DLSポッドキャスト epi559 華やかな経験があるから指導者になれる?
「エクササイズなんて嫌い!」だった私が、今では指導者としてその重要性をお伝えしている理由をお話しました。バレエ留学時代の葛藤や、プロの現場で感じたエクササイズの必要性、そして良い先生になるために求められるものについて、本音でお話しています。ダンサーにとって“必要不可欠”なトレーニングの意味を一緒に考えてみましょう。 Transcriptバレエ学校時代、エクササイズクラスが大嫌いだった佐藤愛です。バレエのために留学したのに、どうしてよく分からないエクササイズをやらないといけないの?と思っていたし、毎日踊ってるのに、どうしてエクササイズ必要なのかもわからなかったし、エクササイズしたら筋肉が太くなるからダメなんじゃないか?とも思っていました。でも、今ではDLS来日セミナーでは解剖学のクラスでも「動ける恰好でお越し下さい」とお話していて、クラス内でもエクササイズを体験してもらっています。でもやっぱり、ボディコンサークルを毎週指導しているけれど、私はエクササイズが大好きなわけではないし、メルボルンでほぼ毎日ジムに行くとか体を動かしているけれど、好きなことは? と聞かれたらソーイングとか、ペインティングとか、体を動かさない趣味が多いです。じゃ、どうしてエクササイズをするのか?それは、体を動かしておけば、その日のエネルギーが違うから。筋肉が強ければ、長時間パソコンに向かって、セミナー資料を作っていても腰が痛くなったり、肩凝ったりなどが少ないから。つまり、必要不可欠だからやっているという感じです。エクササイズ指導も同じ。様々な年齢、バックグラウンド、ケガの歴やプライドがあるバレエの先生たちに長い座学の後に、急に踊ってもらうのは危険です。でも、エクササイズだったら、どんな参加者の人でも、ほとんど一緒に出来る。そして、今さっき勉強した筋肉の場所やら、背骨の動きを体験してもらうことが出来る。座って、メモしているだけではなく、身をもって、知識を感じてもらうことが出来る。つまり、必要不可欠だからやってるということ。現代ダンサーにとってエクササイズは不要不可欠今年のポッドキャストはバレエの歴史から最新の研究までを使って、現代ダンサーはバレエレッスンだけでは足りない、ということを説明してきましたよね?覚えてます?エピソード542では、バーレッスンが時代と共に変化していること。だけどパはあまり大きな変化がないこと。そのギャップを埋めるために、現代ダンサーはトレーニングが必要だという話をしました。エピソード544では、2004年に出された研究を使ってダンサーは座って仕事をしている人達と同じような心肺機能なんだという話をしました。だけど、現代ダンサーに求められるテクニックレベルは高くなっていて、先生や保護者は、そんなプロの動きを見て、幼い子供たちも同じように出来ていないといけないと焦っている。つまり早期の専門化とダンス特有のスキル習得への偏りがケガのリスクを上げているという話もしましたね。エピソード546では、やはり論文を引用しながら、プロフェッショナルダンサーというキャリアのために必要な、心肺機能や体力、筋力のバランスや関節を守る、使える柔軟性が足りないという背景には、一部のダンス界で共有されている、ダンスに直接関係しないトレーニングはダンサーに必要な見た目、つまり細さを損なうという根拠のない見解が反映しているせいだ、という話をしました。なので最初にあげたような、バレエダンサーを目指していて、バレエ留学をしている18歳の愛ちゃんでさえ、「エクササイズクラスは嫌だー」なんて言っているようになってしまうわけですよね。今回の来日セミナーはもちろん、スケジュールの問題などでセミナーに参加できなかった人たちでも、これらのポッドキャストを聞いてくれている皆さんなら、現代ダンサーにエクササイズは必要不可欠だって言われなくても、分かってくれますよね?そう、必要不可欠って言葉はエクササイズが好き、得意、クラスが待ちきれない!とは言っていません。そりゃ、どんなスキルでも練習すれば身に付きますからエクササイズが必要不可欠なので、毎週やっている人だったら、そうじゃない人たちに比べて、エクササイズが得意になって不思議ではないでしょうし、出来るようになると、楽しいと思う心理が働くし、楽しければ、続けられるから、もっと上達するし…という正のスパイラルに乗っかることが可能だとは思うけれど、嫌でも、気分が乗らなくても、やらなきゃいけないことが必要不可欠って言葉ですものね。華やかな経歴があるから、良い先生?