レッスンでもない、軽いエクササイズに何の意味があるの?
トレーニングの原理・原則とオーバーユーズによるケガ予防の観点から、
バレエダンサーにとって軽いエクササイズが役に立つ理由をお話しました。
Transcript
こんにちは、DLSの佐藤愛です。
夏休みはいかがお過ごしでしょうか?
DLS13周年のイベントには参加してくれました?
今回は、座学もエクササイズクラスも両方準備しましたけど、
どうだった?と過去形にしてはいけませんね。
「この夏、踊りを安定させる体幹を手に入れる」
を合言葉に行っているダンサーのためのエクササイズクラスは、明日が3回目ですものね。
3,4回目はエクササイズも難しくなってくる時期。
明日のクラスも一緒に頑張っていきましょう!
8月のボディコンエクスプレスの13%オフは、まだまだ行っております。
エクスプレスの方は、単発で受けても問題ありませんよ。
特に今年の後半に舞台がある人達は、今のうちに基礎、土台となる筋力を育て始めること。
この夏休み、色々な舞台や講習会にチャレンジした人は、新学期が始まる前に調整しておくこと。
そうすることで、今年の後半をケガなく、思い切り踊れるようになるはずです。
さて、今月のポッドキャストでは、ダンサーにエクササイズは必要で、
大切だと分かっているけれど、なかなか手が出せない理由だと思われる疑問、
「短い時間の、比較的軽めのエクササイズに、効果があるのか?」について考えていますね。
エピソード625ではこのテーマに至った理由や、マインドセットについて
エピソード626では短い時間のエクササイズで効果はあるのか?
についてを様々な論文と共にお話してきました。
今日のテーマは「比較的軽めのエクササイズに効果があるのか?」
という疑問に答えていきましょう!
辛いエクササイズ≠上達
先週のエピソードでは、
レッスンが長ければ、長時間練習すれば、上達するわけではないことをお伝えしましたよね。
この考え、本当に大事なので、必要だったら何度も戻って勉強してください。
特に、
- 今までお教室で、長時間自習すると褒められる、
本番前は時間延長してリハーサルするのが当たり前と習ってきたダンサー - 昭和のスポコン系で育ってきて、朝部長より早く出勤し、残業するのが普通だ
というご両親の元育ってきた人、もしくは自分自身もそうだった大人ダンサー - なんでできないの!と言われ続けたけど、バレエが大好きだったから、
一人で歯を食いしばって、必死に努力してきた過去がある先生
は、練習は長くなければいけない、という考え方ーマインドセットが
深く根付いてしまっています。
考え方は思考回路と言われますよね?つまり神経回路です。
踊りの癖と同じように、何度も間違った練習をして癖がついてしまっているので、
意図的に、癖を直せるように意識することと、必要に応じて、その部分の特別練習が必要です。
脳みそにはニューロプラスティシティ(neuroplasticity)というものがあります。
脳は使えば、練習すれば、ニューロンのコネクションが変わるってやつだね。
つまり考え方、思考の癖は直せます。
同じ理由で、踊りの癖も直せます。正しい知識と努力があれば。
トレーニングの原理原則
話がずれちゃいましたが、
長くエクササイズしても、上達するわけではないというのと同じように、
大変な、辛いエクササイズをしたからって上達するわけではありません。
確かに、トレーニングの原理・原則をご存じの方は分かるように
過負荷(オーバーロード)の原理に基づいて、
トレーニングの効果を得るには「一定以上の負荷」が必要です。
また、可逆性の原理に基づいて、トレーニングを長時間お休みしたら、
徐々に筋肉や体力は元の状態に戻っていきます。
とはいえ、同じ原理・原則の中にある
漸進性(ぜんしんせい)の原則に基づいて、体の慣れや成長に合わせて、
エクササイズや負荷は少しずつ段階的にアップさせなければいけませんし、
個別性の原則に基づいて、年齢、性別、体力、目的などダンサーそれぞれ、
