バランス感覚をアップさせるためのレッスン指導ヒントやエクササイズを
科学的根拠と共に考えました。
バレエの先生の言葉やちょっとした工夫で、生徒のバランス感覚は向上していきます。
Transcript
こんにちは、DLSの佐藤愛です。
遂にバランス感覚を科学的にひも解いている、今月のDLSポッドキャスト
最終回がやってきました!
バランス感覚とは
視覚、前庭(ぜんてい)感覚、固有(こゆう)感覚の3つの感覚を総合したもので
ダンサーにとって無意識に体をコントロールするためにも
意識して体の細部を感じるためにも必要な力。
筋肉や腱、靭帯などにある神経からの指令が脳に届くことで生まれる感覚なので
過去のケガや、柔軟性があり過ぎるなど
問題があると固有感覚が鈍くなってしまうことがあるんでしたよね。
しかも、バランスをとる練習が多く含まれているバレエレッスンは大切だけど
- ケガしているダンサー
- 過去のケガでしっかりとダンス復帰に必要なリハビリをしてこなかったダンサー
- 過度柔軟性があるダンサー
- 成長期のダンサー
- ポワントなど、レベルの高い技術が必要なダンサー
- 上手になりたいダンサー
は、レッスン以外にバランスに特化した練習が必要だということが
様々な研究から分かりました。
今日は具体的に、どんな練習をすればダンサーに必要なバランス感覚が鍛えられるのか?
を考えていきたいと思います。
情報はもちろん、今月ずーっと参考にしている
IADMSの教師用リソースペーパーを読んでいきますよ。
レッスンで取り入れられるバランス感覚エクササイズ
まずは、とっても簡単で、明日のレッスンですぐに取り入れられる
2つの方法からお話しましょう。
目つぶり片足立ち
エピソード603でお話したように
ダンサーは最低限片足で、目をつぶって30秒立っていたいところ。
これはレッスンの一番最初、両手バーですぐに取り入れられるのではないでしょうか?
ターンアウトする必要はありませんが
両手バーで行えば万が一バランスを崩してしまっても
すぐにサポートとなるバーを握ることが出来るでしょう。
よりレッスンらしくするために
30秒カウントではなく、音楽のカウントがいいかなと思います。
先生たちは、事前にレッスンプランと音楽選びをしていると思うので
使っている音源の30秒前後のカウント、もしくはフレーズを探しておくといいと思いますよ。
大人バレエクラスの場合は
両足からスタートするのがいいかもしれませんし
幼稚園児に目をつぶって30秒は集中出来なさそうだったら
8カウントから始めてみるのもいいでしょうね。
もうちょっと難しくするなら
パラレルだけでなく、1番ポジション
低い1番ポジションのデミ・ポワントなども良いかもしれません。
ただ、バランスを崩して足首をひねってしまっては本末転倒なので
このような応用を行うなら、ダンサーのレベルをしっかりと考えてね。
残念ながら、先生がこういう風に勉強してくれていないスタジオに通っている場合は
自分で練習する事も出来ます。
ご両親が協力してくれるなら
家族みんなで一緒に30秒ホールドゲームして
一番最初にバランスを崩しちゃった人がお皿洗い担当とかもいいかも。
自分一人しか頼れない人は
携帯のタイマーで30秒設定して、ベッドルームでやる事も出来ますし
ウォームアップとしてレッスン前に取り入れるのもいいかもね。
鏡を見ない
明日のレッスンですぐに取り入れられる2つ目の方法は、「鏡を見ない」です。
リソースペーパーにも「鏡を唯一の、または主な学習手段にしないこと」と書いてあります。
見るのではなく、感じること。
それがバランス”感覚”を育てる方法です。
ほら、先週のエピソードで
鏡を見ずに腕を1番や2番ポジションのように左右対称のポジションに持ってくるような感覚は
固有感覚の一部だとお話したじゃない?
鏡を見て、手の位置や足の位置を確認してしまうと
固有感覚ではなく、視覚だけに頼ってしまうんですね。
でも本番は鏡がないし
みんなで踊るコールドでは、たとえ鏡があったとしても距離感を確認できません。
既に持っている人達も多いかもしれないけど
鏡に背を向けたり、スタジオの違う方向を向いてレッスンするというのをお話しましたよね?
それを再度見直して、鏡を見ないで行うレッスンを考えてみてください。
まだ持っていない人は
このポッドキャストのブログ版にリンクをつけておきますが
見つからなかったらhello@dancerslifesupport.comに
「無料の脱・つまらないレッスンebookください」と連絡ください。
お送りいたします。
勉強不足な、もしくは勉強嫌いな先生の下に通っているダンサーでも
鏡を見ないで踊ることは可能です。
- ちゃーんとエポールマンをつけて踊ること
- 鏡が見えない場所に立ってレッスンを受けること
- たとえ鏡の方向を向いていても、自分がみえない、少し高めなところに目線を定めること
などで、鏡を見なくてもレッスンを受けることが出来ます。
これは、固有感覚のためだけでなく、正しい上半身の練習に必要不可欠ですよね?