今回の来日でもいくつかのクラスで議題に上がったのですが、華やかな経験があるダンサーだからといって、良い先生なわけではありません。ダンサーとは、自分の表現方法を追求している人で、仕事は、自分の体の持っているすべてのポテンシャルを使って芸術表現をする人。彼らにとって、自分の感覚は食べていくためにとっても大事で、自分が一番きれいに見える方法、良く踊れる準備や、考え方、イメージの仕方を知っている人。ほら、エピソード545でお話したように、イメトレは、アスリートにとってスキルですから。一方、先生とは、自分「以外」の人を指導する人。様々な感覚、癖、趣味嗜好、バレエ歴、ケガなどがある生徒たちを指導する人たちです。これってプロダンサーの真逆なんだよね。プロダンサーが良い先生になれない、とは言っていないですよ!ダンサーと先生とは、仕事が違うということをお話しているだけです。オリンピック選手と、コーチの違いみたいな感じ。そりゃ、コーチがオリンピック出場歴があったら、経験から教えてあげられるものがあるかもしれないけど、良いコーチとは、選手より早く走れる人ではない。その選手の最大のポテンシャルを引き出してあげる人だものね。動けるからエクササイズ指導者になるわけではない私がバレエ学校にいた時、エクササイズクラスは毎週定期的に行われていたわけではありませんでした。それは、私が治療家になり、講師になってから定着したのね。だから、エクササイズクラスのカリキュラムは、私が書き、RTOという政府認定学校組織に提出したんですもの。私が生徒だったときのエクササイズの先生は、とても良い先生でした。私が好きだった先生の一人。でも彼女の専門は、ちびっこクラスの指導、特にその年齢のキャラクターダンスだったんです。何がどうして、彼女が解剖学やら、エクササイズやらを指導していたのかは分かりません。でも、彼女がとっても勉強熱心だったことは覚えています。いつもいろいろな本を抱えて、クラス内容も、この本のこのエクササイズをやろう!みたいになっていたから。だからか、時にはフランクリンメソッド、時にはピラティスの先生に教えてもらったエクササイズ、みたいにいろいろな分野が混ざっていました。だからだろうね、生意気な私みたいな生徒たちは、エクササイズの効果が感じられなかったです。でも、彼女に小さいときから習ってきた地元組は、彼女のクラスが大好きでした。そんなこんなで、当時は真面目に授業を受けていなかったのだと思いますけど、私の解剖学試験を褒めてくれて、インサイト・バレエテクニックという本の日本語版の数ページのコピーをなぜか持っていて、この道に進むきっかけの一番最初になったミス・ケリー。彼女の旦那さんが、私の最初のバイト先のオーナーで、そこで働いていたのがきっかけで、今の夫に出会ったのだから、彼女の存在は、私のメルボルンライフで無くてはならない人だったんです。未だにFBで時々お話したりしますし、大きく感謝しています。感謝はしているけれど、今プロフェッショナルな目線で振り返った時、彼女のエクササイズクラスは背骨というか、軸がありませんでした。バレエの先生だから、バレエ学校で何年も指導しているから、たくさんの本を読んだり、ピラティスを受けているから、彼女が自動的によいエクササイズ指導者になれるわけではありません。それは、彼女が悪い人だって言っているのではなく、彼女が生徒をケガさせようとしていた、と言っているわけではないです。ただ、指導者は、指導内容を勉強していないといけないってこと。そして、その勉強というのは、経験とは異なるし、独学とも異なります。面白いことに、彼女は校長先生が作ったシラバスの試験官でした。だから、プリンシパルレベルのダンサーでも、シラバスの勉強をしなければいけないこと、たとえ大きな有名校でも、指導が良くなければ、生徒が良い点数が取れないことは知っていたはずです。指導者になる勉強は、どのレベルでも必要何度もになりますが、彼女はとても良い先生でした。私のバレエ学校時代の記憶を引っ張ってきても、面と向かって褒められた記憶があるのは彼女くらいです。留学生の私たちに親切で、機嫌のアップダウンも少なかった気がします。でも、エクササイズの「指導」勉強はしていませんでした。バレエの資格はあったけどね。バレエスタジオでエクササイズやストレッチを指導する人ってこういう感じの人が多いのではないでしょうか?バレエ、ダンスの先生だから体が柔らかいし、毎日ストレッチしているから生徒たちにも教えている留学先でエクササイズクラスがあったから、現役の時からピラティスを受けているから、生徒たちにもやっている昔から習っているスタジオで、アシスタントとしてスタートし、だいたいはちびっこクラスから指導を始めるから、自分も受けていたような、レッスン前のストレッチを子供クラスにやっているという人たち。