらいのダンサーストレッチ信仰について

 

3)体が固いから脚が上がらないわけではない

この部分も記事にしてあります

→あなたの脚が上がらない理由は?

→エビぞり、しゃがむとかかとが上がる・・・ストレッチで聞かれやすい奴ら。

 

よく聞かれる、毎日ストレッチしても筋肉固いままです…って奴もお話してます!

 

実際に今回、教師のためのバレエ解剖学講座の参加者で実験もしました。

1人は元新体操選手。現役を遠のいても、開脚スプリッツは全然できる!

という人と、

元プロバレエダンサー。開脚はかろうじて床でできるけれど、胡坐をかくようなポジションではひざが地面につかない。

という人。

 

タンジュを全ての方向でやってもらった時、「これ以上動けません」と言ったのは新体操の方でした。

つまり、可動域の広い股関節=踊りで使える可動域、ではないという事になります。

逆に、そうできた人がシルヴィギエムみたいに今世紀最高のダンサーなんて言われるンですよ。

いくら床でオーバーストレッチ出来てても、その人達全員がシルヴィにはなれない。

 

4)ストレッチ指導は非情に難しい

これはセミナー中にもお話しましたが、ストレッチ=筋肉だけが伸びている訳ではありません。

皮膚、筋膜、靭帯、そして神経…

色々なものが伸びるわけです。

 

ストレッチというのが筋肉を伸ばす事だけだとしても、解剖学知識がたっぷり必要です。

  • 筋肉のついている場所、
  • そのエリアにある筋肉たち
  • 関節の動く方向、動く範囲

は絶対に分かっていなければ伸ばすことができません。

 

その上で、アラベスクがうまくできない、という問題がある場合、

  • アラベスクとは何か?
  • 彼女の体でアラベスクをストップさせている部分はどこか?
  • ケガの歴史

などを理解しなければできません。

 

だからねー、安全なエリアにいるためには、やっぱり難しい。

 

そして本人が何を感じているか?は本人にしか分からないのです。

セミナ―では同じストレッチをやったら感じるところが本当にバラバラでびっくりした、という実験をしました。

ストレッチ=伸びている、だから挟まったり、痛いという感覚はあるべきではない、という事はビデオでお話しましたね。

→DLSのYoutubeチャンネルはこちら

 

下の写真は同じ子が首の位置を変えただけでどこが伸びるか?が変わりました。

それくらいセンシティブなんです。

顔を上げている時は、お尻とハムストリング、顔を下げている時は背中全体とお尻の上の方にストレッチを感じた、と話す彼女。

あえてクッションとボックスを使って、自分の力でホールドしないようにしています。

(ホールドすると、また違う部分に伸びがかかるため)

 

知らない事は教えられない。

ここはストレッチでは特に言えること。

ここでの知らない、は解剖学、運動学、彼女のこと、バレエなど特化した動き、先生の求めるもの、彼女の将来、という事全て。

 

特に女性はその後、子供を生む=9か月体がどんどん重くなり、体が変化する、という過程を通ることもあるわけで、そこで靭帯のサポートは大事になってきます!

そして、その後何年も、成長していく子供を持ちあげたり、抱っこして運んだりしなければいけないのです。

それを考えたら股関節、腰エリアはより安全に指導してあげなければ危険です。

 

(精神的なものも影響します。交感神経、副交感神経とか、彼女の性格とか・・・)

 

5)子供は成長しているから子供である

 

子供は成長しています。

成長期には一時的に体が固くなります。

それは悪いことではありません!人間として必要なプロセスです。

 

だからね、その時期がくる前に詰め込む!という考え方はどうなのだろうか?と。

そうやっていわれた子達は、成長、という自然の事を怖がるようになってしまうのではないか?

もしくはあえて成長しないように(つまり、柔らかい体をキープしようとして)しちゃったら、どんな影響が起こるだろうか?と。

 

オーディションシリーズでもお話しましたが、日本人ダンサーでテクニックはあるけど、身長が足りない…という子達が多いのを考えると本末転倒だろう?

 

そして最近はやっている開脚の本でもあるように、大人になっても柔軟性を上げられるのだと分かっているのならばどうして子供にやらせるのか?と。

 

もう一つ、「子供」という枠で考えてみましょう。

彼女、本当に将来をダンサー、もしくは選手になる決めていると思います?

高校生でも将来が分からなかったり、大学生でも迷っていたり。

大人になって社会にでても「やりたかった事は違う!」と気づいて転職したり…

 

彼女の気持ちが本気でない、といっているわけではありません。

ただ、バレエダンサーになったとしても80才まで踊り続けるわけではないと考えると、やっぱり彼女が「人間」としてその後生活できるか?が気になるんですよ。

 

中学受験でレッスンを辞めて、筋力が落ち、だけど靭帯のサポートがない上で日常生活をして、関節に負担をかける方が心配なんですよ。

 

結論。

結局ね、何をやってもケガしない子、というのは存在する。

煙草が悪い、と言っても吸っている人100%が肺がんになると決まっていないように。

煙草が悪い、と言っていても「ファッションで」吸っているダンサーの多いこと!

 

ただ、悪い影響が出ると分かっていて、危険がいっぱいだと知っていて、しかもバレエに使えないかもしれない。

それでもやりますか?

 

もし生徒の体が固いのならば、先生のクラス構成が悪い可能性の方が、生徒の体のせいよりも可能性としては高いので、

自分のプロフェッション(職業=プロであること)を見なおす必要があるんでないでしょうか?

 

なので年齢とストレッチとかをお話する前に聞きたいことがあります。

  • 本当にそのストレッチ必要ですか?
  • どうしてやっているの?
  • どこ、感じてます?

そして、

  • あなたで出来ますか?

おまけ

今回のセミナーで肩の皮笑や筋肉をつまみ、腕を動かす、ってだけやったら肩関節の可動域がぐーっと増えました。

つまりさ、ストレッチだけが可動域(動く範囲)を広げる手段ではないって事も頭に入れておきたいね。

リリース、マッサージ、モーバライゼ―ション、マッスルエネルギーテクニック、瞑想、イメジェリー…

体を柔らかくする方法は1つではありません

詳しく知りたい人は、バレエの先生向けのこちらのクラスへ。
教師のためのバレエ解剖学M1&2に1度でも参加したことがある人は、お申込みできますよ!

 

 

Happy Dancing!