でも時々、先生ですら鏡から目を離せなかったり
目線や首の方向までしっかりと振付に入れていない
というか勝手にやっていいよみたいにしている指導者もいるので
注意が必要です。
確かにプロダンサーは好き勝手に顔をつけているのは知っているよ
だけど、プロダンサーだからできることと
まだ基礎すら出来ていない子たちが練習すべきことは違うからね?
先週のポッドキャストで勉強したように
成長期ダンサーは体の急激な変化があるため、バランス感覚のうち視覚に頼りがちです。
体が変わる時期ということで、すでにボディイメージが低下している可能性もあるため
バレエ上達のためにも、そして彼らの心の健康のためにも
鏡から離れる時間を作りましょう。
エクササイズで取り入れられるバランス感覚強化
次は、エクササイズで取り入れられるバランス感覚強化についてをお話します。
つまり、レッスンの外でトレーニング場合は、何をしたらいいか?ということね。
リソースペーパーにも
バレエ以外のエクササイズで姿勢や動きを変えることが大切だと書いてあります。
ヨガや太極拳など伝統的なものでもいいし
ピラティスやインストラクターコースで勉強しているような
ダンサーに特化したエクササイズなども効果的です。
ただし、この話は小鬼たち、つまりDLS公認スタンスインストラクターや
ほかのボディワーク、トレーニングをすでに学んだ人たち向けにお話しています。
バレエを指導しているからって
勉強していなかったら自己流でストレッチを指導できないのと同じように
ダンスを指導しているからって
勉強していなかったらエクササイズを指導できるわけがありません。
皆日本語出来るでしょう?
だから、このポッドキャストを聞いてくれているはずですよね?
じゃ、みんなが国語の先生になれる?
なれないよね。
自分ができるのと、お金をとって他人に教えることはベツモノなんです。
分かるよね?
ダンサーに必要なバランス感覚を鍛えるには、立位でのエクササイズが必要です。
床で上向き、下向き、横向きなどでは足りませんが
四つん這いや座位だったら、やり方によってできるかもしれませんので
ケガしていて立てないダンサーたちがいても大丈夫。
レッスンで取り入れられるバランス感覚強化と同じように
目をつぶって片足で立つのは良いスタートですが
静止している姿勢よりも、ダイナミックな
つまり、動きの中で片足でバランスをとったり
床を変えてトレーニングするのは良いアイデア。
私の本に載っているエクササイズを例にとって、具体的にお話していきますね。
すべてのエクササイズを目を閉じて行うことが出来るので、その説明は割愛します。
- スタンス本の坐骨ファインダーを、階段をのぼりながら&下りながら行う
- ターンアウト本の1番ポジションウエイトトランスファーを、バランスパッドの上で行う、1番ポジションだけでなく、ほかのポジションでも行う
- プリエ本の時計フォンジュを、会話をしながら行う、掛け算九九を言いながら行う
- 上半身本のバイセプスカールを小さなルルベをしながら行う
*私の本はこちらのページからご覧いただけます。
階段やバランスパッドは、慣れている床とは異なる固有感覚にチャレンジします。
1番ポジションだけでなく、3,4,5番ポジションなどを使うことや
ルルベで床との接地面を変更することは
よりレッスンに必要なバランス感覚を育てることが出来ます。
でも、会話をしながらとか
掛け算九九を言いながらエクササイズを行うことが
どうしてバランス感覚に役立つの?と思った方、素晴らしい。
理由をお話する前に、固有感覚の定義を思い出してください。
筋肉、腱、靭帯、関節などからの情報を神経が脳に送っている。
そうすることで、無意識に体を調整したり
意識的に体を感じることが出来るんでしたよね?
バランス系エクササイズをしている際に別の課題を行うことで
意識はほかのこと、例えば、会話内容や掛け算九九に向きます。
ということは、エクササイズは無意識に行われるということです。
つまり、無意識に体を調整してくれる方の固有感覚を鍛えることが出来るんですね。
私の本に載っている、片足ボールパスのように
目線がボールを追うこと、ボールをキャッチすることなども
この原理に沿っています。
ボールに意識がいくことで、片足立ちは
無意識に行われる固有感覚に頼らなければいけません。
そうすれば、コールドバレエで周りの子たちの動きを見ていても
自分のバランスを崩さなくて済むし
パートナリングで相手の動きを読みつつ、演技していても
安定してアダージオがこなせるようになります。
もちろん、このエクササイズの場合は
視覚からの情報もボールに使われてしまうので、より難しいんですね。
どう?ダンサーに特化したエビデンスベースのエクササイズってすごいと
分かっていただけましたか?
