「背中から腕を使う」ってどういうこと?

背中から腕を使いなさい!っていう注意を聞いたことがありませんか?

 

英語ではあまり言われない(と私は感じていますが、国によって違うかな?)言い回しですが

日本では聞いたことがあるし、DLSフォロアーさんからの質問でも

「背中から腕を使うにはどうしたらいいですか?」

というのはよくあります。

(どのエクササイズがいいですか?とか背中から腕を使えない子が多いのですが…など質問内容は少し違ったりするけど)

 

今日は背中から腕を使うってどういうことなのか?をお話していきましょう。

背中ってどこ?

「背中から」腕を使うっていう場合、腕は誰でも分かると思うんです。

でも背中ってどの部分を指すんでしょうか?

簡単に使っている言葉だと思うんだけど、解剖学的にどこからどこまでが背中?と聞かれたら答えられそう?

 

人間の背中=胸椎1-12+腰椎1-5+そこにある筋肉たち

と言われることが殆どですよね。

 

同じ背骨だからと言っても、頸椎は首の後ろ側ってなるだろうから「背中がかゆい」言わず「首がかゆい」になるじゃない?

また、背骨の終わりである仙骨+尾骨エリアも、お尻セクションになっちゃいます。

骨盤やおしりは背中の「下」にあるでしょう?

 

そうすると、結論的に肩肩、腰腰のスクエアのセクションになると思いません?

→スクエアを保つってどういうこと?

 

でも、レッスン中に「背中から腕を使いなさい」と言われた場合

よっぽどでない限り、腰を使って腕を使いなさいという注意に脳内変換されることはないよね。

そう、”背中”には大きく分けて3つのセクションがあるんです。

 

日本語で当てはまるよい言葉が見つからなかったんだけど、英語では以下の言い方をします。

  • upper back (T1-T7,8辺り)
  • middle back (T8-12辺り)
  • lower back (L1-5辺り)

Tというのは胸椎、Lというのは腰椎でしたね。覚えてる?

→背骨の復習

 

「背中から腕を使うように」と言われた場合はupper backを指している事が殆どだと思います。

(何度も”殆ど”という書き方をしているのは、最終的に先生の意図はその先生にしか分からないから、私たち言われた側は推測しかできないからね)

 

よって、背中から腕を使いなさいというのは、

胸椎1番から7,8番辺りの背中の筋肉を使って、腕を使いなさい

という注意ではないか?と解剖学マニアな私たちは推理出来るんです。

 

そうそう、この7,8番辺りというのは肩甲骨が終わるエリアでもあります。

「肩甲骨」がキーワード。

肩関節の復習

肩関節については細かくブログ記事で説明していますので、復習したい人&よくわからない人はこちらからどうぞ。

 

簡単な復習として、

肩関節=鎖骨+上腕骨+肩甲骨

でしたね。

 

この肩関節を作る骨の一つである、上腕骨、これが腕の骨で一つしかないから分かりやすい。

さっきやってみた背中推理にくっつけてみると

胸椎1番から7,8番辺りの背中の筋肉を使って、上腕骨を肩関節から動かしなさい

となるんだ、と分かりましたでしょうか?

 

ここで生まれる疑問。

確かに肩関節の一部である肩甲骨を動かす筋肉は、結果として腕を動かす事になるけれど

(もしくは腕の動きをサポートするけれど)

背中の筋肉「だけ」ではないよね?

 

胸の筋肉(大胸筋や小胸筋)だって肩関節の動きに関与するし

腕の筋肉ももちろん必要でしょ?

皆が知っている、ポパイ筋肉、上腕二頭筋は腕にある筋肉で有名だけど、肩関節をまたいで肩甲骨の前側にもついているのでもちろん腕の動きに関与します

「背中から腕を使う」の解剖学的結論

今までのところをまとめて考えてみようか。

背中から腕を使う、は人間の体の動きとして正しい。

だって肩甲骨は肩関節を作る骨の一つであり、腕(肩関節)が動けば肩甲骨にも影響するから。

だけど、背中の筋肉「だけ」で腕は動かせない

 

ではなんで「背中から腕を使え」ってレッスンでは言われるんでしょうか?