自分のシチュエーションにあったトレーニング内容や負荷を選ぶことが重要になってきます。
とっても大切な、意識性の原則では、今どの筋肉、箇所を鍛えているのか、
なんでそのエクササイズをやっているのかしっかりと意識することで、
神経と筋肉のつながりを強くし、トレーニングの効果をアップさせてくれます。
つまり、吐くような大変なトレーニングや、疲れで集中できず、
意識もうろうとやっているレッスンやエクササイズでは、効果はないんですよ。
先週も言ったけど、今日も言わせて。
既に令和なので、スポコンはマンガの世界だけにしてください。
そうそう、トレーニングの原理・原則の中には、全面性の原則というものもあります。
全面性、という言葉で気づくと思うんですが、
これは1つのエリアだけに執着するのではなく、様々なエリア、
例えば持久力、筋力、コーディネーション力やスピードなどをバランスよく鍛えることで、
上達だけでなく、ケガ予防にもなるという原則ですね。
だからね、ダンサーが足を上げたいからってオーバーストレッチしてても、
舞台で使えないだけでなく、ケガしやすい体になってしまうわけよ。
ま、この話はすでに6月のポッドキャストでシリーズで取り上げましたので、
まだ聞いていない人はそちらをどうぞ。
75%のダンサーのケガはオーバーユーズ
「比較的軽めのエクササイズに効果があるのか?」
という疑問に直接的に関係しないように聞こえるかもしれないのですが、
ポッドキャストの終わりにしっかりとまとめますので、もう少し話を聞いてください。
バレエダンサーの怪我を調査した21の主要研究を網羅した、エビデンスレベルのとても高い、
つまり信用できる2015年の研究では、
1,365人以上のダンサーと、900人以上のプロダンサーのケガを調べました。
それによると、ケガの75%は男女ともにオーバーユースだったとのこと。
プロダンサーの場合は数値が少し変わって、
女性のケガ64%、男性のケガ50%はオーバーユースでした。
ケガの部分を調べてみると、下肢、つまり脚legのケガは、全体の66%から91%で、
そのうち足部footのケガは14%から57%だったとのこと。
凄い数字でしょう?最大で91%のケガが脚に集中しているってこと。
オーバーユーズのケガって何?使いすぎってこと?と思いますよね。
これはね、1つのケガを指すのではなくて、ケガの起こるメカニズムを説明した言葉です。
足首捻挫とか、ジャンプの着地で骨折などの、特定の事故で起こる急性のケガとは異なり、
体の強さや、回復に見合わない不適切な負荷を、長期にわたってかけることで起こるケガなの。
疲労骨折、成長期スポーツ障害、シンスプリンツ、
なんだか痛い足首…なんていうのはオーバーユーズのケガとなるんですね。
ちなみに、私がバレエ学校でInjury Preventionのクラスを指導していたとき、
最初の授業はここから始まったので、
オーバーユーズのケガについてずーっと語っていられるのですが、今日のテーマではないのでまた今度。
知っておいてほしいことは、オーバーユーズのケガとは
筋力、体力、回復に合わない負荷を、長期にわたってかけて起こるケガだということ。
そのため、同じレッスンを受けていても
オーバーユーズのケガになるダンサーと、そうならないダンサーがいます。
レッスンの長さ、トレーニングの長さではなく、本人の強さなので。
さっきトレーニングの原理・原則でお話したようにオーバーロードの原理は大切です。
体を使うってことは体に負荷をかけるということ。
そしてその負荷に耐えられるように、体はその組織を強くします。
つまり適応させます。
今の順番で分かるように、トレーニングをしている最中に体が強くなるのではなくて、
トレーニングの後に、適応させようとして体は強くなるわけ。
でも、適応できない量、長さ、負荷がかかったり、
回復が間に合わないようなスケジュールでレッスンしたり、
適応するのに必要な材料、つまりエネルギーね、食事が足りていないと、ケガにつながるわけ。
つまり、トレーニング内容と、スケジュールを見直せば、ダンサーの75%のケガは防げるってこと。