一緒に勉強したい人は
今年の5月中旬から申し込みが始まり
6月からほぼ毎週火曜日午前中に授業がある
DLS公認スタンスインストラクターコースをご検討くださいね。
科学的根拠のあるレッスンやエクササイズを指導できる先生が増えることで
ダンサーたちのケガを減らし、効率よく生徒を上達させちゃいましょう。
バランス感覚を鍛える指導の言葉
レッスンの内容を変更しなくても、まだエクササイズを指導できなくても
先生たちが発する言葉を変えること、タイミングを考えることで
生徒たちのバランス感覚を育てるサポートが出来ます。
日本のレッスンでは「注意」という言葉が使われると思うのだけど
注意というとダメなところ、注意すべきことしか当てはまらないので
ここでは「キューイング」という言葉を使っていきます。
自分が踊っている時に、サポートとして使われる言葉をキューイングというため
勉強不足な先生に習っている場合
このセクションでお話することはダンサーでは努力できないです。
コンクール歴やバレエ留学した生徒数などではなく
生徒のために勉強している先生を探してください。
常にカウントし続けない
先生たちの中で、アンシェヌマン中にずーっとカウントしている人たちがいるのですが
これは生徒たちにとって邪魔です。
音楽を聴いてタイミングを考える、音楽を感じるのではなく
先生の声に合わせて踊ることになってしまうから。
キューイングは、アンシェヌマンが終わってから
踊っている時に先生が色々言っても
生徒は考えることが出来ませんし、自分の体を感じることもできません。
短いアンシェヌマンなら1曲終わるまで待ってから伝えてください。
長いアンシェヌマン、もしくは同じ動きを繰り返す場合は
1セット終わってから伝えて、2セット目で気を付けられるようにしてあげましょう。
何を注意しているのか明確に
先生たちは、そのキューイングが何を指していて
何のために言っているのかを常に考えてください。
プリエから膝を伸してくるという動きを練習しているとするじゃない?
その際、「坐骨とかかととの距離を広げて」という場合
坐骨とかかとは足の後ろ側にあるため
そちらの方向を意識できますし、長さをイメージできます。
同じ動きでも「大腿骨を集めてきて」と言ったらより内転筋の方へ
「膝のお皿を持ち上げて」といったら膝関節の伸展へ意識を向けることが出来ます。
「骨盤を一番高い位置へもってきて」「頭蓋骨を雲の上に」のような
空間を示すようなキューイングを使う場合、感覚を育てることが出来るでしょう。
インストラクターコースで常に言い続けるので
小鬼たちは聞き飽きていると思うのだけど
バレエの先生やエクササイズ指導者が使える指導ツールは
レッスンプランと言葉だけですよね?
そのため、しっかりと考え抜かれたレッスンプランや
科学的根拠のあるエクササイズプランを作ることは指導者として絶対条件。
そのうえで、指導の言葉は的確で、意味があるものでなければいけないですよね。
バランス感覚と柔軟性
今月のバランス感覚を深く勉強したポッドキャストを終わりにする前に
バランス感覚、特に固有感覚と柔軟性について、もうちょっとお話させてください。
エピソード604で、体が柔らかすぎるとバランス感覚にマイナスになるという話をしました。
だから
- 知識がないならストレッチを指導するんじゃないよ
- SNSで見たストレッチを真似するんじゃないよ
- 床での柔軟性が、踊りに直結すると思うんじゃないよ
- 甲出しとか、膝を入れるだとか、解剖学的に意味の分からないことを言ってるんじゃないよ
という、いつもの会話をしましたが
実は今日勉強しているバランス感覚を鍛えるエクササイズは柔軟性をアップしてくれるんです。
というのも、固有感覚トレーニングの効果には
踊りや姿勢を安定してくれること、関節がどこにあるかを理解したり
動作の反射神経のようなスピードをアップしてくれたりなど
様々な効果があるのですが、筋力や柔軟性アップもできるのです。
リソースペーパーによると、マッサージや、ストレッチでは
長期的な体の使い方を変更することが出来ないと書いてあります。
というのも、固有感覚は受動的な条件ではなく
能動的、つまりアクティブに、ダイナミックに使っている時に働くからです。
- 体は不安定な関節は、ケガしないように固めてしまうため、関節が安定すれば、より大きく動かすことが出来ます
- 胴体や軸が安定すれば、ぐらぐらせずに高く足を上げたり、軸足の膝を伸ばすことができます
- バランスなどが無意識にできるようになれば、つま先を伸ばすことに意識をしやすくもなります
エクササイズを勉強している人たちなら知っているように
というか解剖学を勉強していたら分かるように
関節が動くとき、動きを作る筋肉は収縮し、反対の動きをする筋肉は伸びます。
つまり、エクササイズを行うことで、筋肉強化と筋肉ストレッチをしているんです。
筋肉を最大収縮から最大伸張までを使うエクササイズを取り入れたり
様々な方向に関節を動かすプランを作ることで
柔軟性がアップできるというのもお忘れなく。
ということで、今月はダンサーに必要なバランス感覚についてを勉強してきましたが
いかがでしたでしょうか?お役に立ちましたか?
ポッドキャストの感想はhello@dancerslifesupport.comにメールか
YouTubeのコメントで教えてください。
ご存じのように、去年の終わりからYouTubeチャンネルに力を入れています。
いいねやコメントなどで応援していただけるととても嬉しいです。
ではまた、来月もエビデンスベースでバレエ上達に役立つ知識を勉強してきましょう。
Happy Dancing!