 

余談。

バレエの先生たちは体の後ろ側にある筋肉大好きだよね

脚の後ろ側を使って足をデヴァンに上げれば、外モモばっかりにならないわよ!

みたいな。

解剖学的には不可能だからね。

脚の後ろ側(ハムストリングスやふくらはぎ)を使って足をデヴァン(股関節屈曲)するのは。

どうして「背中から」と言われるのか?をレッスン注意から考えてみよう

「背中から腕を使いなさい」という先生一人ひとりにインタビューして

  • どういう意図でこの言葉を発したのでしょうか?
  • どうしたら背中を使っていると分かるのでしょうか?(何をもってしてOKとしている?)

と聞いて回ったら、不審者感満載でたぶん警察に通報されるだろうし

コロナで自粛が必要な今、そんな事していたら医療関係者の皆さんに失礼ですよね。

 

なので、やはりここでもバレエ学校スタッフ歴10年以上+自分も踊ってきた(=色々と注意されてきた)身として推理をしてみましょう。

 

ここでは、大先生にそう言われてきたから私も生徒にいう!という必殺オウム返しを使ってくる勉強不足の先生はお話に出しません。

(そういう人たちは別途心理学も含めて研究していく必要があるでしょう…)

推測1:背中の筋肉が弱いから、弱い方を意識してほしいため?

昔四つん這いだった人間として、体の前側にある筋肉の方が、後ろ側にある筋肉よりも強い傾向があります。

なので、背中VS胸、だったら背中の方が弱いってこと。

(同じように大腿四頭筋VSハムストリングスだったら、ハムストリングスの方が弱い傾向がある)

 

特に現代人の生活は

  • 椅子に座る
  • 手は前(そして高確率で携帯を握っている)
  • レッスンで気をつけていたとしても、普段は猫背

というのを考えると、胸の筋肉が縮み、背中の筋肉が伸ばされてしまっている姿勢で毎日を過ごしていますよね。

DLSをフォローしてくれている人たちなら知っているように、ストレッチすると筋肉は弱くなります

 

よって

  • 毎日根気強く肩甲骨周りの筋肉を伸ばし
  • 背中を強くして!と言われたらエビぞりで腰部分をトレーニング(…しないけど)する動きばっかりを選び
  • 勉強も頑張っている OR パソコン仕事が忙しい

というダンサーに注意する際、背中(ここではUpper back)にフォーカスするような言葉を先生が発する理由が分かるような気がします。

 

先生がそこまで分析しているか?と言われたら分からないけど。

でも今はそう信じておこう!

推測2:姿勢とポーデブラの注意を一緒にしちゃうため?

例えば

  • 腕を1番ポジションにしたら、肩も前にきちゃう
  • 腕を5番ポジションに持ち上げたら、肋骨も一緒に持ち上がっちゃう

なんて問題がある場合、腕だけでなく背中を意識することでこのような問題が解決出来る可能性はありますよね。

 

ただ、私と一緒に毎月15日にオニカツをしている人たちは、この問題がポーデブラの問題ではなく

  • スクエアをキープ出来ないから起こるものだ

と分かっているはずです。

つまり、腕の問題ではなく胴体の問題ってこと。

 

そうすると

  • Upper backから腕を使って

ではなく

  • Upper backから腕をアイソレートさせて

になる方が正確ではないか?と思いますが、私の考えは放っておきましょう。

推測3:肩甲骨のエリアの間違いがあるから?

肩甲骨がウイングしちゃうという問題がある場合、

これは特に腕の2番で見られやすいんだけど、その場合に背中から腕をと説明することで

  • 肩甲骨の意識を作る
  • 肩甲骨を背骨から離す事でウイングを解消する

という事が出来るのではないか?と思われます。

 

ウイングについてはこちらの記事で説明済み。

フィーリング注意と解剖学

いままでの仮説を考えると、1つの結論が見えてきます。

それは

「背中から腕を使って」という注意はフィーリング注意なのではないか?ということ。

 

  • アクチュアル注意=現実に起こること 例:骨盤の前の三角形を地面と垂直に
  • フィーリング注意=感覚的なもの 例:鎖骨を遠くに伸ばして(鎖骨は伸びない!)