逆に言うと、このようなケガをしたということは
- 筋力
- 体力
- 休息
の何かが足りないか、良いトレーニング、つまり良いレッスンを受けていないってこと。
うーん、この言い方は違うかもね。
良いレッスンを受けていたとしても、あなたのレベルに合っていなかったらダメだし、
1回1回は良いレッスンだったとしても、ボリュームが多すぎたらダメ。
さっきも言ったように、同じレッスンを受けていても、
ケガするダンサーとケガしないダンサーがいるのはこのような、個人差が大きく関係するからなんですね。
軽いエクササイズに効果がある理由
ということで、トレーニングの原理・原則とダンサーのケガについての知識が身に付いたところで、
今日のテーマに戻りましょう。
「比較的軽めのエクササイズに効果があるのか?」の答えはYESです。
大文字のYESです。
トレーニングの原理・原則から考えても
レッスンで鍛えられていない部分、足りない部分、苦手な部分をターゲットして鍛えるためには、
負荷は軽くて大丈夫です。
例えば
- クラシックバレエでは効率よく鍛えられない肩回りの強さ
- いつも脚に頼ってしまう理由となっている、弱い体幹
- 左右差がある股関節からのターンアウト
- 体育の授業で捻挫した後、弱くなってしまった左の足首
なんて問題があったら、レッスンのような負荷では多すぎる。
だからこそ、毎日レッスンを受けていたら
”比較的軽め”に感じるエクササイズでも、全然問題ないわけです。
また、オーバーユーズのケガを防ぐために
ダンサーがケガしやすい、半数以上のケガが起こる下半身の関節は、
負荷を減らすけれど、つまり立ってレッスンはしないけど、
上半身の必要な強さを作ることで、オーバーユーズのケガになりづらい体を育てることもできます。
いつもと同じ負荷をかけないようにしつつ、鍛えるということは、
レッスンで使っている形や方法ではない形で、その部分、関節、筋肉を鍛えるということ。
だからこそ、フロアで行うようなエクササイズが効果的だってお気づきいただけましたでしょうか?
- バレエのレッスンのように長くないし、息も上がらないかもしれない。
- アダージオで足をキープしたり、アレグロを繰り返さないかもしれない。
- だからやっている時は、汗はかかないかもしれないし、
終わっても全身の疲労感はないかもしれない。
だからといって、エクササイズに効果がないわけではないんです。
このポッドキャストを聞いてくれている人たちのほとんどがプロダンサーではないと思うので、
75%、もしプロダンサーだったとしてもシーズンの半数以上のケガを防ぐためには、
エクストラのレッスンや自主練が必要なわけではありません。
あなたの体重が重いから、足のケガをしたわけでもなければ、
あなたにバレエの才能がないからいつも同じところが痛いわけではありません。
あなたに必要なのは、ダンス医科学の知識です。
そしてその知識に則って、レッスン量と休息のバランスを考えること。
ダンサーに特化したエクササイズで、オーバーユーズのケガの可能性を下げつつ、上達すること。
だから、比較的軽めのエクササイズや、
30分などの短いエクササイズを甘く見ないでくださいねって話でした。
ということで、今日のポッドキャストはここまで。
エピソードの最初にお話したように、8月中はダンサーに特化した30分エクササイズクラス、
ボディコンエクスプレスが13%オフでご参加いただけます。
単発クラスから参加できるので、今月のエピソードを聞きながら、
ちょっとでもエクササイズが気になったら1回は受けてみてください。
映画1回分と同じか、少し安い値段で、自分の踊りに必要な練習が理解できるはず。
ボディコンエクスプレスの詳細は、www.dancerslifesupport.comより。
もしくはhello@dancerslifesupport.comにメールしてくださいね。
詳細をお送りいたします。
ではまた、来週もダンサーのエクササイズについて研究してきましょう。
Happy Dancing!