その人たちは、エクササイズの大切さを知っている人たちです。生徒思いで、何か足りないと分かっている人たちだから、生徒たちをケガさせようと思っているわけでもないし、自分の興味があるエリアだから、本を読んだり、セミナーを受けたりしていると思います。ミス・ケリーのように。中には、うちのスタジオはプロを目指す子たちがいるわけではない体が硬い大人クラスの人たちだから、必要と思っている人たちもいると思います。そしてプロを目指す子たちが出てきたら、ほかのスタジオに行くのも応援するよ、というような素晴らしい先生。でもね、実はこのグループが一番ケガしやすいグループなんですよ。プロを指導しているから、正しいことをやらなければいけない?難しい動き、複雑なエクササイズをやらなければいけない?実はその逆です。ダンサーのレベルが高くなればなるほど、先ほどお話したように、自分の体のプロになっていくので、たとえ指導者があまり良くなくても、ちょっと間違ったことを話していても体の声に合わせて、調整することが出来るんです。だからね、エクササイズクラスを大々的にスタートするつもりはない小さいときに、基礎体力や筋力をつけてあげたいスタジオでウォームアップが習慣化するだけでいいという人たちでも、エクササイズを指導するなら勉強する必要があると、私は思います。知らないことは指導できないから。そして、知らないことは予防出来ないから。5期生情報が解禁になりました4月10日より、DLS公認スタンスインストラクターコース5期生の情報が解禁になりました。でも、このコースは、幼少期の子供たちへのエクササイズは勉強しません。その子たちに必要なのは、ダンスに特化したエクササイズではなく、体全体を使う運動だから。過去のポッドキャストでお話したように、早期の専門化はケガの原因になりますから、バレエに特化したエクササイズは幼稚園や小学生低・中学年には不要です。そうは言っても、最近は小学生中・高年の子たちがバンバンコンクールに出ていてその年齢に結果が出なければ、「結果」というのが何を指しているのか分からないけれど、みんなが口を揃えて言うので私も同じように「結果」と言いますが、中学受験でバレエを辞めてしまうとも聞きました。それはそれで、悲しいし、大きな問題だとも思いますが、今日のポッドキャストのテーマではないので飛ばしましょう。でも、さっきお話したように勉強熱心で、生徒思いで、21世紀、次世代のダンサーたちのことを考えてくれている先生たちは、このコースを是非検討してみてください。たとえ、エクササイズクラスを指導しなかったとしても。実は、コース卒業生、通称小鬼たちのほとんどが、エクササイズクラスは指導していません。1対1のプライベートセッションセミプライベートスタジオクラスに、ウォームアップを追加などをやっている人たちが殆どです。プロダンサーとして華やかな経験や留学体験がなくても問題ありません。経験は素敵だけど、それだけが指導者の質を決めるわけではないので。エクササイズが大好きで、プランク3分ホールドできます!という人でなくても問題ありません。私もできません。プランク3分ホールドすると、効果が薄れますから、10秒ホールドを何セットも行った方がいいんですが、その話は今日のテーマではないですね。もちろん、コース中はエクササイズを体験するために今までに増してエクササイズ経験を増やさなければいけないですよ。知らないことは指導出来ないから。バレエレッスンを受けたことがないのに、バレエの指導者になる勉強をしても、いい指導者になれないでしょう?それと同じで、エクササイズクラスを受けたことがなかったら生徒の気持ちを感じてあげることは出来ないです。また、バレエをはじめ、動きを指導する人は、体が資本でしょうから、今日のエピソードの最初にお話したように必要不可欠でしぶしぶ、だけど継続的にトレーニングは必要だと思いますが、上手にエクササイズが出来るか? 難易度アップがこなせるか?は関係ないです。今日のエピソードを聞きながら、ミス・ケリーに親近感がわいた人は是非DLSサイトより5期生の詳細資料や、このコースに向いてるか? テストを手に取ってみてくださいね。サイト内で見つからなくても、hello@dancerslifesupport.comにメールして頂けたら、資料をお届けできます。また、コースに関する質問があったら、メールで教えてくださいね。今日も最後まで聞いてくださってどうもありがとうございました。また来週金曜日のDLS ポッドキャストでお話しましょう。Happy Dancing!佐藤愛