 

  • ペンダントが光るように
  • 頭に本を載せて
  • 体の芯にエネルギーを通して

など「あー絶対にイメジェリーだな」と分かる注意もありますが、解剖学的な言葉が入っているフィーリング注意は生徒たちが混乱します。

 

  • 骨盤がお椀だとしたら、中に入っているお味噌汁がこぼれないように

というのは骨盤、という言葉が入っているものの、骨盤のお味噌汁を本気で探す生徒はいないと思われるので安心ですが、

 

  • 脚の後ろ側から脚をデヴァンに
  • 大腿四頭筋は使わないで
  • 引き上げて

などは解剖学的に不可能だけど、解剖学的注意に聞こえるフィーリング注意です。

 

引き上げはちょっと難しいけれど

  • 正確には背骨を下に引き延ばす筋肉が関与する
  • 背骨カーブを伸ばしてしまったら逆に危険である
  • 背骨カーブを伸ばしきって平らにしたとしても、やっぱりまだ引き上げてと言われる(終わりがない)

ということを考えると、これもフィーリング注意だと思われます。

 

フィーリング注意がいけなくて、解剖学的注意が一番!と言っているのではないですよ。

  • 言っている本人(先生)が何を伝えたいのか分かっている
  • 言われている本人(生徒)が何を注意されたのか分かっている

という場合であれば、

 

  • ドラえもんのポケットを中に!
  • タケコプターを天井へ!

と言うだけでレッスンの注意が完結するかもしれません。

 

DLSの教師のためバレエ解剖学講座モジュール1の最初でもお話していますが

解剖学を勉強してしまった問題として、解剖学>レッスンになってしまうこと。

 

前鋸筋を使って翼状肩甲骨を直して

というのは正しいかもしれませんが、言われた生徒が分からなければ無駄な言葉

背中から腕を使う「イメージ」?

この注意がフィーリング、つまり背中の意識を作ってもらいたくて、発している言葉だとしたら

伝えたいことは以下の2つになると思われます。

  • 正しい立ち方(スクエア)で腕を動かす事
  • 正しいポーデブラのポジションをホールドする事(バレエの知識)

 

じゃ、なんで最初からそう言わないのか?というツッコミは心に閉まっておきましょう。

先生には、先生なりの理由があるはずです。

 

ただ、この注意を「自分」に当てはめて考える力は生徒には必要です。

つまり、先生に言われた注意を解釈する力ということ。

これがなければ、上達しません。

 

例えば

腕を動かすと猫背になる、肩が前に来てしまう、という問題がある人は

  • スクエアの前と後ろの面積を同じように保とう

と考える方が具体的かもしれません。

 

腕と共に肋骨が動いてしまう人

  • 胸骨を下に
  • 肋骨をリラックスさせて
  • 肩関節から自由に腕を動かして

と考えると早く修正出来るかもしれません。

→肋骨が開く、はこの記事で研究しました。

 

肩甲骨がウイングしちゃう人

  • 背中を広く
  • 鎖骨を左右に引っ張る
  • 肋骨の位置を再確認

の方がウイングが治りやすいと思います。

 

2番ポジションで脇と肘が落ちてしまう人には

  • 上腕骨(肘)を遠くへ

と伝えた方が分かりやすいと私は思います。

 

この記事を読んでいる先生方は

  • 自分の発している言葉が相手に伝わっているか?
  • その言葉よりも、具体的で分かりやすい(その子にあうもの)はないか?

と考えてみてくださいね。

まとめ 背中から腕を使うには?

背中にある筋肉、特に肩甲骨周りになる、upper backの筋肉はとっても大切です。

でも背中の筋肉「だけ」が大事なのではありません

 

それよりも

  1. 正しく立つ!
  2. 正しいポーデブラのポジションを理解する

を徹底したうえで、先生に言われた注意を解釈する力をつけましょう。

 

指導者は何を注意したいのかを自分でしっかりと理解すること!

そしてどんな注意を言っても良いんだけど、解剖学的注意なのか、フィーリングなのか自分の中ではっきりとしておいてくださいね。

 

インスタライブを見てくれた人は、

あれ?側筋のくだりがないぞ?と思ったかもしれないね。

その部分を入れると話が脱線しすぎたので、また今度別にブログ記事にします。

 

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